TBS退社から8年経った今年、紆余曲折を経て20年生活した東京を後にして活動拠点を故郷北海道に戻したアンヌさん。
第25回となる本記事では、女同士の友情について考えます(以下、アンヌさんの寄稿)。
仲良し5人組の一人が数十年ぶりに恋をした
私には長年仲良しの5人組がいます。年齢も婚姻関係の有無も、子どもの有無もバラバラですが、なぜかずっとしっくりい行く友人関係。
お互いの境遇を報告し合うことで、ひとつの社会勉強にもなり、友人の輪の中で何か異常事態があったときは、お互い一肌脱ぐような、そんな女同士の良い関係性が長年にわたり続いています。
そのうちの一人のA子が数十年ぶりに恋をしました。
A子は10年ほど結婚を前提にお付き合いをしていた男性がいましたが、なかなかひどい形で振られ、それが彼女のトラウマとなりました。
彼女はそれをきっかけに都心にマンションを買い、恋愛なんてもう二度とするまいと心に決め、現在は保護猫3匹とともに生活をしています。
おそらくこのまま猫たちとともに穏やかに静かに、仕事を頑張りながら歳をとっていくんだろうなぁなんて、のほほんと笑っていたA子でしたが、彼女はもう絶対にないであろうと思っていた恋に落ちました。
ある日、彼に本心を吐露したA子……

数年ぶりにワンピースを新調し、春色コスメを買い、ネイルサロンに足を運び、痩身エステに通い、彼女は瞬く間に美しくなりました。
それだけでも楽しかったのに、彼女はある日、ふとしたきっかけに、その男性に恋心を吐露してしまったのです。
その答えは、なかなか手厳しいものでした。
そんなとき、A子から私たち5人組に救急信号が発せられました。
助けて、つらい。自分はどうしたらいい? 何もやる気が出ない、と落ち込む彼女のもとに私たちはレスキュー隊のように駆けつけました。
A子のSOSに5人組が集合
彼女と彼の間にどんなやりとりがあったのかはわかりませんが、長年専業主婦をやり、男性心理マスター・B子からは説得力のある恋愛指南が。C子は「あなたは痩せて綺麗になってますます輝いているんだから、絶対卑屈になるな!」と励まし、そしてD子は「告白した日は運気的に見るといわゆる不成就日だったようだから、タイミングがよくなかったね」とそれぞれの得意分野を発揮して、それぞれの方法で彼女に言葉の栄養を与えていきました。
私自身は、とにかく彼女の話をしっかり聞くことしかできませんでしたが、歳を重ねて思うのは、つくづく女の真の友情って何にも代え難いパワーになり、そしてこれは間違いなく一生ものの財産であるということ。
今回はA子の失恋騒動に、それぞれ立場が違えども、ギュッと女たちが集結し、泣きじゃくる彼女の肩に目に見えない暖かい毛布を掛け、彼女の涙を見えないハンカチで拭い、あつあつのココアを淹れて(これも見えないけど)、灯が今にも消えてしまいそうなキャンプファイヤー状態の彼女を女たちが囲み、ただ言葉を重ねていくという時間。
友情は「明日も生きていける」強さを与えてくれる

終わりのないLINEのやりとり、家事の合間を縫っての短時間の電話。つながっているだけで嬉しくなるし、安心するし、なにかあっても笑い飛ばしてくれる。こんな友情は、どんなにお金をつんでも買えるものではないのです。ご縁、タイミング、フィーリング、すべてが合致しないと巡り合えるものではありません。
真の友情ほど尊いものはないでしょう。
このように文章化することを許可してくれたA子に感謝ですし、A子を瞬く間に温かな友情で包み込んだB子、C子、D子の、どんな占い師よりも救いを与える力強い言葉の数々に私は勇気づけられています。
そして私は、彼女たちになにかあれば真っ先にかけつけようと決めています。私の宝物。それが友情。
<文/アンヌ遙香>
【アンヌ遙香】
元TBSアナウンサー(小林悠名義)1985年、北海道生まれ。お茶の水女子大学大学院修了。2010年、TBSに入社。情報番組『朝ズバッ!』、『報道特集』、『たまむすび』などを担当。2016年退社後、現在は故郷札幌を拠点に、MC、コメンテーター、モデルとして活動中。文筆業にも力を入れている。ポッドキャスト『アンヌ遙香の喫茶ナタリー』を配信中。