安心してください。手術されているのは人間ではありません。
お尻が破けたぬいぐるみを子どもたちと手術
「友達にもらった大切なぬいぐるみが破れて娘が泣いていたので一緒に手術で治しました。手術用ハサミを少しプロっぽく扱えるようになりました。娘がとても喜んでくれてよかったです」(月岡さんのポストから)執刀医は月岡さんで、助手を務めたのは8歳の娘さんと6歳の息子さん(※ともに当時の年齢)。そして患者は、お尻の部分が1~2cm破けたワンちゃんのぬいぐるみでした。

臨場感たっぷりのセッティングは月岡医師の発案

月岡:今、私たち家族はアメリカにいるのですが、アメリカから日本に帰る親友の子から娘がもらったぬいぐるみでした。お尻のところが破けたので、糸と針で修復したという感じです。
――Xにアップするために手術っぽい状況をとりあえず撮影しただけではなく、本当に手術をされたわけですよね……?
月岡:そうですね。臨場感を出したほうが子どもも楽しいかなと思い、手術っぽい感じでやってみました。ぬいぐるみを手術台に乗せ、傷口以外の箇所には布を被せて、ちゃんと手術用のハサミとピンセットを使って縫合しています。
――本当に臨場感たっぷりですね(笑)。
月岡:そうですね。最初は「パパ、直して」と言われたので一人で修理するつもりだったのですが、自分でやらせたほうが責任感を実感してくれるかなと思い、「やろうよ」と声をかけました。
パパに「手術しようよ」と言われた子どもたちの反応は…
――なにかあっても人任せにすれば解決する……ということではなく、自分の手で直してみようということですね。ただ、そのやり方もただ縫って修理するのではなく、今回は手術という形式でした。「手術しようよ」と呼びかけたとき、子どもたちはどういう反応でしたか?月岡:やっぱり、ビビり散らかしていました(笑)。「怖いし、失敗したら責任重大だからやりたくない」と言われたのですが「助手だから、そばにいればいいよ」と言うと、渋々参加してくれました。でも、手術が始まると姉弟でハサミや糸を取り合いながらノリノリで手伝っていたので、楽しくはやってくれたみたいです(笑)。
――ビビり散らかしていたということは、手術に対するリアルなイメージが子どもたちのなかにもあったんでしょうね。
月岡:そうですね。「失敗したら大ごとだ」というビビり方をしていました。
――娘さんと息子さんは助手を務めたそうですが、どんな働きをしていたのでしょうか?
月岡:本当の手術と同じ働きをしてもらいました。執刀医が縫って結んだ糸を切ったりするのが、助手の役目です。
本当の外科手術ばりにハサミを使いこなした子どもたち
――ドラマでもよく見る動きをやったのですね! ところで、Xのポストには「手術用ハサミを少しプロっぽく扱えるようになりました」と書いてありました。どんな動きを見てそう感じたのでしょうか?月岡:一つ目は、ハサミの持ち方です。
――本当の手術では鉄則の「ハサミに指を深く入れない」「切るときに左手を添える」ができていたのですね! 当初はビビり散らかしていたとは思えない、素晴らしい動きです。そんな動きをしている子どもたちを見て、パパとしてはどういう心境でしたか?
月岡:やっぱり、可愛くて微笑ましいですね。「いいなあ」という感じで、堪能させていただきました(笑)。
勤務先の病院でぬいぐるみを手術したことも


――ぬいぐるみ手術をする際は、以前から子どもたちもお手伝いをしてくれているのですか?
月岡:いえ。子どもたちも成長し、安全にハサミを扱えそうな成長を感じたので、初めて手伝ってもらうことにしました。
――手術という表現でぬいぐるみ修理を行ったので、子どもたちにもぬいぐるみを通じて命の大切さが伝わったかもしれません。
月岡:はい、そうですね。
外科手術とぬいぐるみの手術はまったく別もの

月岡:いやいや、得意ではないです。別ものですからね(笑)。
――やはり、別ものですか(笑)。ただ過去に、破けた娘さんのズボンを心臓手術用の糸とTシャツでパッチ閉鎖しているポスト(2023年8月20日)を拝見しました。
月岡:ああ、そうでしたね。でも、全然別の技術です(笑)。

子どもたちの将来の選択肢には「医療」も入れてほしい
過去の月岡さんのXを遡って見ると、興味深いエピソードに出くわします。2022年5月23日に発信されたのはこんなポストでした。月岡:一緒に寝ていた4歳男児が、朝5時に『お! パパの心臓が止まっています!』と言って、心臓マッサージしてきました。手の位置、リズム、力加減いずれも悪くないですが、まじやめて欲しい
――少し気の早い質問ですが、将来的に子どもたちに医療の道へ進んでほしいという思いはあるのでしょうか?
月岡:選択肢の一つとして捉えてくれたらなあ、とは思っています。今回の手術などで慣れてもらって、馴染みがあると感じてくれればいいなあと。
――正直、パパとして期待しているところはありますか?
月岡:「子どもたちがやりたければ、やってもいいかな?」という感じです。ただ、僕自身は手術など外科医の仕事を楽しくてやっているので、オススメではあります。でも、その思いを子どもたちのプレッシャーにしたくない……という気持ちもありまして(笑)。だから、あまり強くは言っていません。慣れ親しんでもらうなかで、選択肢の一つに加えてもらえればいいかなというぐらいです。
――ただ、普通の子どもは心臓マッサージなんてなかなかしないとは思います(笑)。医療に慣れ親しんでいるからでしょうし、もしかしたらすでに息子さんは志しているのかな? とも感じました!
月岡:フフフ、どうでしょうかね(笑)。
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決して“ごっこ”というレベルではなかった、月岡家によるぬいぐるみ手術。この体験を通じて子どもたちは「命の大切さ」と「人任せにしない責任感」を知り、ひょっとすると未来への道筋が拓けてくる可能性もあります。
心臓外科医ならではの教育法、非常に感銘を受けました!
<取材・文/寺西ジャジューカ>