高級パン専門店、唐揚げ専門店、焼肉店、ラーメン店……。
コロナ禍以降、飲食業界の倒産関連ニュースが目立つようになっています。そして先日話題になったのが、「カレー店」。帝国データバンクの調査によれば、2024年度のカレー店の倒産件数は13件に達し、2年連続で過去最多を更新しているそうです。
倒産の理由を考えてみると、「そりゃそうだ、米高騰が原因でしょ?」と考える人も少なくないでしょう。うーん、本当にそれだけなのでしょうか? 冷静に考察してみたところ、カレー店の倒産に限っては、米問題だけで片付く話ではなさそうです。
いったいどんなことが問題になっているのか、おいしいカレーの話をご紹介しながら見ていくことにしましょう。
カレーは、1000円以下で食べるのが当たり前の時代に

すき家定番の「カレー」にぷりぷり食感のエビが乗り、濃厚なビスクソースがかかった目新しいカレーです。競合を見てみると、松屋では「欧風牛タンカレー」(780円)、吉野家では「牛×牛カルビスパイシーカレー」(927円)が登場し、いずれもこだわり感たっぷりなごちそうカレーであることがわかります。
そしてここで気がついたのは、「こだわりカレーは1000円以内で食べられる」ということ。そして容易に想像がつくのは、1000円を超える価格帯で勝負するカレー専門店の場合、よほど群を抜くようなおいしさでないと、大手チェーン店には戦てないのです。
このように牛丼チェーンの事例をみれば一目瞭然で、厨房で一から手作りしなくてもそこそこ美味しいカレーが調達できる時代になり、専門店でなくても参入しやすくなっている環境にあることは間違いありません。
安い!ウマい!スーパーのカレーが驚く進化を遂げている

例えば、「肉のハナマサ」。関東圏を中心に関西エリアにも進出しはじめた肉に強いスーパーで、プライベートブランド商品のカレー関連商品が人気を博しています。
料理派には「お肉屋さんが作った美味しい黒カレー」といったこだわりのルウがそろい、時短派にはタイカレーや骨付き肉が入ったレトルトカレーが種類豊富にラインナップされています。
ベイシアのセルフ式カレーライスが大人気

つまり今の不景気な日本において、スーパーに行けばワンコインどころか、おつりが返ってくるような低価格でおいしいカレーが食べられるということ。こだわりのルウやレトルトカレーであってもワンコイン以内で調達が可能になっていることも忘れてはなりません。
私はスーパーマーケット研究家という立場として断言したい!スーパーはカレー専門店をしのぐような実力をつけつつある脅威の存在として、確かな進化を遂げているのです。
カレーはどこまで安くなる?無印の190円カレーに驚いた

無印良品では、北と南で特色の違うインドカレーを3種類ずつ組み合わせた本格カレー商品が1人前590円で販売されています。そして出会ったのが、現在190円に値下げされている「素材を生かしたカレー マッシュルームマタル」。
マッシュルームと2種類の豆が入り、生クリームやヨーグルト、香ばしいピーナッツがポイントになった、ちょっと珍しいインドカレーです。ごはんはもちろんのこと、そうめんにかけて食べるなどのアレンジも無限大で、個人的には病みつき感を伴う味わいが気に入りストック買いをしたほどです。

果たして今後、カレーはどこまでおいしく、どこまで安くなるのでしょうか?
食料品値上げの暗いニュースが目立つ空気感が漂いがちですが、カレーは、多くの人々から愛され、不景気であっても安心しやすく、食べて喜びを深められる存在。そういう意味でも、引き続きカレー業界に注目していきたいと思います。
<文/食文化研究家 スギアカツキ>
【スギアカツキ】
食文化研究家、長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを学ぶ。