卒業・入学式などセレモニーに「ジレ」はアリか?
今、Threads(SNS)を賑わせているのが「卒・入式に着物がダメって思ってる人いるんだ…流行りとはいえジレが式典に相応しいと思ってる人いるんだ…モヤモヤモヤ」という投稿。この投稿を見た人からは「ジレを買ってしまったけど卒園式にジレってダメなの?」「ジレを着ていくつもりだけど常識のない人だと思われる?」など心配する声が相次いでいます。(「ジレ」GILETとはフランス語の「中衣」の意味。袖がなく前開きで、ベストやチョッキと呼ばれていたもの。日本では2018年あたりからジレという呼び名も広まりました)
冒頭の投稿をした人のコメントをさかのぼると、「卒・入式を終えてから数十年」で「ただの独り言でございます」とあり、現役で卒入学式に出席している人たちよりもひと回り上の世代であることがわかります。数十年前は卒入学式にジレはナシだったと思うので、とても常識的な方なのだと思います。

「セレモニーはジャケットでなくてもいい」派が54%
ユニクロなどを運営するファーストリテーリンググループのPLST(プラステ)が、全国の保育園・幼稚園~高校生の子ともがいる20~59歳のママ500名を対象に実施したインターネット調査(調査日:2025年1月23日~24日)によると、「セレモニー服はカジュアル化していると思う」77.0%、
「セレモニーの際にはジャケットを着用しなくてもいいと考えている」54.4%


一方で、約9割の人がどこまでカジュアルにしていいかわからないと回答しています。記念すべき日にマナー違反になりたくない気持ちがあることもわかります。
セレモニーでジレを着る時のポイント
学校や地域によって雰囲気が違うので、ひとまとめにして語るのは難しいのですが、私はジレもコサージュもアリだと考えています。ツイード素材のジレを選ぶ、キャンディスリーブなど華やかなデザインのブラウスにする、コサージュやブローチをプラスするなど、着こなしにひとつセレモニーらしいポイントがあると◎。

時代によって常識やマナーは変わる
歴史的な出来事と共に、人々の装いも変化してきました。1868年の明治維新後、政府は一刻も早く欧米に並ぼうと洋服を軍・警官・駅員など公職に就く者の制服としました。それでもなかなか一般の人には広まりませんでした。日本人が洋装を日常的に着るようになったのは大正時代になってから。1923年に起こった関東大震災がきっかけだったと言われています。大阪で誕生した庶民的な簡易服「あっぱっぱ」は女性の普段着として流行しました。ちなみに江戸時代はお葬式に白を着ていくのが一般的だったそうで、お葬式=黒が常識となったのは洋装が広まってからのことだそうです。

頑張りすぎないスタイルが普通になった
ここ10年くらい、世界的にエフォートレスなライフスタイルが流行しています。effortは努力という意味で、エフォートレスとは「肩の力が抜けた」「頑張りすぎない」スタイルのことを指します。「式典にしか着ない服ってもったいないよね?」という発想も、頑張りすぎないマインドが影響しているように思います。
働くママが増えているのも一因だと思います。午前中に式典に参加して、そのままの服装で出勤する人もいます。仕事場でも浮かないコーディネートが好まれるようになっていると思います。
最後になりましたが、この春お子さんの卒園・卒業・入園・入学式を迎えたママの皆さん、おめでとうございます!思い出に残る素晴らしい1日になりますように。
<文/大日方理子 画像/PLST、WEARより>
【大日方理子】
(おびなた・りこ)スタイリスト。1979年生まれ、お茶の水女子大学卒。