そんな本作で物語のキーとなる児童役を演じている天才子役に注目が集まっています。
「殺人教師」と呼ばれた男の真実
映画『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』は2003年に福岡市の小学校で実際に起きた、教師による児童へのいじめと体罰が認定された事件を映画化。同事件を取材したジャーナリストの福田ますみさんによるルポルタージュ『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』を元にしています。
当該児童や、「モンスターペアレント」とも呼ぶべきその両親、他の保護者、さらには校長や教頭、教育委員会、マスコミなど誰もが味方になってくれない中で、教師が冤罪を晴らそうと孤軍奮闘する姿に胸が痛みます。
この事件が実際に起きたという事実に人間の恐ろしさや身勝手さを感じずにはいられない作品となっています。
嘔吐と笑顔、二つの顔を持つ子役
裁判における母親の供述と教師の供述が噛み合わない中、どちらが真実を言っているのか双方の言い分を元にした回想シーンも織り交ぜながら物語が進む本作。相反する視点が描かれる中で、当該児童の氷室拓翔役を演じた子役の三浦綺羅(みうらきら)さんの存在が、本作に緊張感やスリルを与えています。
氷室拓翔は母親の供述では教師から酷い体罰といじめ、さらには自殺強要までされたとされ、三浦さんの嘔吐や吐血などを伴ったり、PTSDにまで陥ったりする苦痛の演技や虚ろな表情には思わず見入ってしまうほど。
過激な暴力シーンもあることからPG-12指定にもなっており、バイオレンスの巨匠とも呼ばれる三池監督ならではの恐怖の描き方や劇中を流れる不穏な雰囲気はまさにジャパニーズホラーそのものです。
一方で教師の供述では学校生活を楽しむ元気で活発な児童とされ、三浦さんがどこにでもいる可愛らしい小学生の一面も見せてくれます。作品における構造や役の設定上、二面性のある演技を求められている三浦さん。
一筋縄ではいかない難しい役どころを見事に演じ切り、作品を見た観客からも「あの拓翔役を演じた子役が美しくて気になった!」「あの子どもにずっと『なんでだよ!』と思ってイライラしてたけど、加害者でもあり被害者でもあって、ムズムズ歯がゆい思いをさせられた」といった感想が寄せられています。
注目の子役・三浦綺羅、12歳の実力派

登場シーンは少なかったものの、三浦さんの目鼻立ちのハッキリとした端正な顔立ちとキリっとした表情、澄んだ瞳、その可愛らしさ、そして迫真の演技は一気に話題になりました。
その後、『うちの弁護士は手がかかる』(フジテレビ)では両親の親権争いに巻き込まれる子どもを演じ、繊細な演技が好評を呼びました。
そしてその翌年の2024年には大河ドラマ『光る君へ』(NHK)での藤原道長の長男・田鶴役でもさらに注目されました。何と言っても田鶴の青年期を演じた渡邊圭祐さんとの違和感がまったくなかったことも好評でした。
“成長後”とつながる奇跡の顔立ち
「幼少期を演じた子役と俳優の顔のタイプが全然違う」という問題はドラマや映画でよく起きがちです。子役は頭数自体がそもそも少ないために、同じ子役がさまざまな作品に起用されることも珍しくなく、「子役の使いまわし」と揶揄されることもあります。しかし三浦さんがこれまで幼少期役を演じた俳優はいずれも、『どうする家康』では岡田准一さん、『六本木クラス』(テレビ朝日)では鈴鹿央士さん、『王様に捧ぐ薬指』(テレビ東京)では山田涼介さん、『君には届かない。』(TBS)では前田拳太郎さんと、三浦さんと顔のタイプが類似する俳優が多いです。
「この子があの俳優の子役時代を演じるには無理がある」と一度でも思ってしまうと、視聴者が作品に没入できなくなり、視聴を離脱してしまうこともあります。
その中で、三浦さんが幼少期時代を演じても、成長後を演じる俳優たちとの顔に違和感がないというのは大きな武器でしょう。どんな役でも演じられる演技力はもちろん、三浦さんの端正なビジュアルも多くの作品に起用される要因の一つになっていると予想されます。
すでに大河ドラマの経験だけでなく、民放ドラマや日本が世界に誇る巨匠が撮る話題映画への出演を経て着実にキャリアを積み重ねている三浦さん。今後もどんな俳優の幼少期を演じてくれるのか、そしてどんな大物俳優として成長するのか楽しみです。
<文/エタノール純子>
【エタノール純子】
編集プロダクション勤務を経てフリーライターに。エンタメ、女性にまつわる問題、育児などをテーマに、 各Webサイトで執筆中