ホスト役を演じるラウールの前髪が風になびく色っぽさを特筆しておきたい一方で、気持ちはひたすら“耳福”な主題歌にもっていかれる。
主題歌「Spiral feat.Yura」は2025年1月にメジャーデビューしたばかりのレイニによるデュエット曲。レイニというこの美しいアーティスト名にはある由来があるのだが……。
“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、絵画的であり音楽的でもあり、徳永英明の次男でもあるレイニの音楽性を解説する。
絵画的なアーティスト名
三島由紀夫が戦後に発表した小説『仮面の告白』を読んで、グイド・レーニというバロック期の画家の名前を知ったとき、代表作『聖セバスチャンの殉教』の画風と合わせて随分美しいアーティスト名だなと思った。この画家の名前と何か直接的な関係性があるわけではないのだけれど、最近知った日本のアーティスト名も同じような響きで、不思議と類似する美的世界を感じた。その日本のアーティスト名は、レイニ。
どうやら本名であり、漢字があてられているらしいのだが、公表はされていないみたい。アーティスト本人が醸すはかなげな美しさはまさに美術館の展示品のように凛としている。絵画的なアーティスト名を持つレイニがどんなあて字なのかさらに気になる……。
音楽的でもある理由を謎解き
気になるついでにいうと、レイニというアーティスト名は、絵画的であるばかりか音楽的でもある。理由は彼の名字に関係している。あて字がわからないのでアーティスト名として表記すると、フルネームは「徳永レイニ」。謎解きのように姓名を追うだけで面白い。
曲名はたぶん誰もが知っている。「人影も見えない 午前0時」という歌い出し。徳永英明が1986年にリリースしたデビューシングルにして名バラード曲「Rainy Blue」である。「レイニー」の「イ」と「ー」を入れ換えていたら、上述した画家と同じ名前だったよなだなんて勝手に想像してみたくもなる。
徳永英明の次男・レイニが吹き込む主題歌
1998年生まれで現在26歳。2023年に小栗旬が社長に就任したトライストーン・エンタテイメント所属で、赤楚衛二主演ドラマ『相続探偵』(日本テレビ系、2025年)主題歌でメジャーデビューした。父・徳永英明と似たハイトーンボイスに定評があり、木村文乃主演の今期ドラマ『愛の、がっこう。』ではYuraと声を重ねる主題歌を担当している。木村文乃演じる主人公・小川愛実は結婚したい相手にふられてぼろぼろになった過去がある。もう恋愛はしないと誓い、高校教師になった彼女が、心を寄せることになるのはまさかのホスト。第1話ラスト、Snow Manラウール演じる優男ホスト・カヲルのことを信じるか信じないかの選択の中で信じてしまう。
その瞬間に画面上を活気づけるのが、レイニによるデュエット主題歌「Spiral feat.Yura」。楽曲を前へ前へ進める八分の六拍子が心地よく、バックトラックに対して巧みにアクセントを置いたレイニのボーカルが、画面に豊かな奥行きをもたらす。
ドラマの作風を補完・補強しながら、画面というフレームを楽しげなタッチで着色しようとするその音楽性は、絵画的な名を持つ「レイニ」ならではの感性と言えるのではないだろうか。
<文/加賀谷健>
【加賀谷健】
コラムニスト/アジア映画配給・宣伝プロデューサー/クラシック音楽監修
俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”として「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu