『ブレーメンの音楽隊』を思い出してしまいました。鹿児島県の離島・喜界島に移住したピアニスト・ぴあやのさん(@piayano2017)がInstagramに投稿しているのは、頭の上ににわとりを乗せた状態でピアノを弾き続ける演奏動画。


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 なにがいいって、演奏に合わせた(?)絶妙のタイミングで「コケコッコー!」とにわとりが合いの手を入れてくることです。

 果たして、にわとりは音楽を理解しているのか? 演奏中、にわとりは邪魔じゃないのか? なんで、頭の上ににわとりが乗っているのか? 気になることだらけなので、ぴあやのさんに話を聞いてみました。

ぴあやのさんのにわとり事情

 まずは、ぴあやのさんの家の状況について説明します。なんと彼女、合計5羽のにわとりを飼っているそう。

・ピヨくん(オス。茶色くて大きい、にわとりのボス的存在。2024年4月6日にぴあやの宅へやってきた。年齢不詳だが、推定3歳)
・ピナちゃん(メス。年齢は3歳)
・ヨナくん(オス。体は白い。ピヨくんとピナちゃんの子どもで、年齢は1歳)
・レモンちゃん(メス。体は真っ白。年齢は0歳。
9月下旬に1歳を迎える)
・みかんちゃん(メス。体は薄い茶色。年齢は0歳。9月下旬に1歳を迎える)

 5羽を一斉に放し飼いすると家が大変な状況になるため、1~2羽は家に入れ、残りのにわとりは「外に遊びに行っておいで」と家から出すか、入りたそうにしていたら「また入ってきていいよ」と迎え入れる……という形で調整しているとのこと。もちろん、夜間は家のなかで面倒を見ています。

頭の上にピョ~ンと乗っかってきたのがはじまり

――どうして、こんな動画が撮れたのでしょう。演奏中、自然ににわとりが紛れ込んできちゃったのですか?

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2024年3月、にわとりが初バズリ
ぴあやの:もともと、にわとりとは常に一緒にいたんです。足元にずっと座っているか、ピアノを弾くと肩や頭によく乗ってくるので、それがきっかけです。私が練習してると、勝手にやってきちゃう。

――普通にピアノの演奏を撮影しているとき、たまたまピョ~ンと乗っかってきたんですか?

ぴあやの:最初はそうでした。ただ、このサイズの子が頭に乗ってくるというのはよっぽど怖いとき以外ないので、今は弾くときに乗ってもらうようにしています。

――一番はじめにバズったのは、どの動画ですか?

ぴあやの:最初にバズったのは、死んじゃったんですけどナッチョという黒いメスのにわとりが足元にいる2024年3月の動画です。一番はじめに私が飼い始めたにわとりでした。
モーリッツ・モシュコフスキという人の『15の練習曲 第6番 Op.72-6 ヘ長調』を弾いています。

もちろん、弾きにくい

――頭の上に乗っていたら弾きにくくないのかなと思っちゃうんですけど、どうですか?

ぴあやの:もちろん、乗せてないほうが弾きやすいですね(笑)。

――ハハハハ! そりゃそうですよね(笑)。

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肩の上ににわとり、左足の上にもにわとり
ぴあやの:でも、思ってるほど弾きにくくはないんです。ちゃんと、真ん中に乗っといてくれれば。むしろ、じっとしててくれるなら肩より頭の上にいるほうが弾きやすいです。肩の上だと、私の体が少し斜めにならなきゃいけないから。

――肩ににわとりを乗せた動画も結構ありますが、腕と直結する肩に乗っかられるとダイレクトに演奏に影響してしまいますね。

ぴあやの:はい。

心配なのは…

――にわとりはピアノの上に粗相しちゃわないですか?

ぴあやの:はい、します。にわとりは高いところが好きで、「上に登りたい」という本能からピアノの上に乗ってくるんです。以前は、それでよく失敗していました。でも、最近は糞をされちゃいけない場所に長く留まらないよう「もうちょっと行って」って、うまいこと促しています(笑)。あと、連続して糞をすることはあまりないので、事前にトイレをさせて「さっきしたから大丈夫だろう」と準備してから撮影をしたり。


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鍵盤の上を行き来するナッチョ
――糞をしないタイミングを見計らって演奏するんですね。

ぴあやの:はい。あと「ぴあやののそばにいたい」という気持ちから、私がピアノを弾いていたらにわとりたちはだいたい集まってきます。それで、椅子の上か、肩か、ピアノの上に乗っかってくる。

そういえば、ピナと亡くなったナッチョは演奏中の私の左足がすごく好きでした。だから、足の甲に乗っている動画もいくつかあります。

――それ、演奏に影響ありそうですね(笑)。

ぴあやの:そうですね。ソフトペダルと言って、一番の左のペダルを踏むと少し音が弱くなるんです。なんとなく、それをにわとりに踏まれちゃってる感じはあります(笑)。

――でも、良い言い方をすれば「一緒に演奏している」ということになるのかな?

