特別節目でないにもかかわらず、今年は岩田剛典生誕祭として盛大に祝うべき理由がある。岩田剛典というひとりのパフォーマー、俳優、アーティストが、近年どれほど甘く、ほどよく苦い余韻を作っていることか(!)。
男性俳優の演技を独自視点で分析、LDHアーティストをこよなく愛するコラムニスト・加賀谷健が、朝ドラ名場面などを振り返りながら、岩田剛典36歳の誕生日を祝う。
2024年のエネルギッシュな活躍
2024年は、映画とドラマを合わせて6本撮影し、自らのソロツアーで宮城初日から武道館ファイナルを駆け抜け、毎年恒例の『24時間テレビ47』(日本テレビ)では、所属事務所初の帯企画を担当した。テレビ史を動かした彼の他の活動を詳細に数えあげてもいいが、このコラム全文の文字数を優に超えるだろう。まったく、常人とは思えない活力に裏打ちされた稼働の容量は、いったい、何人分を束にしたらいいのだろう?
三代目 J SOUL BROTHERS(以下、三代目JSB)のパフォーマーでもある彼は、さらにグループ7度目となるドームツアー『三代目 J SOUL BROTHERS LIVE TOUR 2024“ECHOES OF DUALITY”』も回ってしまう。そんなリアルスーパーマンみたいな人はだぁ~れだ!? もったいぶってしまった。その人の名前は、岩田剛典である。
「スーパースターになる」と公言してきた

2010年に三代目JSBがデビューして以来、自分はスーパースターになるのだと公言してきた。何度も言葉にしているうちに具現化される。直近で岩田本人に対面したときはいまだに謙遜していたが、いやいやスーパーマンのような人である彼は、すでに正真正銘、誰もが認めるスーパースターだ。
2024年から引き続き、活動速度をゆるめる気配がない。
岩田剛典生誕祭として盛大に祝う理由
2025年3月6日には、36歳になった。あぁ、我らが岩ちゃんもアラフォーなのかなんて単純に考えてる場合じゃない。岩田剛典が36歳の誕生日を迎えたということには、特別な意味合いがある。誕生日を構成する「3」と「6」が掛け合わされた36歳の数字が、MATE(三代目JSBと岩田剛典共通のファンネーム)たちの間では特別なナンバーとされている。だから今年は岩田剛典生誕祭を盛大に祝う理由がある。
2025年最初にリリースされたシングルタイトルに「Number」が偶然含まれているのは、当然の目配せだろうか? これまたほんの目配せのひとつかもしれない。3月1から開催されている『ミロ展』では、音声ナビゲーターを担当。画家の名前を「3 6」(ミロ)と数字をあてて、読むことが出できる。
ビターな余韻として感じられるソロデビューシングル
さらにさらに2025年は、三代目JSBにとっては15周年でもあり、8度目のドームツアー『三代目 J SOUL BROTHERS LIVE TOUR 2025“KINGDOM”』が、5月から開幕する。もはや、どこからどう祝うべきか、迷う迷う。でもこれは、岩田剛典生誕祭コラムなので、あくまで岩田単体に一点集中とさせてもらう。デビューから15年、36歳かぁと甘い追想とともに感慨深く思うだけで十分なのかもしれない。
「Phone Number」を最初聴いたとき、2021年9月15日にリリースされたソロデビューシングル「korekara」を自然と思い出した。岩田剛典の「これから」の所信表明だったこの曲のアウトロは、左右のチャンネルに音が残響する音作りになっている。新たな第1弾シングルが出た今だからこそ、この残響音が甘くもビターな余韻として感じられるのである。
大ヒット朝ドラ『虎に翼』での名場面

もしかすると、岩田は甘くほろ苦い感覚をソロのテーマにしているのかもしれない。実際それは楽曲だけではなく、彼のソロを構成する俳優活動にもいえるからだ。2024年最大の名演のひとつである朝ドラ『虎に翼』(NHK総合)で特筆すべきビタースウィートな場面がある。
岩田は、主人公・佐田寅子(伊藤沙莉)と恋仲になりかけた同僚判事・花岡悟を演じた。第7週第31回で、裁判官試験に合格した花岡と寅子がレストランで食事する場面。地元であり赴任先の佐賀まで付いてきてほしいという思いを秘めた花岡だが、どうしても正直に言えない。
結局、鈍感な寅子はその気持ちに気づかず、花岡は本心を呑み込んだ。夜の広場。噴水前。絵画的構図の中、寅子は「お互い頑張りましょうね」と右手で握手する。花岡は「ありがとな、猪爪」と返すばかり。彼女がさらに「またね、身体に気をつけてね」と言っても花岡は何も言わず、寅子が握った右手をあげ、背中を向けてあばよという素振りをする。
この無言の素振りが、その後全編を通してビタースウィートな尾を引いた。あぁ、岩田さん。あなたの生誕祭にそんな苦くも甘い余韻を感じられる贅沢をぼくらはどう噛み締めたらいいのだろうか?
<文/加賀谷健>
【加賀谷健】
コラムニスト / アジア映画配給・宣伝プロデューサー / クラシック音楽監修「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu