なかでも注目なのは、近年多くの“妻”役を演じてきた松たか子。
なぜ松たか子には“妻”を演じさせたくなるのか
松たか子は、これまでも多彩な“妻”を演じてきました。特に坂元裕二氏の脚本では一風変わった“妻”が多い。『カルテット』では失踪した夫を探さない“妻”。『大豆田とわ子と三人の元夫』では、3人の元夫にとっての“妻”を、映画『ファーストキス 1ST KISS』では、交通事故で亡くなってしまう夫を救うためにタイムトラベルする“妻”を演じています。
『大豆田とわ子と三人の元夫』や『ノーサイド・ゲーム』で演じた役柄は“母”としての役割も持ってはいましたが、作品のなかで描かれていたのは“妻”がメイン。年齢を重ねることで、“母”役を演じるようになる女優も多くいるなかで、松たか子という女優は“妻”の方がハマるのかもしれません。
大石静×松たか子、初タッグで炸裂する“クセ強ヒロイン”

演じるのは、やはり“妻”。しかも、主人公の独身主義を大転換させて電撃結婚するほどのミステリアスな魅力の持ち主で、美人なのに“ちょっと変”という設定。寝相が変だったり、急にパンを爆食したり、奇妙な歩き方をしたり……予告だけでも、不思議ながらチャーミングな女性であることが伺えます。
大石ワールドのなかで、どんな“妻”を演じるのか、ますます楽しみです。
どうして松たか子は“妻”のオファーが止まらないのか?
7月4日に公開された映画『夏の砂の上』でもオダギリジョーの“妻”役を演じている松たか子。なぜ彼女はここまで“妻”を求められるのでしょう。
彼女はもちろん美人で可愛らしいけれど、ヒロインとしてそれだけではありません。高い演技力は周知のところですが、その品の良さと自然な立ち振る舞いから老若男女問わず好感度が高いこともヒロインに選ばれ続ける理由でしょう。
『大豆田とわ子と三人の元夫』で演じた「バツ3で元夫に振り回される女性」という設定は、どう頑張っても嫌な女に見えそうなのに、彼女が演じると嫌な感じが全くしないから不思議。多くの共感を集めた作品です。
松たか子と阿部サダヲ、再び夫婦の物語へ
彼女のヒロイン力は役柄も作品も、相手の年齢にも左右されません。古くはドラマ『じんべえ』の田村正和(実年齢では34歳差)にはじまり、映画『峠 最後のサムライ』では役所広司(実年齢では21歳差)、映画『土を喰らう十二ヵ月』では沢田研二(実年齢では29歳差)を相手としたヒロインを務めました。
『しあわせな結婚』における相手役は阿部サダヲですが、過去にも何度か共演歴があります。10年前の映画『夢売るふたり』では、妻が夫に結婚詐欺をさせるという歪な夫婦を演じました。
5年前のスペシャルドラマ『スイッチ』では、学生時代から7年間交際し、別れた後も成り行きでお互いの恋人を紹介し合ったり、何かにつけて憎まれ口を叩き合ったりする奇妙な関係のふたりを演じています。
今回もそれぞれがクセのある役どころで、電撃結婚することになったふたり。松たか子がどんな“妻”を演じるかはもちろん、阿部サダヲとどんな掛け合いをして、どんな結末を迎えるのか。
この夏絶対に見逃せません!
<文/鈴木まこと>
【鈴木まこと】
日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間でドラマ・映画を各100本以上鑑賞するアラフォーエンタメライター。雑誌・広告制作会社を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとしても活動。X:@makoto12130201