ぴあやの:ペダルを担当してくれてると思えば、そうなりますね(笑)。

にわとりは音楽を理解しているのか

――ぴあやのさんの動画がバズった要因の一つとして、絶妙なタイミングで入る「コケコッコー」の合いの手があると思います。これは合図を出しているわけではなく、ガチでいいタイミングに鳴くんですか?

ぴあやの:ガチで鳴いてます(笑)。
別に、なにか教えているわけではないんです。気まぐれで鳴く「コケコッコー」が、意外と曲にピッタリ合って。

――ということは、にわとりは音楽を理解していると思いますか?

ぴあやの:どうだろう? 音楽っていうより、私の呼吸は理解している気がするんですね。曲で間を溜めたり私の変化は伝わってるっぽくて、それには反応してるのかなあ……。あと、別のにわとりが鳴いているから、それにつられて鳴くときもあります。

――にわとりは音楽が好きな生き物だと思いますか?

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ぴあやのさんの左足は、にわとりにとっての特等席
ぴあやの:どうでしょう……。でも、振動を感じているとは思うんです。普通、足元なんてうるさいですよね? だけどずっと足元にいるし、なんならナッチョとピナは私の左足を奪い合っていたんです。にわとりにとって、私の左足は特等席でした(笑)。だから、振動が心地いいのかなって。たとえば、スピーカーから流す曲につられてにわとりが寄ってくることは、あまりないんですね。

――じゃあ、にわとりはCD派ではなく生音に反応するライブ派なんですね(笑)。


ぴあやの:ハハハハ! うん、生音が好きかもしれないですね。

にわとりも音楽の好みがあるのか

――「こういう曲が好きかも?」と感じる、にわとり好みの曲調はありますか?

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バラードのチルい雰囲気に浸っているにわとり
ぴあやの:今のところ、法則性のようなものは見出していないです。ただ、リラックス中のにわとりは、猫ちゃんが喉を鳴らすような「トゥルルルル」という音を出すんですね。照明を落として静かな曲を弾くと、肩に乗って「トゥルルルル」と言いながらうっとりした表情を見せることはあります。

――人間がバラードを聴いて浸っているみたいな?

ぴあやの:そうそう、そういう感じ。その表情を見たのは1~2回程度じゃないので、それはあるのかなあ? もしかしたら私がリラックスしてるから、それが伝わっているだけの可能性もありますね。

移住したから気兼ねなく「コケコッコー」できる

――ぴあやのさんが喜界島に移住した理由を教えてください。

ぴあやの:一言で言ったら、窓を開けてピアノが弾きたかったからです。普通は無理ですよね(笑)。

――隣の部屋の住人が急にピアノを弾き出したら、やっぱり「ん?」ってなりますからね。

ぴあやの
:そうなりますよね。だから、「窓を開けてピアノが弾けたら最高!」と思ったのが一番大きいです。で、できれば自然のなかで風と光と一緒にピアノが弾きたい、みたいな。


――めっちゃ気持ち良さそうですね!

ぴあやの
:そうなんです。その願いが全部叶っているのが今の環境なんです。

――今の環境を確保したから、「コケコッコー」というにわとりの合いの手がOKになったということにもなりますね。

ぴあやの
:はい、そうですね。

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離島の住む環境が、「コケコッコー」の合いの手を可能にした
――Instagramには多くの反響が寄せられていると思うのですが、どういった声がありますか?

ぴあやの:「今、練習してます」という人がいました。「『にわとりを肩に乗せたい』と子どもが言うから、今は生まれたてのひよこを一生懸命肩に乗せています」って。

――ピアノを弾くだけの練習ではなく、にわとりとジョイントする練習ですか!

ぴあやの:あと、よくあるのは「ライフゴール」というコメント。「いつか、私もこういう生活をしたい」「引退したらこうなりたい」と言ってくれる方も多いです。

――ぴあやのさんは「窓を開けて演奏したい」という思いを実現されました。そして、「コケコッコー」と鳴くにわとりと気兼ねなく演奏しています。その動画を見て、「私も!」ということですよね。

ぴあやの:はい、「私もいつか」「自然とともに」という声はよくいただきます。

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音楽とにわとり、意外な相関関係を図らずも明らかにしているぴあやのさんの日々の暮らし。彼女のInstagramを見れば“ぴあやの with にわとり”が奏で演奏動画に触れることができるので、必見です。

おいしい卵を産ませようと、にわとりにクラシック音楽を聴かせる養鶏場があるのは有名。つまり、ピアノとにわとりは相性が良いのかもしれません。絶品のピアノと絶妙な「コケコッコー」を、動画からぜひ体験してください!

<取材・文/寺西ジャジューカ>
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