投資詐欺に遭ってしまった実体験を描いた漫画、『離婚準備金を投資詐欺で溶かした話』。作者のペぷりさん(@pepuritan)は、夫と将来的に離婚することを検討しているため、「離婚後、2人の子どもに迷惑をかけないように教育資金を貯めておきたい」という切実な思いがあったといいます。
そこで2024年に新NISAがスタートしたことをきっかけに投資を始めました。

 始めはSNSなどの情報を頼りに見よう見まねで個別株投資をしていたペぷりさん。しかし思うように結果が出ず「投資のコツを知りたい」と考えます。そして、あるとき「無料で投資情報を教えます」というSNS広告に興味を持ったことから、投資詐欺に遭ってしまいます。

 LINEグループに参加すれば、投資業界の著名人を名乗る「先生」から、「次に必ず値上がりする銘柄」を教えてもらえるという広告内容に惹かれたペぷりさん。しかし、それは「仕手株(仕手筋と呼ばれる投機的な投資家グループが、大量の売買を繰り返すことで株価を意図的に乱高下させる銘柄のこと。株式数の少ない小型株が対象になりやすい)」を悪用した投資詐欺の手口だったのです。

 前編では詐欺の入り口について聞きましたが、後編では漫画から4~6話を紹介。記事後半からは「なぜ途中で詐欺と気づいても引き返せなかったのか」や、今だからこそ語れる教訓についてペぷりさんに話を聞きました。

離婚のために必死で貯めたお金を一瞬で溶かしてしまった女性。そ...の画像はこちら >>


離婚のために必死で貯めたお金を一瞬で溶かしてしまった女性。そのワケを本人に聞いてみると<漫画>
『離婚準備金を投資詐欺で溶かした話』


離婚のために必死で貯めたお金を一瞬で溶かしてしまった女性。そのワケを本人に聞いてみると<漫画>
『離婚準備金を投資詐欺で溶かした話』


離婚のために必死で貯めたお金を一瞬で溶かしてしまった女性。そのワケを本人に聞いてみると<漫画>
『離婚準備金を投資詐欺で溶かした話』


離婚のために必死で貯めたお金を一瞬で溶かしてしまった女性。そのワケを本人に聞いてみると<漫画>
『離婚準備金を投資詐欺で溶かした話』


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『離婚準備金を投資詐欺で溶かした話』


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『離婚準備金を投資詐欺で溶かした話』


離婚のために必死で貯めたお金を一瞬で溶かしてしまった女性。そのワケを本人に聞いてみると<漫画>
『離婚準備金を投資詐欺で溶かした話』


離婚のために必死で貯めたお金を一瞬で溶かしてしまった女性。そのワケを本人に聞いてみると<漫画>
続きはぺぷりさんのInstagram(@pepuritan)へ


詐欺と疑いながらもすぐに引き返せなかった理由

――ペぷりさんが、「詐欺なのでは?」と気が付いたのはいつだったのでしょうか。

ペぷりさん(以下、ペぷり):先生が指定する銘柄に大きな金額を入金してから株価が下落し始めて、不安になって詐欺について検索したときです。たまたまネットで見た投資詐欺の過去事案が、そのときの私の状況と酷似していたことに気づきました。

でも、そのときには「このまま先生の言う通りにして利益を上げられたら、離婚資金を貯めて予定より早く離婚できる!」と期待してしまい、詐欺だと信じたくなかったんです。


「今は一時的に下がっているけど、最終的には前回みたいに株価が上がるよね?」という考えにすがっていました。また、そのときはまだ先生が著名人だと信じていたので、「著名人が一般人を煽って大損させたなんてことになったら大変なことになるから、大丈夫なはず」、「先生は『今週末にはあがる』と具体的な時期を明言しているのだから、嘘なわけない」と自分に言い聞かせていました。

――実際には、詐欺師はあらかじめ自分たちの意図的な仕手株(株価を操作するために買い集めておいた銘柄)をターゲットに全力買いを指示。そして株価が上がったタイミングで売り抜ける、という手口だったわけですよね……。誰か相談できる人はいましたか?

