そんなゴミストレスからの解放を目指す「全自動ゴミ箱」が、クラウドファンディングサイト「Makuake」で6700万円超の応援購入総額を記録しました。これは2025年2月4日時点で実施中の全プロジェクトで1位だったとか(製品担当者調べ)。4315人ものサポーターを集めたその驚異的な人気の秘密を探るべく、開発担当者に話を聞きました。
スーツ姿でのゴミ出しから生まれたアイデア
「Makuake」での目標金額30万円に対して、たった1時間で応援購入総額1700万円を突破。最終的に6742万7971円という金額と4315人ものサポーターを集めたのは、自動ゴミ箱の「THE PERFECT BOX(ザ・パーフェクトボックス)」です。ワンタッチで、フタの開閉、ゴミ袋のセット、ゴミ袋の密封まで、自動でやってくれるそうなんです。まだ購入者に商品が届いたばかりなので、実際に使ったクチコミが出てくるのは今後ですが、いったいどんなゴミ箱なのでしょうか?
この商品は、リビングハウス(家具・インテリア等の企画販売)と、谷村実業(建材・生活家電等の商社「T-PROFESSIONAL」)による共同開発プロジェクトから誕生しました。「Makuake」での販売は終了しましたが、リビングハウスのオンラインストアやAmazonでの販売もスタートしました(スモール 11L 3万3000円、ラージ 30L 4万4000円/税込一般販売価格)。
開発のきっかけは、谷村実業の担当者である陶澤欣さんが感じていた、日常の小さな不満でした。
「出社前にスーツを着た状態でゴミ出しをしていたんです。そうすると、時々手に生ゴミがついたり、ニオイが服に移ったり……。それが本当に嫌で」(陶さん、以下同)。

ほかの自動ゴミ箱と、どこが違う?

「最大の違いは、UVCライトによる99.9%の除菌機能で、気になるニオイを元から断つことができる点です。さらに、ゴミ袋は自動で完全に密封されるため、室内に置いていてもニオイや虫が発生する心配がありません」
ゴミ箱の内側にUVCライトが付いていて、フタを開けると自動でライトがオフに、閉めるとオンになる仕様です。

「ゴミ袋は、半透明のもの採用して、自治体の回収基準にも適合させています。他社製品は黒いゴミ袋を使うものがあり、自治体によっては回収してもらえないケースもあるんですよ。
交換用ゴミ袋の収納性にもこだわっています。他社製品には、替えのゴミ袋に枠が付いているものがあり、保管にスペースを取ってしまいます。そこで、当社の製品用ゴミ袋はコンパクトに収納できるようにしています」

そのほか、調理中などに便利な、蓋を常時開けておけるモードも搭載。

SNSがクラファン成功の鍵に

リビングハウスの松田彩沙さん(以下松田さん)は「とにかく初速をつけることを最重要視しました」と語ります。
「クラファン開始2~3週間前からSNSに広告を展開し、とくにインスタグラムのリール(動画)に力を入れました。動画制作には10時間以上かかっています。そして、興味を持ってくださった方をLINEに誘導し、常に接点を持つように心がけました」(松田さん、以下同)
LINEでは発売日までカウントダウン行い、あと1日、あと1時間……、「いよいよ発売される!」というワクワク感を演出。その結果、開始わずか1時間で1700万円、1日で3000万円という驚異的な応援購入額を達成したそうです。
想像をはるかに超えた「ゴミストレス」への共感

「ゴミ袋のセットや口を縛る作業は、意識されることの少ない『名もなき家事』そのもの。そこから解放されたいという潜在的なニーズが、私たちの想像以上に大きかったようです」
些細に思えることでも、積み重なれば大きなストレスとなる「名もなき家事」。
「除菌機能があり、ゴミをしっかり密閉できるので、ゴミ袋の取り出しは子どもでも安心してできます。自動でフタが開閉したり、音声で案内したりする機能は、子どもたちの興味も引くと思うので、お手伝いを頼みやすくなるかもしれませんね」
ペットや赤ちゃんのいる家庭に好評
しかし、1000円以下のゴミ箱を使っている筆者にとって、何万円もするゴミ箱のニーズは正直なところ想像しにくいものでした。どんなきっかけで高額なゴミ箱に興味を持つ人が多いのでしょうか?「ペットの排泄物や赤ちゃんのおむつなど、強烈な臭いを発するゴミに悩むご家庭からの関心が高いようです」
やはり、多くの人が悩まされているのは「ニオイ」の問題。
ちなみに、「THE PERFECT BOX」は雑貨としての「ゴミ箱」ではなく「家電」と捉えられているとのこと。食器洗い機やロボット掃除機のように、いつか多くの家庭で自動ゴミ箱を見かける日が来るかもしれませんね。
今後の展開について、「Makuakeは、新しいものに敏感で『いち早く体験したい』『作り手を応援したい』と思うお客様から支持されているプラットフォームということもあり、高い評価をいただけました。今後は介護施設や飲食店のサニタリーボックスなどとしても検討してもらえるような展開を考えたいと思っています」と、松田さんは話します。
さて一般市場でどう評価されるか?
取材を通して感じたのは、この製品は単なる高機能なゴミ箱ではなく、日々の小さなストレスから私たちを解放してくれるソリューションだということです。「なくならないゴミの悩み」に対して、テクノロジーで具体的な解決策を提示したことが、多くの人々の共感を呼んだのではないでしょうか。
ゴミ捨ての手間、ニオイ、衛生面への不安——これらの悩みを解消することに、4300人以上のサポーターが2万円を超える価値を見出したともいえます。筆者が想像していた以上に、これらに悩む人が多かったんですね。
Makuakeで期待を集めた「THE PERFECT BOX」は、今後一般市場でどのように評価されていくのでしょうか。Amazonやリビングハウスのオンラインストアに加えて、今後は実店舗で実際に見て触れる機会もつくっていくそうです。
<文・撮影/栗山佳子>
【栗山佳子】
損害保険会社で情報誌の編集に携わったのち、生活情報誌、住宅情報誌の編集を経てフリーランスに。