hanazouさん(@hana88883)と暮らすクロちゃんは、3本足。トラバサミによる怪我で左前足を断脚しました。
「でも、猫特有の忍び足くらいしかできないことが思い浮かびません。ジャンプもできるし、高いところからも降られる。階段なんて猛スピードで駆け上がり、私を追い越していきます」
別の子猫の保護中に1匹の黒猫との出会いが…
2022年6月下旬、飼い主さんは近所の人と共に、親猫とはぐれて2日間も鳴いていた1匹の子猫を保護しようと奮闘していました。すると、捕獲時に仕掛けた猫用おやつのにおいに誘われたのか、保護対象ではないクロちゃんが姿を現したのです。保護対象の子猫を捕獲できたのは、翌日のこと。クロちゃんは、捕獲を終えるまで近くで見守っていてくれました。

顔見知りになった黒猫の足に怪我が…! 原因は狩猟罠の「トラバサミ」
そんなある日、クロちゃんが左前足に怪我を負っていると気づき、動物病院へ。怪我は、トラバサミによるものでした。「患部が悪化すると壊死して骨が見えてしまったり、死に至ってしまったりすることもあるため、断脚しなければならない可能性もあると……。想像より重い診断でした」

当時、自宅には5匹の保護猫と2匹の保護犬が。飼い主さんはクロちゃんのお迎えを悩み、家族の「可哀想だけど野良猫だし、それが寿命だよ」という言葉を受け、しばらくは外での生活を見守ることにしました。
しかし、その後、クロちゃんは姿を消してしまいます。ようやく再会できたのは、動物病院へ連れて行ってから5日経った朝。左足の状態は明らかに悪化しており、左腕のあたりは壊死しているように見えました。

術後の面会時、傷跡は思っていたよりも痛々しく見えたそう。腕の付け根から先がない状態で横になりながらも呼びかけに反応してくれた姿を、飼い主さんは今でも忘れられません。

退院後に驚かされた「脅威の回復力」
クロちゃんは、3日間の入院を経て退院。回復力はすさまじく、退院翌日にはゆっくりと歩けるように。2週間ほど経つ頃には、ケージの2段目にジャンプ。小走りもできるようになりました。「ただ、傷の治りは悪くて1ヶ月ほど抜糸ができなかったので、エリザベスカラーをつけ、術後服を着て生活していました」

「1ヶ月ほどは、片時も私から離れませんでした。クロちゃんは3本足での動き方より、外生活から室内での生活へ順応するほうが大変だったようで、お腹が緩くなったり、夜鳴きしたりしていました」


クロちゃんは爪とぎポールで立ち研ぎをしたり、他猫と同じスピードで追いかけっこを楽しんだりすることも。片足を失っても、猫らしい暮らしを謳歌しています。
ストレスフリーな多頭飼い生活の秘訣は「住み分け」
飼い主さん宅では現在、クロちゃんを含め、7匹の猫と2匹の小型犬が暮らしています。全員が快適に暮らせるように自宅では住み分けを行っており、クロちゃんは小型犬たちや2匹の猫と同じ部屋で過ごしているのだとか。
1番の仲良しは、保護を見守った茶汰くん。外で会うオス猫はほぼ敵だったため、クロちゃんは当初、じゃれ合いの力加減が分からず、毎日レスリングを仕掛けてくる茶汰くんの扱いに困惑していたそう。
しかし、徐々に猫同士の遊び方を覚え、今では自らレスリングを仕掛け、追いかけっこを楽しめるようになりました。

元気で甘えん坊なクロちゃんの“今“が嬉しい。そう思うからこそ、飼い主さんはトラバサミの危険性を訴えます。
「クロちゃんの場合は、私有地に仕掛けたトラバサミに猫がかかっていたので外してくれたのかもしれません。私も庭に野生動物が出る地域に住んでおり、農業を生業にしている方の被害を少しでも減らしたいという気持ちも理解できますが、トラバサミは野生動物に対しても残酷な行為です。法律での規制もあるので、仕掛けないでほしい」

ただ、そうした規制があっても、トラバサミにかかってニャン生が変わってしまう猫はまだ多いのが現状。動物愛護の精神が広がりつつある今だからこそ、悲惨な現状が広く知られ、動物の命との向き合い方を考えていきたいものです。
<取材・文/愛玩動物飼養管理士・古川諭香>
【古川諭香】
愛玩動物飼養管理士・キャットケアスペシャリスト。3匹の愛猫と生活中の猫バカライター。共著『バズにゃん』、Twitter:@yunc24291