今回はそんな女性のエピソードをご紹介しましょう。
プロポーズしてくれない彼氏に別れを切り出した
安西美緒さん(仮名・28歳/契約社員)には、雅彦さん(仮名・29歳/会社員)という恋人がいました。3年間お付き合いしていましたが、なかなかプロポーズしてくれないことに痺れを切らし別れを切り出しました。「雅彦は『急に別れるなんてそんな! 話を聞いてくれ』と追いすがってきましたが、散々待たされ続けた私の決心は固く、もう話をするだけ時間の無駄だと思い、無視してそのまま一方的に別れてしまったんですよね」
婚活アプリで出会った、美食家の年上彼氏
そしてさっそく婚活アプリを始めた美緒さんは、大樹さん(仮名・39歳/IT関係)とマッチングし、お付き合いを始めたそう。「大樹さんはかなり歳上ですが見た目は若く、ジムにも通っているしガッシリ体型で話題も豊富なところに惹かれました。そしてなにより金銭的に余裕があり、いつも美味しいお店に連れて行ってもらえるのが嬉しくて」
大樹さん行きつけの焼肉店や、お寿司屋、イタリアンレストランなど、デートの度に美食を満喫していた美緒さん。

おすすめのかき氷を見た彼の「最低発言」
かき氷を食べるのは子どもの頃以来だという大樹さんに、美緒さんはお気に入りのかき氷を味わってもらえるのが楽しみでした。「そして私がいちばん好きな“鳥居醤油&クリームチーズのかき氷”が届き、大樹さんが食べる姿をワクワクしながら観察していたんですよね」

「すごくビックリしました。どうやら大樹さんは自分が子どもの頃にお祭りで食べた、紙コップに入った数百円で買えるかき氷からアップデートされていないらしくて。ありえないのはお前の方だろと思いましたね」
サーッと冷めた恋心。つい元彼を思い出して……
大樹さんの態度から、高級なお肉やお魚にお金を出すのは惜しくないけど、氷にそんな大金を払うのは馬鹿らしいと思っているのが伝わってきました。「その瞬間に『あ、この人ただの頭の固いクソジジイなんだな』と恋心がサーッと冷めていくのが分かりました。私はただ一緒にかき氷を楽しんで『こんな美味しいかき氷があるなんて知らなかったよ。
好みに合わなかったのなら仕方がないけれど、相手の大好きなものを全否定するのは人としてどうなの? と感じた美緒さん。そしてつい、元彼の雅彦さんのことを思い出してしまったそう。
同じかき氷を食べた元彼の「名言」
「実は雅彦ともそのお店で同じかき氷を食べたことがあるんですが、彼は甘めの醤油とクリームチーズとふわふわ氷のハーモニーに感動して大喜びで食べてくれたんですよね」さらに「かき氷って、溶けてしまう前に存分に美味しく楽しまなくちゃと思えるところが儚(はかな)くて、贅沢な食べものだよね」と美味しそうに氷を頬張る雅彦さんの笑顔が脳裏によみがえりました。
「確かに収入面では大樹さんの方が豊かでしたが、雅彦の方がよっぽど豊かな気持ちを持っていたなと恋しくなってしまい、ついまた連絡をとってしまったんですよ」
久しぶりに会ったのに?! 嬉しいサプライズが
雅彦さんは美緒さんの連絡を喜んでくれたうえに「自分に覚悟が足りなかったせいで不安な気持ちにさせて申し訳なかった。もしまだ間に合うのなら僕と結婚してくれませんか?」といきなりプロポーズしてきたんだそう。「えー! 久しぶりに会ったのに、今? って感じでかなりビックリしましたが、すごく嬉しかったんですよ。まだその時は大樹さんとお付き合い中だったので、きちんとお別れしてから改めて雅彦にプロポーズしてもらったんですよね」
そして2人はめでたく結婚しました。
「あれからまた雅彦と例のかき氷屋さんのかき氷を一緒に食べたのですが、私は今までの出来事が頭の中を巡ってついニヤニヤしてしまって。雅彦は不思議そうな顔をしていましたが、このかき氷がきっかけで雅彦を思い出した話は内緒にしておこうと思います」と微笑む美緒さんなのでした。
<文・イラスト/鈴木詩子>
【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。