子供の手も離れて、これから「私」をどうしたらいい?と悩む人が続出するのも40歳ではないでしょうか。
子育て、仕事、一息つき次のステージの40歳
『「40歳の壁」を越える人生戦略 一生「お金・つながり・健康」を維持できるキャリアデザイン』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、人生の次なるステージに焦点をあてた攻略本です。著者の尾石晴さんは、Voicyの『学びの引き出しはるラジオ』で6800万再生超えを記録したトップパーソナリティ。その他、㈱ポスパムの代表としてオンライン・スタジオヨガ『ポスパム』と母と子のシェアコスメ『soin(ソワン)』の運営を行うなど、八面六臂(はちめんろっぴ)の活躍ぶりなのです。さらに小学生2児の母でもあります。
「私」時間など微塵(みじん)もなさそうな尾石さんがどうやって「40歳の壁」を乗り越えたのか、興味ありますよね。
40歳で生じる疑問と不安

「幸せな人生の土台」となるのは「お金(収入・資産)」「つながり(家族・友人・知人)」「健康(体力・認知力)」。
筆頭のお金ですが、残念ながら年金や退職金は期待を下回るといっていいでしょう。そうなるとやはり仕事とは縁をつないでおく必要があります。
じゃあ何をすればいい?というのが次の課題。人生経験が豊富で胆力もある40歳だからこそ、はじめるべきは「自分業」なのです。
毎月10万円の余剰金があれば
「老後2000万円問題」も、アラフォーやアラフィフになるといっそうリアルに響いてきます。具体的には「毎年120万円をどうやって80歳まで稼ぎ続けるか」が、老後の安心感を買うひとつの方法です。月に10万円を貯めるために身を粉にするのではなく、培ってきた「自分」を生かす働き方を目指さなくてはなりません。40歳は頑張りがきく年齢ですが、40歳ならではの体験をないがしろにしては本末転倒だからです。
お金があっても体力と若さがなくて何もできない、歳だけを重ねてしまった、という後悔がないように、「自分業」は吟味すべき。
「自分業」は、あなたが心から「好き」「楽しい」と感じることが基準。それって仕事になるの?そんな不安も、本書が吹き飛ばしてくれました。
誰かのためではなく自分のため
家庭や仕事。誰かのために猛進してきた自分を解放させて、そろそろ自分の目的のために時間を費やしませんか。目的というと何やら大仰ですが、単純に「好き」「楽しい」をベクトルに動いていくと、「人生の目的が導き出される」のです。たとえばサッカー観戦が好きなら、サッカーに関する支出を経費にできる仕事を箇条書きにしてみましょう。「サッカーチーム別の分析をブログにしてアフィリエイトを貼ってみる」という案も出てきますね。
もちろん試行錯誤はつきものですが、「好き」「楽しい」が発火点になっているので苦にはならないのではないでしょうか。知識や経験が増えていくので、人間性の向上にもなります。
「稼ぐ」考えを捨てる
意外なのが「稼ぐ」考えを捨てる、という本書の意見。自分業の元となるもの、サッカー観戦ならそれに付随するチケットやグッズ代などを、いかにして「経費できる」かを考えるのがポイントです。稼ぎたいのはやまやまですが、最初からお金に焦点をあててしまうとつらくなると思うのです。「好き」で「楽しい」から続くのであって、「自分業」というからには生涯無理なく、定年なしでできることでなくてはなりません。
あなたが「今まで一番お金と時間を使ってきたこと」を洗い出してみましょう。40年の人生を振り返って夢中になったこと、占い、ヨガ、映画、音楽、猫、フラダンス…、これらは私の例で恐縮ですが、私も「好き」「楽しい」が高じて占い師になりました。
「種」が見つかったら「お金をもらえる仕事になるか」を調べます。
「顧客」を主語にするとうまくいかない
「好き」「楽しい」から派生して、ハンドメイドグッズを売るもよし、スキルを生かすもよし。でも顧客がつかなくては収入に結びつきません。ここで焦って顧客メインで自分を二の次にしてしまうのは危険。「1から仕事をつくる場合、『顧客』を主語にするとうまくいきません」と本書。
「顧客=付き合いたい人」と、本書のように組み立てていくと、結果、ストレスも抑えられて仕事も順調に進みます。長い目で見れば、付き合いたい顧客に絞られるので、対応もきめ細やかになり、こちらも長続きするお付き合いになるのです。
便利で自由な時代だからこそ
ひと昔前は、会社に入って定年まで勤め上げるのが世間一般の常識でした。今は転職や副業があたりまえになり、仕事も働き方も多様化しています。何が仕事になるか、何が売れるか、誰にも予測不可能です。集団ではなく個が尊重される時代だからこそ、あなたという個性が生きるのです。
40歳からリスタートしたい!と奮起したなら、「自分業」ノートを用意してください。準備、実践、その先の変化まで、本書にならって書き込んで、行動に移しましょう。本書があなたの力強い相棒になります。
まだめずらしい「自分業」という言葉。しかしあと数年もすれば世間に浸透し、仕事や生き方の枠が広がってくると思うのです。
<文/森美樹>
【森美樹】
小説家、タロット占い師。第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『主婦病』(新潮社)、『私の裸』、『母親病』(新潮社)、『神様たち』(光文社)、『わたしのいけない世界』(祥伝社)を上梓。東京タワーにてタロット占い鑑定を行っている。X:@morimikixxx