かつてドラマ化もされた『私の家政夫ナギサさん』(※※原作タイトルは『家政夫のナギサさん』/シーモアコミックス)の原作者である漫画家・四ツ原フリコさんは4年前から『ギブギブの悪魔』(作画:エイタツ、原作:四ツ原フリコ/新書館)をともに手掛けるエイタツさんとルームシェアを開始。そして2024年秋にはふたりで住む家を“購入”したそう。
そんなふたりのルームシェアの様子を描いた同人誌『IMA IMA オタクルームシェアはじめました』も発表。またこの反響を受け、2025年春夏頃にはマンガサイト「Souffle」(秋田書店)にて家を購入した経緯のエッセイコミックを連載予定です。
後編の今回は、ふたりで暮らす家を購入するまでの経緯や心境を四ツ原さんにお聞きしました。
※本記事は全2回のうちの2本目です





ルームシェアを経て、一軒家購入を決意した理由
――4年前からエイタツさんとルームシェアをスタートし、2024年に“家の購入”に踏み切ったきっかけを教えてください。四ツ原フリコさん(以下、四ツ原):以前から老後が不安で、賃貸がいいか家を買うべきかで悩んでいたんです。将来働けなくなったとしても住むところさえあれば安心材料になるはず、と思い、家の購入に興味を持っていました。

おふたりとも、家の購入と住替えを経験されていたので、家を買うメリット・デメリットから、購入時の注意点まで詳しく教えてくれるという幸運に恵まれまして……。
――身近なところに頼れるアドバイザーがいたんですね!
四ツ原:そうなんです。そこでお聞きした内容は、どれも参考になりました。特に私の心に響いたのは「家は一生に一度の買い物ではないから、清水の舞台から飛び降りる気持ちにならなくていい」というアドバイス。
売る、売らないは別として“売れる可能性のある家”を選ぶと、10年後、15年後に自分の体調の変化や親の介護などでライフステージが変わっても、家を売って引っ越しできると教えてもらったんです。そのとき目からウロコが落ちまして、失敗しないように知識をつけて家を買おう、と考えました。

将来が不安だからこそ、家を購入し資産にする
――えっ! なぜですか?四ツ原:それぞれの生活スタンスや資産状況にもよると思うので、一例として聞いていただきたいのですが…。
賃貸物件の場合は他人の持ち物にお金を払っている状態なので、いくら家賃を払っても自分の部屋にはなりませんよね。一方、家を買えば自分のものになり、ローンさえ払ってしまえば家賃は0円。
戸建ては20年で建物の価値がなくなってしまうのですが、需要の上がりそうな土地を選んで家を買い、やむを得ず売るときも高騰を受け同額やそれ以上で売れれば、家賃は実質タダになる。分譲マンションの場合もいざというときに売れる資産になるという考え方です。それが私には納得できるものでした。
家購入は「友人同士だと難しい」という問題に直面
四ツ原:おふたりから家購入の知識や、今後人気が出そうな土地や物件の情報をたくさん教えていただき、1週間後には、本格的に家探しをスタート。ほかにも家を買ったことがある友人に話を聞き、不動産会社も3社ほどお世話になりました。1カ月間で10件検討して、自分たちの条件にマッチした家に出会えて、物件を決めましたね。――すさまじいスピード感!
四ツ原:そこまでは早かったのですが、ローンを組む段階で一度つまずいてしまって。当初はエイタツさんとペアローンを組む予定だったのですが、友人同士では難しいという事実を知ったんです……。

