この春クール、超ベテラン俳優・中井貴一が演じる“長倉和平”がやたら萌えます。

「月9」63歳俳優がやたらと“萌える”。視聴者が惹かれずには...の画像はこちら >>
長倉和平は『最後から二番目の恋』シリーズの主人公。
もともと魅力的なキャラクターではありましたが、放送中の『続・続・最後から二番目の恋』(フジテレビ系、月曜よる9時~)でより磨きがかかったように見えるのです。そんな“長倉和平”に惹かれる理由を分析します。

※最新話までのネタバレを含みます。

振り回され続ける男・長倉和平

長倉和平は、長倉家の長男。両親を早くに亡くしたことから、一家の大黒柱として実直で誠実に生きてきた鎌倉市役所の職員です。妻も事故で亡くしており、娘のえりな(白本彩奈)をひとりで育ててきました。

性格は生真面目で理屈っぽく、なにかと説教くさい。また、何故か未亡人ばかりにモテる女難体質でもあります。口うるさくも頼りになるからか、もう一人の主人公・吉野千明(小泉今日子)や、個性的な弟妹・典子(飯島直子)、万理子(内田有紀)、真平(坂口憲二)にはずっと振り回されがち。

第1期では親子ほど年齢差のある知美(佐津川愛美)と知美の母親で未亡人の秀子(美保純)に。第2期では、えりなの彼氏の母親で未亡人の薫子(長谷川京子)や未亡人の鎌倉市長(柴田理恵)に好意を寄せられてきました。本作では、またも未亡人の早田律子(石田ひかり)に「自分を壊したいんです。だからめちゃくちゃにしてください」と無茶ぶりをされています。


不器用だけど愛に溢れる言動

そんなクセの強い女性たちに翻弄される長倉和平の振り回されっぷりは、実にチャーミング!演じる中井貴一の困り顔のバリエーションも豊富で、観ていて飽きません。

困っている人を放っておけない気質だからこそ、不器用ながらに寄り添おうとするものの、どこか的外れ。「分かっているけど、今は正論が欲しいわけじゃない!」実直さが故に生じる“可笑しさ”がそこにはあります。しかし、肝心なところで発せられる彼の言葉は、家族や千明への愛にあふれています。そんな長倉和平の言葉に何度涙したか分かりません。

なかでも本作第4話は象徴的でした。自分の主治医が亡くなったとき、不安でその死と向き合えず、家族にも伝えずに空元気に振る舞い続けていた真平。そんな彼に、長倉和平ははじめ「遠慮なく心配をかけ合えるのが家族じゃないのか?心配をかけたくなかったって言われるのが、俺、一番悲しいよ」と努めて冷静に伝えます。

しかし、真平が妻の知美(佐津川愛美)にも亡くなった主治医のことを話していないと聞くと、「バカ野郎!」と声を荒げ、「自分でつくった家族だろう!今すぐに話して、一緒に先生の奥様のところに行ってお悔やみを申し上げろ」と説教。兄としての責任感でも世間体でもない、家族を愛するからこそ出た厳しい言葉に心が震えました。

円熟の表現者、中井貴一が描く長倉和平の人生

63歳の長倉和平を同じく63歳の中井貴一が演じていることもあり、より円熟味を感じさせます。脚本家・岡田惠和氏の手腕により、キャラクターが解像度高く描かれていることも、このシリーズの特徴と言えるでしょう。長倉和平が、どのような幼少期を過ごし、思春期を迎え、そして青年期を歩んできたのか。どのような日常を積み重ね、どのように家族や周囲に向き合ってきたのか。
これらを、台詞や仕草のひとつひとつから視聴者に感じ取らせています。

脚本の力もありますが、やはり俳優・中井貴一の高い表現力がその最大の要因でしょう。特にそれを感じたのは第5話における娘・えりなにまつわるシーン。

カフェで仕事仲間(柳沢慎吾)に「ファザコン気味で困っている」的なことを言いながらも、えりなのことを自慢げに話す長倉和平。そのにやけ顔ときたら!「お父さん!お父さん!」と娘に懐かれたい願望や、現実には手厳しく接してくる娘をそれでも大好きな気持ちが表れていました。

すると、そんな父の姿を知ったえりなから、過去のことを回想しながら「しょうがないなって思うところもあるけど、人としては好きだなぁって思う」と告げられます。それまでの出来事を噛みしめながら、「それで十分」と涙をこらえつつ照れた顔。そして、空を見上げて亡き妻に向けて「素敵な大人になったよ。君にそっくりだ」とつぶやく慈愛に満ちた表情。

大黒柱としての苦労や子育ての悩み、妻を亡くした哀しみ、さまざまなことを経てきたからこその表情が尊くて愛おしい!「長倉和平、よかったねぇ~」と涙したのは筆者だけではないはずです。

俳優・中井貴一の凄さ

長倉和平という人物の経験や価値観、生き様が、中井貴一の演技によって深く理解できるからこそ、私たちは長倉和平に惹かれずにはいられないのではないでしょうか。改めて、俳優・中井貴一の凄さを感じました。


「月9」63歳俳優がやたらと“萌える”。視聴者が惹かれずにはいられないワケ
画像:『続・続・最後から二番目の恋』ノベライズ
第3話のラストでは鎌倉市長(柴田理恵)から、後継者として鎌倉市長への立候補を打診された長倉和平。その答えは未だ出ていません。5月29日に回答することになっているので、そろそろではないでしょうか。個人的には立候補して選挙に出るも落選……と予想しています。が、どんな選択をしても、長倉和平らしい毎日を見守り続けたいと思います。

<文/鈴木まこと>

【鈴木まこと】
日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間でドラマ・映画を各100本以上鑑賞するアラフォーエンタメライター。雑誌・広告制作会社を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとしても活動。X:@makoto12130201
編集部おすすめ