今という瞬間はもう二度とやってこない――そんな思いから、これは生まれました。5歳の男児の母であるnyabeeeeeさんが作成したのはオリジナルのフォント、その名も「こどもフォント」です。


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 その名のとおり、子どもながらのあどけなさが残る「あ」や「ヨ」など、とにかくあらゆる字をパソコンで打ったり、紙に印字したりできるわけです。

 このフォントをつくった理由、作成時に意識したこと、どんな用途があるのか……などなど、気になることをご本人に聞いてみました!

「こどもフォント」のつくり方

 まずは、「こどもフォント」の作成方法について。詳しくはnyabeeeeeさんが執筆したnoteを読んでいただきたいのですが、大雑把に説明すると以下の流れです。

① 無料でオリジナルフォントデータを書き出すことができる「Calligraphr(カリグラファー)」というサイトを活用。
② テンプレートから「japanese」を選び、「こどもフォント」で打てる字を選ぶ。今回のフォント作成では、子どもが書ける最低限のひらがなとカタカナ、句読点だけに絞り込んだ。

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テンプレから子どもが書ける最低限の文字だけ絞り込んだ
③ ②で選んだ「こどもフォント」で打てる字を、実際に子どもに書いてもらう。今回のフォント作成では、ひらがな、カタカナ、濁音や句読点なども含め、全170文字に及んだ。

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文字を書く練習がてら埋めてもらうのがいいかもしれない
④ 170文字分のゲラをupload templateで取り込む。その際は、入り込んだゴミやノイズを一文字ずつ消したりバランスを整えたりする。
⑤ 170文字分の微修正を行ったら、世界で一つの「こどもフォント」データが完成!

ひらがなを覚えたての今しか書けない字を残しておきたかった

――「こどもフォント」を書いたのはnyabeeeeeさんのお子さんですよね。

nyabeeeee:
はい、今月で5歳になる男の子なのですが、このフォントを書いたときは4歳11か月でした。

――「こどもフォント」を作成したきっかけは?

nyabeeeee:
子どもが4歳半ぐらいからひらがなに興味を持ちだし、すごく集中してスケッチブックに文字をたくさん書くようになったんです。あと、母の日にお手紙を書いてくれたり、電車が好きなので「はやぶさ」とか電車の名前を書いたり。
それを見て、ひらがなやカタカナを覚えたての今しか書けない文字をフォントデータとして残しておきたいと思いました。

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「ごはんがだいすき ママもだいすき」「でんしゃ 183けい」
――いいですね。残しておきたくなる気持ちがすごくわかります(笑)!

nyabeeeee:
そうなんです、すごく可愛くて! 今、自分の好きなものをひたすら書いてるんですよ。

――字を覚えたのがうれしくて、今はたくさん書いている時期なんですね。

位置やバランスにムラがあるのが愛おしい

――フォントをつくるために170文字も書いてもらったとのことですが、「あいうえお」だけじゃなく「だ」「ぱ」など濁音や句読点を揃えるのはかなり大変だったと思います。どうやって書いてもらったのでしょう?

nyabeeeee:
「Calligraphr」というサイトを使うと、PDFで用紙が出力されるんですね。なので、「ここに『ご』って書いてあったら『ご』って書くんだよ」という感じで書いてもらいました。

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「練習だから書いてみてよ」と言われて書いてくれた「ご」
「これ、ちょっと練習だから書いてみてよ」という感じで用紙を置いておいたら、勝手に書いてくれる……という方法で埋めていきました。ただ、勝手に書いてもらうものですし、本人からするとなんの義務感もないので、気まぐれに書いてはやめて……みたいな(笑)。

――好きな文字から埋めていき、飽きたら中断するわけですね(笑)。

nyabeeeee:
そうなんです。用紙5枚分くらいを埋めないといけなくて、結構な量があるんですね。なので、1枚書いては放ったり(笑)。
「カタカナはまだ苦手だから」と後回しにし、まずは本人が好きなひらがなから埋めていって……と、まる3日ぐらいかけて全部埋まりました(笑)。

――計5枚書くって、大人の私がやれと言われても面倒ですからね(笑)。

nyabeeeee:
たぶん、子どもからすると「これ、なんの意味でやるんだろう?」みたいな(笑)。

――今、まさに文字を書くのが好きな時期だから埋まっていったのかもしれませんね。

nyabeeeee:
おっしゃる通りだと思います。それでも、特に苦手なカタカナは時間がかかりました(笑)。しかも、カタカナの「ヲ」なんてあまり使わないじゃないですか?

――確かに使わない!

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書いたことがないであろう「ヲ」を、苦戦しながら書いてくれた
nyabeeeee:普段書いている「プラレール」の「プ」なんかは書けるんですけど、文字によってはやっぱりムラがあります。慣れている文字、慣れていない文字。「ネ」とか「ヌ」は手こずっていましたね。

あと、フォントをつくるときは小さい「っ」とか「ょ」も含まれるので、そういう字は苦戦していました。バランスとか位置もめちゃくちゃになって(笑)。

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小さい「っ」と大きい「つ」の大きさが変わらない
――でも、そんな拙さも愛しいですよね。


nyabeeeee:
そう、ムラがあるのが愛おしいなっていう感じです。

「こどもフォント」のなかで特にお気に入りは「ん」

――「こどもフォント」を作成する際に気をつけたこと、意識したことはありますか?

nyabeeeee:
文字の大きさが一つ一つ違ったり、ムラがあるのはあえて活かしました。ただ、ムラを最大限に残してしまうとフォントの体が整わなくなるので、そこはらしさを活かしつつ、ちゃんとフォントになるようにバランスはとりました。

