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いきなりですが、感情の限界を超えた時ってありますか? いわゆる『ブチギレた時』ですよね。そんな時は、普段は考えられない行動をとってしまうことも多々あるのではないでしょうか。今回は、そんな限界を超えた自分を体験した女性のエピソードです。
初めてのお泊まり旅行
お話を聞いたのは都内で働く麻里さん(仮名・25歳)。大人しい性格の麻里さんは、明るくて、なによりもぐいぐい引っ張ってくれる彼氏の性格がとても居心地よく、充実した毎日を送っていました。「夏休みに彼の提案した2泊3日のお泊まり旅行に行くことになったんです。行先は長野県の白馬村で、自然豊かな避暑地。とにかく楽しみで仕方ありませんでした」
そんななか、夏のイベントが決まって、ワクワクしながらカウントダウンする麻里さん。会社帰りには、お気に入りのショップで旅行に着ていく服を揃えたり、ネイルの手入れをしたりと、旅行を楽しみにしていました。
「実は男性とのお泊まりは初めてだったので、正直不安と緊張が入り混じっているんですけと、とにかくいい思い出にしたいと思って……」
少し照れながら、笑顔で語ってくれた麻里さん。
なぜか大荷物の彼

10分ほど遅刻して現れた彼氏。何やら両手には大きなカバンを持っていたそう。
「彼がやたらと沢山の荷物を持っていて気にはなっていたんですが、特にそのことには触れずにいました」
ほどなく東京を無事出発し、定刻通りに松本駅に到着。ホテルにチェックインした2人は一息着く間も無く観光スポットに繰り出しました。
虫取りあみと虫かごを持ってきていた
避暑地といえどもその日は日差しがきつく、しかも早足の彼に一生懸命着ついていった麻里さんは、ホテルに戻ってきた時にはもうヘトヘト状態。
「とても行きたそうだったので、少し眠かったんですが、行くことにしたんです。でも、バッグを開けてなにやらゴソゴソと始めるので、先にロビーへ行って彼を待ちました」
少し遅れて現れた彼は、なぜか懐中電灯と虫取りあみを持って、肩から虫かごを下げるという真夏の男子小学生のような出で立ちで、麻里さんは少し驚いたそうです。
その光景を見て、多すぎる荷物の意味がようやく分かった麻里さん。その重装備に驚いていると「俺、昆虫採集が大好きなんだ」と、満遍の笑みを浮かべながら打ち明けられました。
「趣味なら仕方ないかと思ってそのまま外へ出て、最初は月とか見ながら二人で歩いてたんですけど、いきなり彼が草むらへ駆け込んでいったときは、思わず『は?』って叫んじゃいました」
虫取りに夢中の彼を置いてホテルへ戻る
散歩とは名ばかりの、本当は昆虫採集が目的だったことに呆れる麻里さん。道端の大きな岩に腰掛けてしばらく様子を見ることにしたそうです。
ホテルに戻ってもイライラが収まらず、備え付けの冷蔵庫に入ったビールを一気飲みして寝たという麻里さん。なんと彼はその後真夜中に戻ってきて、さらに夜明けとともに仕掛けた罠の様子を見にいくと言う強者だったのです。
目の上を虫にさされ赤く腫れ上がる
旅行二日目を迎えるも、虫に夢中になってしまった彼氏のせいで、すでに旅行どころではない心持ちの麻里さん。そんななか、洗面台の鏡に映った自分の顔に驚愕します。
この日のために新調した浴衣に着替えた麻里さんは、朝方クワガタの収穫を終え、部屋に戻って熟睡中の彼氏を起こそうとしました。
今夜こそカップルらしい旅行気分を味わえるようにと期待し、コーヒーを淹れていると、半分寝ぼけた彼が起きてきました。
「オバケじゃん」彼の反応にブチ切れる
目をこすりながら麻里さんのことを二度見した彼は…「何?その顔…浴衣にその腫れた目はオバケじゃん!」
「やばくね?」
と、彼氏。
「彼のその言動に、何かがプチンと切れてしまって、気付いたら彼をビンタしていました」
彼氏の虫取りに付き合って刺されてしまったというのに、心配も謝罪もなく無神経な発言をされ堪忍袋の緒が切れてしまった麻里さん。腫れた目と激昂した麻里さんの形相を見た彼氏は、しばらく固まっていたそう。
たしかに麻里さんの怒りはわかりますが、ビンタという力技ではなく、言葉で怒りを説明するべきだったかもしれません。
一人で先に帰る
ビンタで目が覚めたのか彼氏は、その後土下座で謝ってくれたようですが、既に旅行を楽しめる気分ではなかった麻里さんは、一人で帰京したそうです。
あのビンタから、どういうわけか自分が少し強くなったと感じている麻里さん。恋愛観も、彼氏の好みも変わったような気がしているとのこと。
<文/浅川玲奈>
【浅川玲奈】
平安京で生まれ江戸で育ったアラサー文学少女、と自分で言ってしまう婚活マニア。最近の日課は近所の雑貨店で買ってきたサボテンの観察。シアワセになりたいがクチぐせ。