朝ドラは初出演。
男性俳優の演技を独自視点で分析するコラムニスト・加賀谷健が、明確なブランドイメージがある中村アンを解説する。
わかりやすいギャップが魅力

本来、華やかそのものを身にまとうかのような中村のイメージとは対照的な役柄で、かなり新鮮に感じた。彼女が演じた南さやかは、日本のラブコメ作品において、地味要素の必需品として扱われるメガネを例にもれず装着。
あまりにベタ過ぎるが、わかりやすいギャップが魅力。第1話冒頭、周囲はクリスマスを謳歌する恋人たちばかり。彼らを横目に、さやかはひとり、おでんを買って帰る。
明確なブランドイメージ

実際、それ以降の中村は、初主演ジャンルであるラブコメにイメージが固定されることなく、最近ではこれまた新鮮な刑事役に挑戦した『約束 ~16年目の真実~』(読売テレビ・日本テレビ系、2024年)が記憶に新しい。黒を基調にした衣装をまとったクールな刑事役を演じても馴染む。
オールジャンル、どんな役でもこなしてしまえる器用さ。
イメチェンしたターニングポイント的な作品
そのイメージについて、ビジュアルの観点からより具体的にいうなら、ヘアスタイルのロングかショートに大きく区分できる。俳優として本格的に活躍する以前の中村は、特にバラエティ番組などで、麗しいロングヘアを画面上でなびかせいた。中村アンといえば、ロングヘアがトレードマークというパブリックなイメージすら固定化していた。実際、『ラブリラン』でもこのロングヘアが大きな変身要素になっていた。それが大胆にショートヘアに転換したのが、川口春奈と横浜流星が共演したドラマ『着飾る恋には理由があって』(TBS、2021年)からである。
つややかなロマコメ的世界を日本のテレビドラマに導入するオリジナル脚本を書いた金子ありさの手腕により、素敵な同性(女性)友達というキャラクターイメージが、中村が演じた孤高の画家役に込められた。
同作出演からショートヘアにイメチェンしたことは当時大きな話題になり、中村にとってターニングポイント的な作品になった。
朝ドラ初出演、初登場した中村アン

近年の出演作で特に好印象だった王道ラブコメドラマ『青島くんはいじわる』(テレビ朝日、2024年)でもショート寄りのバリエーションが実に風通しがよく感じられた。相手役の渡辺翔太と共有し、醸成する程よくラブリーな空気感は、多幸感にあふれていた。
翻って朝ドラ初出演作『おむすび』では、患者が食べる病院食を「メシ」と言語化するクールで乾いた性格の医師・蒲田令奈役を演じている。
<文/加賀谷健>
【加賀谷健】
コラムニスト / アジア映画配給・宣伝プロデューサー / クラシック音楽監修「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu