というわけでご紹介したい、ある会社。
たとえば、「【猫のいる会社のデメリット】仕事中にキャットタワーになることを強いられる」というコメントとともに投稿された画像が最高でした。
パソコン作業中の社員の体をよじ登り、肩や膝の上に鎮座しては凛とする猫たち。一方、人間側はキャットタワー扱いされたことに耐えながら(?)せっせと仕事に励んでいます。いや、これってデメリットというよりご褒美なのでは……?
猫好きの間で「最高」「うらやましい」「理想的」と話題になっている同社に、なにがどうなってこのような職場環境になったのか話を聞いてみました!
猫と一緒に仕事をするメリットとは

――猫とともに仕事をすることで生じるメリットとデメリットとして、なにがありますか?
池田:メリットとして、「場が和む」はあると思いますね。
――やっぱり(笑)。
池田:仕事を邪魔されるとか一旦置いておいて、癒されます。
――Xでは職場にいる猫たちを「猫社員」と呼んでいましたが、猫が業務を担当する場面もあるのでしょうか?
池田:はい。猫は寝ている時間が長いので、誰かお客さんが来たタイミングに起きていれば普通に来客対応に行きます。

池田:そうですね。「猫はいないんですか?」と、聞いてこられる方もいますし。
――やっぱり、猫に会うのを楽しみに来る方が多いんですね(笑)。
猫と一緒に働くことで生じるデメリットとは

池田:一番のあるあるですけど、キーボードの上に乗ってきて同じ文字がバーっと羅列されるというのはよくありますね。
岡本:わざとですね、あれは。
――わざとですか!
岡本:わざとですね。普段は来ないのに、パソコンをやろうかなと思ったときに限って、いつも来ない子がキーボードをやたらと渡っていくので「わかって、わざとやっているんだな」みたいな。
――なるほど、「ちょっと意地悪してやろう」的な(笑)。
岡本:「遊んでやろう」みたいな、上から目線ですね。
――「社員もキャットタワーになるのを耐えなきゃいけないのがデメリット」というポストもバズっていました。
池田:それは子猫ですね。大人猫は絶対にそんなことをしないので。小さいときはめちゃくちゃ寄ってきてくれたけど、大人になったらしなくなる子は結構多いです。自我が目覚め、ツンデレになっていくんですね。子猫の場合、お母さんだと思って近寄ってきます。
猫だと言われても気が付かない!猫毛の量もすごかった

池田:そうですね。ブリーダー崩壊(たくさんのペットを飼育していたブリーダーが経済的や体力的な問題で管理できなくなる現象)から引き取った子を事務所でトリミングしたんですが、そうしたらすっごい毛の塊ができて。で、捨てる前にせっかくだからまとめて「1回、写真を撮ろうか」みたいな。
――へーっ、事務所でトリミングしたんですね。

夕方に猫が椅子取りゲームを仕掛けてくる

池田:そうですね。キーボードの上を歩いたり、しがみついてきたり、その程度のことなので、メリットのほうが全然あると思います。
岡本:キーボードの上を歩いたからって、怒るまでもいかないですよね。
池田:仮に猫が好きじゃないスタッフがいる職場だったら、デメリットになるかもしれないですけど。
――「猫、好きじゃないんだけど……」というスタッフさんはいるんですか(笑)?
池田:それはいないです。
――Xで「マウスを触っていた手がいつの間にか猫に吸い込まれる」というポストも拝見しました。猫にかまけて仕事ができなくなるということはありますか?

そういった時間は実働していないかもしれないですが、反対にSNSに上げて反響があれば「会社をみんなに知ってもらえる」という意味で、成果は高いわけじゃないですか?
他にも猫がちょっかいを出してくる!
――反響があれば、お客さんも増えるだろうし……ということですね。「キャットタワーになることを強いられる」「キーボードの上を歩く」といったこと以外で、どんなちょっかいを出されることが多いですか?池田:1匹、オフィスチェアが好きな子がいるんですよ。その子は、岡本が席をどいたらその椅子の座面に乗ってきます。
岡本:座れない。夕方あたりから、私がどくのを常にずっと見てるんですよ。昼間は寝てるんです。
――夕方に椅子取りゲームが発生するわけですね(笑)。
岡本:本当に椅子取りゲームですね。トイレ行って戻ったら絶対にいるんで。
池田:そういうときは、ちょっと前にずれて座らなきゃいけないという。
――奥側に猫ちゃんが鎮座して、避けるように浅く岡本さんが座るみたいな。
岡本:そうです。違う椅子に座ったりもするんですけど、そのデスクでパソコン作業をしなきゃいけないときは、お尻をちょっと前のほうに寄せて。
――まあ、それもちょっと喜びであったりしますよね。
岡本:そうですね(苦笑)。
Xで“猫社員”の姿を発信するようになった目的

