KADOKAWAが手がけるコミックエッセイとセミフィクション「シリーズ立ち行かないわたしたち」。教育虐待や障害者専用風俗など、ニッチではあるものの、私たちが今生きている世界に確実に存在することを取り上げた作品が並ぶ本シリーズから、6月19日に『人生もっとうまくやれたのに 港区女子の絶望と幸せ』がリリースされた。


 タイトルの通り、“港区女子”にスポットライトを当てた内容の本作。主人公は大学進学を機に上京した女子大生の美春。友人・乃愛から「ギャラ飲み」を教えてもらったことをきっかけに、激動の人生を送ることになった彼女の姿を描いた本作。実在する人のエピソードをベースに、オリジナルの要素を加えたセミフィクション作品だ。

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 ここ10年ほどで港区女子という言葉は頻繁に耳にするようになったものの、多くの人はその“生態”を知らないだろう。そんな港区女子の等身大の姿を描いた本作の作者・うみの韻花(おとか)氏に、本作制作の裏側などを聞いた。

「港区おばさん」と呼ばれ笑われて…港区女子の“ヒサンなその後”。ギャラ飲みで生計を立ててきたのに<漫画>
『人生もっとうまくやれたのに 港区女子の絶望と幸せ』©うみの韻花/KADOKAWA(以下同じ)


「港区おばさん」と呼ばれ笑われて…港区女子の“ヒサンなその後”。ギャラ飲みで生計を立ててきたのに<漫画>
人生もっとうまくやれたのに 港区女子の絶望と幸せ


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人生もっとうまくやれたのに 港区女子の絶望と幸せ


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人生もっとうまくやれたのに 港区女子の絶望と幸せ


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人生もっとうまくやれたのに 港区女子の絶望と幸せ


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人生もっとうまくやれたのに 港区女子の絶望と幸せ


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「港区おばさん」と呼ばれ笑われて…港区女子の“ヒサンなその後”。ギャラ飲みで生計を立ててきたのに<漫画>
人生もっとうまくやれたのに 港区女子の絶望と幸せ


経験を活かしたリアルな漫画を

 まず本作を制作した経緯として、「SNSで漫画を投稿していたのですが、そこでKADOKAWAの編集さんから『若さと市場価値というテーマで一緒に描きませんか』と声をかけてもらったことがきっかけです」と話す。

「もともと『シリーズ立ち行かないわたしたち』が好きで、また私自身も港区女子ではないのですが、夜職として働いていた経験もあり、『この経験を活かしたリアルな作品を描けないか』と考えていたので快諾しました。なにより、本を出すことが夢だったので、声をかけてもらえて嬉しかったです」

エピソードが重いからこそ、作画で意識したこと

「まず読者さんに共感してもらえるように、主人公の美春を“どこにでもいる田舎から上京した女の子”という設定にしています。また、本作を制作するにあたって、実際に港区女子の方々に取材させていただいたのですが、その際に聞いたエピソードはそのまま取り入れたりしています。

 とはいえ、リアルなエピソードをリアル寄りの作画で描くと、読みづらさが生まれると考えました。そこで絵柄は可愛くしてエピソードの生々しさを緩和し、読みやすくなるように工夫しています。他にも、後半で闇落ちした時の作画は線を多く、リアル寄りに描いています。そのほうがギャップにつながるので、通常パートは線を少なく、シンプルな絵柄を意識しました」

 続けて、「担当編集さんから『汚い言葉を使いすぎると読む側のエネルギーが吸われるから、あまり使わないで』と指摘され、セリフ選びには注意しました」と作画以外での注意点も語った。


描くのがつらかった「おばあちゃんの死」

 しんどい展開が連続する内容となっているが、特に描くのがつらかったシーンはどこだったのか。

「美春の祖母・千代は私のおばあちゃんがモデルなのですが、私も上京して自分の生活ばかりを優先し、美春のように実家にはあまり帰らないでいました。そして、美春同様、おばあちゃんの死に目に立ち会えず、そのことを今でも後悔しています

 作中でも似たシーンが描かれているのですが、その辺りは描いていてしんどかったです。作中では千代が『美春が一番大事』と言っていたことを母親・洋子から聞かされるのですが、ここは『私のおばあちゃんも私に対してそう思ってくれていたら嬉しいな』という思いで描いています」

漫画を読んでくれた母親の感想は

 家族の話が出たが、本作をうみの氏の母親も読んだらしく、「母親も上京したことのある人間なので、美春にとても共感してくれて、『いい作品だった』と言ってくれました」と語った。

 港区女子のリアルな体験談に加え、うみの氏自身の辛い体験も作品内に織り交ぜながら描かれた『人生もっとうまくやれたのに 港区女子の絶望と幸せ』。いろいろな人の人生を追体験できる一冊と言える。

<取材・文/望月悠木>

【望月悠木】
フリーライター。社会問題やエンタメ、グルメなど幅広い記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。X(旧Twitter):@mochizukiyuuki
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