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加奈子さん(仮名)は都内のIT企業に勤める独女33歳。「10代のころから、なぜかいつも、誰かの彼氏を奪ってばかりでした」と言う。それは、大人になってからエスカレート。奪うスリルと快感を感じていたが、半年前に既婚男性と別れてから、空虚な気持ちがつきまとう。今は鬱っぽく、ひきこもりがち。ひとり暮らしの部屋でホロホロ泣いてしまう毎日だ。
彼女の略奪の歴史を、2回に渡ってお伝えする。加奈子さんの最初の略奪は、なんと10歳の時だった。
いちばん仲良しの女子から2週間で彼を奪って達成感
当時、彼女は生まれ育った宮城県仙台市の小学4年生だった。「4年の春に、東京から一真(かずま)くん(仮名)という男子が転校してきたんです。話し言葉も服装も上品で垢ぬけて見えたし、サッカーも上手で成績優秀。すぐに女子たちの憧れになりました」
一真くんと一番仲良かったのは、加奈子さんの友達の桜さん(仮名)。夏が来る前の学校の帰り道。
「桜ちゃんがライバルに感じました。私が一真くんから好きって言われるはずなのに、どうしてって。急に桜ちゃんが憎たらしくなり、一緒に遊ばなくなりましたね。もうそのあたりは、大人の恋愛と一緒の感覚だったかもです」

「ものの2週間です。授業のあとに校庭で近づいて“今日は一緒に帰ろう”って手をつないで……もう、そのころから私、略奪体質で。たぶん、家庭環境もあったと思います」
不倫・略奪体質につながった家庭環境とは
加奈子さんの両親は、仲が悪かった。というか、地元の信用金庫に勤める父親は専業主婦の母親に「早くメシにしろ」などと命令する、古臭いタイプ。「普段は勉強しろって教育熱心で怖い父も、外出時は家では見せない優しい笑顔になりました。デパートでちょっと高価なカワイイワンピースを買ってもらい、プリンアラモードを食べる……なんか、デートのようでした。帰宅すると母はあくせく掃除や夕飯の準備。今考えると、どうして母親を置いて? と思いますが、当時の私にはそれが普通でした」
この話には、なるほどと納得してしまった。まさに不倫・略奪愛にはまる女性が育ってしまいがちな家庭環境だからだ。
父と娘の密接すぎる“関係”
両親、あるいはどちらかの親が子供に厳しく、父が強烈に娘を可愛がっている場合、あるいは逆に娘に虐待をする関係の場合。父と娘の関係が密接過ぎて、ふたりの間には疑似恋愛のような感情がわいてくる。この時の娘側の心理状態を「エレクトラ・コンプレックス」という。ファザコンを複雑にしたような感情だ。
話をもとに戻そう。加奈子さんと一真くんは、ぼんやりとした恋愛時代のあとに自然消滅となったという。
「まだ小学生でしたからね。お互いに好きという気持ちはあるにせよ、ほかのみんなと一緒に公園で遊んだり、こっそり親の目を盗んで駄菓子屋さんにふたりで行ったりするくらいがせいぜい。5年生のときのクラス替えで別々になり、もう一緒に遊ぶこともなくなりましたね」
10代になり、加奈子さんの略奪癖はいっそう本格化する。
友達の彼氏を奪い、泣いたり怒ったりするのを楽しむ
中1と中3のときの友達の彼氏を略奪。高校時代は、大人のふりをして出入りしていた居酒屋で地元の大学生や社会人男性と知り合っては、略奪。「今まで10人以上はつきあってきましたが、自然と略奪か不倫ばかりなんです。割と仲のいい女友達の彼氏も略奪しちゃうんです。すると女友達にばれるし、ばれないときには、それとなく私がヒントを出してバレるように仕向けちゃう。
すると当然、友達は泣いたり怒ったり、連絡をくれなくなる……それを悲しいとも思わなかった。フン……モテナイあなたが悪い。私が勝ったのよって思っていたし、友達が離れても彼氏がいればちっとも寂しくなかったんです。しばらくすると、奪った彼にも飽きてまた違う人と恋に堕ちる……私にはそれが普通のことでした」

そんな自分の現実に寂しさを感じるようになったのは、2年ほど前のことだった。異業種交流会で知りあった女友達の彼氏を略奪。かなりの知人が加奈子さんの周囲から去っていき、さすがに友達の彼氏を略奪するのはやめようと思ったらしい。
だが結局、加奈子さんの略奪・不倫人生が終わることはなかった。
※個人が特定されないよう一部脚色してあります。
<文/安藤房子>
【安藤房子】
作家。恋愛心理研究所所長。離婚を機に日本初の恋愛カウンセラーとして独立。メールカウンセラーの草分け。心と身体両面からのアプローチで婚活・恋活女子を応援。著書に『愛されて結婚する77のルール』など。Instagram:@ando.fusako.loveブログ:恋愛心理研究所 安藤房子の「ココロとカラダのレシピ」