池田:基本的には、猫に特化した建設業と不動産業を営んでいます。猫と暮らす注文住宅やリノベーションであったり、保護猫施設や猫カフェなどの施工……猫に特化したものであれば、すべて取り扱っているという感じになります。
以前は建設業と不動産業に並行し、保護猫活動も会社でやっていました。保護猫たちを会社内でお世話し、里親さんを募集して里親に届けるという活動です。
だったら、保護活動を専門でやっている保護猫団体さんにはできない“猫と暮らす家”をつくるほうを僕らが担当しようということで、猫に特化した建設と不動産業に切り替えていったという流れです。
会社にいる猫ちゃんはどこから?
――今、御社の職場にはどういった猫ちゃんたちがいるのでしょうか?池田:事務所には、僕たちが飼っている猫を連れてきています。毎日、僕と一緒に車で来て一緒に帰ります。
――だいたい、いつも何匹くらいの猫ちゃんたちがいるのでしょうか?

――社内で猫を飼うようになったのは、保護猫活動をしていたという始まりがあり、そこから自然と一緒に働く職場ができ上がったということですね。
池田:そうですね。猫を保護して里親さんにつなげるまで、探す間に1~2カ月は一緒に事務所にいることになります。人慣れや病気の通院をさせないといけないですからね。
岡本:SNSで投稿するために可愛い写真を撮らないといけないのもあって、常に事務所で一緒にいます。
池田:あと、保護猫団体さんの譲渡の仕方は譲渡会を開いて実際に来てもらうという方法が主です。しかし、皆さん働いているなかで開催されるので、どうしても月1回くらいのペースになってしまうんですね。
子猫って、1カ月経ったら結構大きくなるじゃないですか? 保護活動はすごく大変だと思うのですが、譲渡という点に関してはあまり効率的ではないと思いました。だからといって、不特定多数の人を家に呼ぶわけにはいかない。だったら、僕らはオフィスで猫と一緒に働こうと。そして、予約さえ取ってもらえば里親さんはオフィスに毎日来てもらってもいいし、その流れで引き取り手が見つかればいい。
そういう目的から、「SNSで影響力をつけよう」と思い立ったんです。みんなが見ているアカウントで猫の発信をしていけば、譲渡まで1カ月も待つ必要はなくなるでしょうからね。
猫ちゃんによる猫ちゃんのための施工チェック
――SNSでは、猫ちゃんが施工チェックをしている姿もアップされていました。「職人泣かせの厳しいチェックですが、お家の猫に安心安全に暮らしてもらうためには譲れないこだわりです」と(笑)。てっきり、施工チェックをするために一緒に仕事していると思ったのですが、そういう面もあるのでしょうか?池田:それは後から生まれた役目で、最初はそうではなかったです。この子たちが可愛い子猫のうちに新しい家に行くことのほうが先なので。

――SNSで発信する場合、「一緒に仕事しています」「猫ちゃんたちが施工チェックをやっていますよ」というポストをしたほうが話題になりますからね。
今では猫がいない日のほうが違和感がある

池田:実際、ホームページに問い合わせは多く寄せられています。
――猫と一緒に仕事している毎日はいかがですか?
池田:どうなんですかね。う~ん……もう、今はまったく意識していないぐらいです。本当に社員みたい。猫社員ですよね。言ったら、仲間のような感じで僕はやっています。
――職場の同僚に猫がいるという。実際、施工チェックも来客対応もしていますからね。
池田:だから、いない日のほうがちょっと違和感があるというか。僕が朝から外に出ていて、会社に寄れないときは連れてこれないので。そういう、出先からそのまま出社した日はいないです。
――そんな日は違和感がある(笑)。
池田:協力業者さんや出入り業者さん、お客様からも「あ、今日はいないんですね」と言われたりします。
――社内外に、猫と会うのを楽しみにしている人たちがいるんですね(笑)。
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“猫と一緒に働く職場”の芯の部分がわかりました。「すべては猫のため」という意思で働き、SNSを活用していた同社。
キャットタワーになることを熱望する人たちは後を絶たないようですが、今回の記事を参考に同社の見据える先を理解してもらえるとなによりです。
<取材・文/寺西ジャジューカ>