日差しの強い日も増えて、また今年も本格的な日焼け対策が必要なシーズンに入りましたね。

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 誰でもうっかり思わぬ日焼けをしてしまった経験が一度や二度はあると思いますが、今回はそんな日焼けがきっかけで彼との絆が深まったエピソードをご紹介しましょう。


本職がうまく行かず、アルバイトを探し出した

 向井友理さん(仮名・35歳)は、少し前までイラストレーターとして生計を立てていました。しかし、仕事をしていたWEBを中心とした媒体からの依頼が徐々に減り始め、生活するのが厳しくなってきてしまいました

「元々業界の片隅でなんとかお仕事をさせてもらっているレベルのイラストレーターだったので、昨今の不景気による影響やAIの登場などでこうなってしまったのは仕方がないというか……単純に私の実力不足がこういう形で今つきつけられたんだろうなという感じでした。だって、自分の世界観をしっかり持っている売れっ子イラストレーターは今でも変わらずバリバリ仕事をしているわけですから」

 そんな風に自分の気持ちと現実との間になんとか折り合いをつけた友理さんは、生活のためにアルバイトを探し始めたそう。

憧れの芸人も働いていた、水道メーター検針員の仕事

「今の自分にできるのはどんなことなのかも分からないまま、ふとインスタを見ていたら水道メーター検針員の募集広告が表示されてハッとしたんです。

 私はハリセンボン・箕輪はるかさんのファンなんですが、彼女が芸人1年目のときに検針員をしていたんです。はるかさんが『とても自分に合った淡々とできる仕事で、辞めたくなかったほどだった』と言っていたことが脳裏を駆け抜けて、気がついたらもう応募メールを送っていたんですよね」

 友理さんはイラストレーターとして生きていく夢を絶たれ「それならもう、自分にできそうな仕事だったら何でもいい」と後ろ向きにしか考えられない心境でした。そんな中、憧れの箕輪はるかさんと同じ仕事ができるかもしれないという後押しがとてもありがたいと思ったそうです。

「とにかく動き出さないとへたり込んで何もできなくなってしまいそうだったので、踏ん切りをつけて応募したことで、とんとん拍子に面接し採用が決まってちょっと安心できましたね」

新しい仕事のことを、遠距離恋愛中の彼に話せない

 そしてそんな友理さんには、お付き合いを始めて2年目になる遠距離恋愛中の彼・智史さん(仮名・30歳/会社員)がいるのですが……。

智史は私がイラストレーターをしていることをすごくかっこいいと尊敬してくれていたので、一切相談なんてできませんでした。がっかりさせたくなかったですし、嫌われるのが怖かったんです」

 友理さんは智史さんにイラストレーターとして順調だという嘘をつきつつ、検針員としての研修がスタートしました。

忙しい仕事で、嫌なことを忘れて強くなれるかも

「それが思っていた以上に過酷な仕事で驚いてしまい、すぐに私には向いていないかもしれないと思いました。まず水道メーターの読み方が独特で問題集をたくさんこなして練習しないといけないですし、雨の日も風の日も地図を見ながら連日違う場所に行きメーターを探して回って、毎日とにかくクタクタで。家に帰って落ち着くと即寝落ちしてしまうような日々でしたね」

仕事に絶望していた35歳女性が逆転!“日焼け”きっかけでハッピーエンドを迎えたワケ
寝落ち
 ですが、その忙しさがかえって友理さんの傷ついた心を癒してくれたそう。

「なにしろ覚えなければいけないことはいっぱいだし、今まで運動なんてたいしてしてこなかったくせに自転車で何時間も走り回るので、疲れて悲しいことを思い出す暇なんかなくて。
これをしばらく続けていたら嫌なことなんて忘れて強くなれるんじゃないか? と思い、とにかく修行だと思って無心で打ち込んでいたんですよ」

「どうしたの、その手? そんな黒くなって」と彼

 そんなある日、智史さんが久しぶりに仕事で東京に来ることになり、デートの約束をしました。

「智史に会えるのは嬉しいのですが、疲れきって目の下のクマが酷い自分の顔を鏡で見るとため息が出ました。そして翌日も6時半起きで仕事に行かないといけないと思うと落ち着かなくて気もそぞろでしたね」

 そして数ヶ月ぶりに再会を果たした2人。

「智史は私を見るなりビックリして『どうしたの、その手? そんな黒くなって……あんな真っ白だったのに。大丈夫? 何かあったの?』すごく心配そうな顔になって」

仕事に絶望していた35歳女性が逆転!“日焼け”きっかけでハッピーエンドを迎えたワケ
日焼けで彼との仲が
 友理さんはあまりの余裕のなさに、5~6月は地味に紫外線が強いこともすっかり忘れて、日焼け止めも塗らず必死に仕事を覚えていました。いつの間にかかなり日焼けをしてしまっていたことに、その時初めて気がついたんだそう。

智史の顔を見ていたら、そんないっぱいいっぱいな気持ちを自分だけで抱えているのが我慢できなくなってしまって。泣きながら今までの経緯を包み隠さずぶちまけてしまっていたんですよね」

初めて真剣に叱られて気がついたこと

 そして最初は優しく話を聞いてくれた智史さんでしたが「でもね、そんな自分の辛さを紛らわせるためにやけっぱちみたいな気持ちで仕事をするのは失礼だと思う。ちゃんと今後何年も続けていく覚悟を持って取り組んでいるの?」と最後に一喝されてしまいました。

「智史に叱られたのは、その時が初めてだったんですよね。

 本当にぐうの音も出ないぐらいその通りで、私は自分のことしか考えられない未熟な人間なんだと心底反省しました。そしてちゃんと的確な指摘をしてくれた智史の気持ちが嬉しかったんですよね」

 こうして初めてとことんまで話し合うことのできた2人は絆が深まり、結婚することになったそう。

「キリの良いところで検針員の仕事は辞めさせてもらい、彼の赴任先へ引っ越すことになりました。
今では日焼けした手の甲を見るたびにくすぐったいような幸せな気持ちが湧いてくるんですよね」と微笑む友理さんなのでした。

<文・イラスト/鈴木詩子>

【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop
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