クラスの序列1位で、優等生と目された姫山椿(堀未央奈)が、クラスメイト一人ひとりに宛てた遺書が公開されていく。スリリングな展開が持続する作品である。
本作の吉野北人を見て思うことがある。映画というフレームに対して明確なビジョンをもっていることである。その意味で彼は、極めて映画的な俳優だと思うのだ。
「自分というキャラクター性を取り込みながら」演じていると話す吉野さんにインタビューを行った。演技で心がけていることからライフスタイルまで、LDH俳優をこよなく愛するコラムニスト・加賀谷健が聞いた。
当初から「面白いものを仕掛けたい」と

吉野北人(以下、吉野):僕もどんなふうに公開していくのだろうと楽しみでした。当初からスタッフさんやプロデューサーさんと「面白いものを仕掛けたい」と話していました。
登場人物全員が制服を着て、一見きらきら映画風に見えるシチュエーションもあります。特報ではその部分にフォーカスすることで、何の映画だろうと次にタイトルが気になる。そこからさらにまったくテイストが違う作品だとわかる。
――きらきら映画に見えるという意味では、本作の池永柊夜役は、『私がモテてどうすんだ』(2020年)で吉野さんが演じた六見遊馬と黒髪が共通していますね。
吉野:そうですね(笑)。懐かしいですね。
「観客目線でみなさんの拠り所になる役割を演じられたら」

吉野:セリフがそこまで多くはない中、主人公として物語を背負っていかなければなりませんでした。どんな存在感なら、作品全体を引っ張っていけるのか、迷いもありました。
英勉監督からは、「池永が写ったら、安心するような存在になったらいいね」とアドバイスをいただきました。その上で静かに見守るというか、観客目線でみなさんの拠り所になる役割を演じられたらなと思っていました。
「自分というキャラクター性を取り入れながら」演じる

吉野:これは当たり前のことかもしれないのですが、結局のところ、キャラクターは俳優本人が演じるものです。違う誰かになりきる部分もありますが、僕は、自分というキャラクター性を取り入れながら、その役の個性を探ることに重点をおいています。
――吉野さんと池永が共通する部分はありますか?
吉野:池永と同じように、僕もそこまで前にでて何かを伝えるタイプではありません。僕が所属するTHE RAMPAGEのメンバーは16人。ライブ中はヴォーカルとして引っ張っていきますが、それ以外のリハーサルや打ち合わせでは、ここぞというときにしか喋らないです。
やるときはやる。責任感、正義感は似ているなと思いました。その意味で池永を演じるお芝居は、テンションを調整する難しさなどはありましたが、自分に近い感情ですんなり演じられました。
“自分にしかないもの”を表現したい

吉野:自分にしかできないものを表現したい。これがモットーです。型にハマならない歌や演技の形を求めながら、自分の思うように表現して、届けたいです。それを常に考えています。
以前はお芝居のことでわからないことばかりでした。今はなるべく自分にしか演じられないものを演じたい。歌も演技も自分らしさを大切にしています。
――吉野さんの演技は無駄のないスタイルで、ほんとうに映画俳優的だなと思います。それは、岩田剛典さんなど、LDH俳優のみなさんに共通する特徴です。たとえば岩田さんはラジオ番組『岩田剛典 サステナ*デイズ supported by 日本製紙クレシア』(TOKYO FM)で自分が好きな映画をおすすめしながら、ときに演技論を展開しています。吉野さんが好きな映画、あるいは演技の参考にする作品を教えてください。
吉野:僕はジャンル問わずどんな映画も好きです。アクション映画だと、最近、『007』を正月に機内で見ました(笑)。
――シリーズのどの作品ですか?
吉野:『007/カジノ・ロワイヤル』(2006年)です。面白かったですねぇ。僕はあまり「ここがすごい」など、勉強として映画を見ないかもしれません。
――今後アクションをやりたいとは思いますか?
吉野:やりたいです。たとえば、派手な銃撃戦を演じてみたいです。『HiGH &LOW』シリーズで素手のアクションは経験していますが、銃器などはまだ使ったことがないので、挑戦してみたいですね。
休日はエンタメ作品に触れている時間が長い

吉野:映画を見たり、アニメを見たり、音楽を聴いたり。ヴォーカルとしてデビューする前から音楽が好きだったので、ライフスタイルとしてエンタメ作品に触れている時間が長いです。今日は朝、ディズニー・ソングを聴いていました(笑)。映画と同じように歌もさまざまなジャンルを聴きます。
――では映画が公開されたら、THE RAMPAGEの主題歌「Drown Out The Noise」を聴くことが多くなるわけですね?
吉野:はい、そうです。「Drown Out The Noise」は、自分で決めた楽曲でもあり、普段から何回も聴いています。主題歌としても大好きな曲なので、皆さんにもたくさん聴いていただけたらと思います!
<取材・文/加賀谷健>
【加賀谷健】
コラムニスト / アジア映画配給・宣伝プロデューサー / クラシック音楽監修「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。