最終的に私がひとりでローンを組み、エイタツさんに毎月同額の生活費全般を支払ってもらう形式ならば問題ないとわかり、今はその方法で生活しています。
――家選びよりも大変そうですね……。新居での生活はいかがですか?
四ツ原:エイタツさんとの生活は、これまでと変わりなく快適です。家についてはローンを払いはじめたばかりなので、「自分の家」という実感はまだ湧いていないですね。ただ、前の部屋よりも新しくてキレイな家に、安い住宅費で住めるのはうれしいですね(笑)。
お互いの「OK/NG」ラインを明確に持つこと
――エイタツさんとは同業者でもあり、生活スタイルや性格もよく知っているかと思います。そのあたりが快適に暮らすコツなのかもしれないですね。四ツ原:そうですね。
双方がOKとNGのラインを明確に持っていたので、ルームシェアをするうえでのルールや分担もスムーズに決まりました。お互いひとり暮らしの経験があったのは良かったと思います。

四ツ原:はい、もちろんひとり暮らし経験がない人同士でも長くルームシェアを続けているケースは多いと思います。そういう人たちは、よく話し合って工夫されているのではないでしょうか。
――とても仲が良い友人同士でも「ルームシェアをはじめたら険悪になって解散した」なんて話もよく耳にします……。“ルームシェアに向いている友人”の見極め方はあると思いますか?
あのイベントでルームシェア相手を見極められる!?
四ツ原:個人的な見解なのですが、バーベキューのときや友だちの家にお呼ばれしたときなど、大人数で何かをする際の“タイプ”が似ている相手はうまくいきやすい印象があります。大人数のパーティーでは「台所を片付けるね」「何かできることはある?」と、家主に尋ねる人もいれば、イスに座っている人もいますよね。
私とエイタツさんは前者で現在うまく家事がまわっていますが、もしも私が後者のタイプの人と住んで話し合いがされない場合、お互いにストレスを抱えてしまうかもしれません。
実はひとりの時間より、一緒の時間を作る方が難しい
――大人数でいるときの仕草がカギになるとは! ちなみに、家事の分担のほかに決めたルールはありますか?四ツ原:私の提案で「夕飯は一緒に自炊をして食べる」というルールを作りました。会話の機会が減ると、ちょっとした相談がしにくくなると思ったんです。
ルームシェアをはじめる前は、お互いに“ひとりの時間を持ちたい”というのが絶対条件でした。ところが、実際に住むと顔を合わせずに過ごすほうが簡単なんですよね。私は昼型人間で漫画の作業も自宅の外ですることが多いのですが、エイタツさんは夜型で家で漫画を描く日が多い。生活のスタイルが異なると、その分問題の共有がしにくくなります。

でも、引っ越し先のゴミ出しは早朝のみ。ゴミ出しの日は決まった時間に起きなければならない状況がストレスになってぐったりしていると、エイタツさんが気づいてくれて「私もゴミ出しするよ」と言ってくれました。その代わり、私は新居で増えた家事を担っています。
これは一緒にいる時間が多かったから気づいてもらえたことです。本当は気づいてもらえるのを待つのではなく、私から悩みを相談するべきでしたが……。そうしたちょっとした悩みを共有しやすい環境を維持するためにも、夕食は一緒に食べています。
――なにやら“夫婦円満の秘訣”を聞いているような気がしてきました。
四ツ原:そうですね(笑)。ほかにも、1歳上の先輩と話す感覚で、親愛と敬意を持って接するように心がけています。友人関係も夫婦関係も人との付き合い方という点は同じなんですよね。
【四ツ原フリコ】
漫画家。家事が苦手なキャリアウーマンと、彼女の家で家政夫をする中年男性の2人が織りなすハートフルストーリー『家政夫のナギサさん』(シーモアコミックス)で人気を博し、2020年にドラマ化。以降も『整形シンデレラ』(シーモアコミックス)などの作品を手掛ける。友人であり、『ギブギブの悪魔』(新書館)にて作画を手掛ける漫画家のエイタツとの生活を描いたルームシェアエッセイ同人誌『IMAIMA オタクルームシェアはじめました』シリーズをBOOTHにてDL販売中。
<取材・文/とみたまゆり、作品クレジット/(C) 四ツ原フリコ>
【とみたまゆり】
週刊誌や漫画の書評などジャンルにこだわりなく執筆する中堅ライター。