ペぷり:誰にも相談できませんでした。投資なんて、ラクしてお金を儲けようとしているようで、とても後ろめたいことだと思っていたので……。

希望とともに消えた全財産

離婚のために必死で貯めたお金を一瞬で溶かしてしまった女性。そのワケを本人に聞いてみると<漫画>
画像はイメージです(以下、同じ)
――最終的に、ペぷりさんの被害額はどれくらいだったのでしょうか。

ペぷり:私のほぼ全財産を指定された銘柄に投資し、その直後の暴落によって株価が20分の1になりました。例えばですが、100万円が5万円になるくらいの損害です。離婚を考え始めてから、約5年間かけて貯めたお金でした。

私は「夫といつか離婚すること」だけを希望に、たくさんのことを犠牲にして必死で貯金してきました。おかしな話ですが、「離婚」が私の人生の最終目標になりつつあったんです。そのためのお金が一瞬にしてなくなり、希望が失われて、生きる気力を失くしてしまい……。
もうすべてがどうでもよくなってしまいました。

――警察や弁護士などに相談はしましたか?

ペぷり:相談することも考えて、当時のLINEの記録などはすべてとってあります。ただ、私が調べた限りでは、自分の口座を使用して、自分の意思で投資をした私のようなパターンでは、訴えてもお金を取り戻したりできないことを知りました。もうこのことを考えることすらつらかったので、相談には至りませんでした。

――ネット上には、投資の知識を教える、アドバイスを行うことを謳うような広告が溢れていますが、怪しいものを見分けるのは難しいのでしょうか。

ペぷり:LINEグループやオープンチャット、SNSを使って、わざわざ他人に対して手間をかけて買い煽り(株価を上げようとして取引に誘導する行為)をしているのは、「怪しい」と疑ったほうがいいのではないでしょうか。確実にもうかるのなら、本人が投資をして大もうけすればいいだけの話で、わざわざ見ず知らずの人に投資させる必要はないはずですから。不確実な投資の世界で「必ず」という言葉を使う時点であやしいと思います。

違和感を覚えたら、一度立ち止まる勇気が大切です。先生を神のように崇めていたり、やたらと豪遊報告が多かったり、日本語が不自然だと感じる場合なども、注意が必要です。

「絶対もうかる」は要注意! 違和感を大切に

離婚のために必死で貯めたお金を一瞬で溶かしてしまった女性。そのワケを本人に聞いてみると<漫画>
「投資詐欺」と書かれたニュースの見出し
――最近、流行っている投資詐欺の手口について耳にしたことはありますか?

ペぷり:暗号資産の詐欺が増えていると聞きます。株と同じように「この口座に入金したらこちらで運用し、普通ではあり得ないような高い利益率で還元します」といった手口です。
また、送金をするためにウォレット(電子マネーや仮想通貨を管理するアプリ)を紐づけたら、そこに入っていたすべての仮想通貨を海外のウォレットに送金されてしまったという被害があるそうです。

――現在も投資を続けているそうですが、どんなことに気をつけていますか?

ペぷり:今は細々と新NISAで無難な投資信託への積み立て投資をするくらいです。投資詐欺に遭ったトラウマで、もう2度と個別株には手が出せません。私には投資の才能がないことがわかったので、短期での売買はせずに、長期目線で少額コツコツ購入するだけにしています。

最近はやっと、「お金に目がくらんでバカなことをしたな」「高すぎる授業料だった」少し冷静に振り返ることができるようになりました。しかし、この一件の影響で投資以外のことに関しても、確実に人間不信になってしまったと思います。

――この作品を読んだ方へ、メッセージをお願いします。

ペぷり:投資に関しては、「自分以外信じるな」と伝えたいです。ネット上ではなんとでも言えますが、起こってしまったことに対する責任はとってくれません。誰かの情報を信じるのではなく、自分で納得するまでとことん調べてから売買することが大切だと思います。

お金が絡む投資の世界は「お金の奪い合い」だと感じました。シビアな気持ちで向き合わないとつらい思いをしてしまいます。
生きていく上でお金はとても大事です。私と同じような悲しい思いをする方が1人でも減ってほしい。少しでも多くの方にこの漫画を読んでいただけると嬉しいです。

<取材・文/都田ミツコ 漫画/ぺぷり>

【都田ミツコ】
ライター、編集者。1982年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。
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