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ほかの字と比較しながら文字の位置や大きさのバランスを整えていく
――ムラを活かすのとフォントとして通用させることのバランスというか。

nyabeeeee:
そうですね。自分はフォントづくりの専門家ではないので「ここに正しく配置する」とかはわからないのですが、そこはなんとなく雰囲気でつくりました。

たとえば、カタカナの「キ」に比べて「コ」がすごくでかいんです。得意な字と苦手な字で、大きさがおかしくなってくるんですね(笑)。

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「キ」に比べて異常にでかい「コ」、「W」に見える「ん」が秀逸
――ハハハハ! いいですね(笑)。

nyabeeeee:
でも、字によって違ってくるサイズはあえて活かしながらつくりました。

――170文字書いてもらったとのことですが、「こどもフォント」のなかで特にお気に入りの文字はありますか?

nyabeeeee
:えーっ、お気に入りの字ですか(笑)?……「ん」ですかね。

――「ん」が「W」に見えますね(笑)。

nyabeeeee
:そう、「W」に見えて「ん」にはあまり見えないけど、この歳にしか書けない「ん」だなっていう。
こういうアンバランスさが愛しいなあと思います。

小学校に上がったら、お手本を正しくなぞって字をきれいに書くように習うじゃないですか? でも、今はただ好きで書いている。家でなにかをなぞらせたりは全然させていないんです。本当は良くないのですが、書き順もめちゃくちゃだし、見よう見まねで書いています。4歳が本気を出し、見よう見まねで書いたらこうなったという(笑)。4歳の今しか出せない本気というか。

――正しい書き方を学ぶ前の、感性を十分に活かして書いた「ん」というか(笑)。

nyabeeeee
:そう! 大人になると「正しく書こう」「きれいに書こう」と修正されていくじゃないですか? だけど、今は楽しいから見よう見まねで書いているし、バランスがいびつな字になっている。そんな表現が「今しかない!」と、愛おしくなるんです。

数年後に「可愛いな~」と思い出すときを待っている

――完成した「こどもフォント」は、どんな用途で使っているのでしょうか?

nyabeeeee
:私は普段、Canvaを主に使っているのですが、Canvaではフリーフォントが使えなかったんです。なので、子どもが寝静まった夜にテキストエディタで書いて楽しんでいるぐらいです。

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子どもが寝静まった夜、こっそり楽しんでいる
実は、「こどもフォント」が本当に楽しめるようになるのは数年後じゃないかな……と思っています。本人がこんな字を書かなくなり、きれいな字になってきた頃に「こどもフォント」を使ったら、そこでようやく「うっ……(泣)」とくるんじゃないかなと思って(笑)。
なので、来たるときを待っています。

――まるで、タイムカプセルみたいですね……! 数年後、「こんな頃もあったな」と浸るためのフォントというか。

nyabeeeee:
そう、冷凍保存のような意味でつくりました。今は一生懸命に書いた文字や手紙のすべて可愛いので、まだ手書きを愛でています。

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生の文字の可愛さには敵わない
そして、「可愛いな~」と思い出すためにデジタルデータ化しておいたという(笑)。実は、本人には書いた字を「こどもフォント」に使ったとは言っていないんです。

――そうなんですか!

nyabeeeee:
はい。まだ、本人はフォントという概念をわかってないでしょうし(笑)。ただ書いてもらっただけで「こどもフォント」は見せていないし、本人は知らない状態です。本人が小学校に上がった後、これを見たら驚くでしょうね(笑)。

――ところで、字を覚えたての今が一番フォントにしがいのあるタイミングだったと思うのですが、5歳、6歳……と成長していくにつれて新たなフォントをつくろうと考えてはいますか?

nyabeeeee:
それはないと思います。人生で最初に書いた文字、かつ、子どもが見様見真似で書いた“世界に一つだけの文字”というところがポイントなので。
だから、たぶんこの1回で終わると思います。

――これから正しい書き方へどんどん寄っていくでしょうから、その字をとっておく必要はあまりないかもしれません。

nyabeeeee:
あと、「お食い初め」「お宮参り」など、ちっちゃい子が迎える“初めて”のイベントって多いじゃないですか? でも、初めて文字を書いたときのイベントは、そういえばなかった。だから、こうやって残したらおもしろいかなと思って(笑)。

ほかの家庭にも「こどもフォント」はおすすめ

――nyabeeeeeさんが書いたnoteを読むと、「こどもフォント」のつくり方が詳しく書いてありました。あの記事を公開した目的に、他のママ、パパにも同じようにフォントをつくってほしいという思いがあったのでしょうか?

nyabeeeee:
そうですね。備忘録がそもそもの目的だったのですが、「今、こんな簡単にフォントってつくれるんだ!」ということを知ったので、ほかのママやパパにもおすすめするために書きました。子どもが書いた最初の文字って、保存しておいたらうれしいと思うので。

――最後に、「こどもフォント」の次に「これをつくってみたい!」と考えているものはありますか?

nyabeeeee:
生成AIを使ったら、子どもと絵本の製作ができるかも……と思っています。

子どもって即興でお話をつくったりするんです。たとえば今、赤ちゃん(「こどもフォント」を書いた男児の妹さん)と散歩してて、赤ちゃんの靴下がなくなるという事件があったんですね。そこで「じゃあ、『◯◯ちゃんの靴下』というお話をつくろうか?」と呼びかけ、2人でしゃべりながらストーリーをつくっていったんです。そのストーリーにAIで絵を乗っけたら、世界で一つのオリジナル絵本ができるなあ? と思っていて。そういうのは考えています。

<取材・文/寺西ジャジューカ>
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