39歳の未婚女性で、推し活に没頭するなど独身ライフを満喫している学芸員・山口鳴海(綾瀬はるか)が主人公。
「終活」「孤独死」という重いトピックを扱いながらも、ポップな演出によって明るい空気感に包まれている本作。終活について前向きに考えたくなるような本作の制作統括を務める高城朝子氏に、作中に流れる明るい空気感をどのように作り上げているのかなどについて話を聞いた。
コメディではなく喜劇。BGMの重要性
「終活」「孤独死」をメインテーマとしながらも、明るい雰囲気に包まれている本作だが、高城氏は「ポップすぎると共感してもらえないし、リアルすぎても引かせてしまう。その塩梅は難しいです」と空気感の調整には気を配った。「例えば、第1回放送では光子が孤独死した部屋が登場するのですが、どこまでゴミ屋敷っぽくするかを美術チームも悩んでいました。ぐちゃぐちゃな部屋にしなければ『孤独死した』という説得力を欠いてしまう。とはいえ、あまりにぐちゃぐちゃすぎると現実味が出て視聴者が引いてしまうリスクがあるため、そのギリギリを狙って調整しました」

イメージシーンが多いワケ
BGM以外の表現方法へのこだわりとして、「鳴海が独り言を話すシーンが多いのですが、ただ、独り言が多いと悲壮感が生まれてしまうため、独り言ではないように見せる必要があり、独り言をポップに見せるために『鏡に映る自分と対話する』という表現方法にしました。また、イメージシーン(登場人物が頭の中で特定の状況や場面を思い描くシーン)が多いのも特徴かもしれません。やはり『自分は孤独死するかもしれない』と考えた時、誰かと話すより、自分自身に問いかける人の方が多いのではないでしょうか。

鳴海の家は現実離れしている?
推しているアイドルのグッズが並ぶなど、鳴海の部屋も明るい空気感を演出している要因の1つである。実際、鳴海の部屋もかなりこだわって作り上げたようだ。
孤独死を題材にしているけれど、ポップに表現したい。そのため、“おもちゃ箱をひっくり返したような部屋”というコンセプトのもと、美術さんたちが楽しい空間をつくってくださいました」
たしかに鳴海の部屋はとても広く、オシャレなインテリアも多く配置されている。これが“アラフォー未婚者の手の届く範囲の物件”だった場合、孤独死をダイレクトに連想できてしまい、そわそわしながら視聴しなければならなくなる。
細部までポップさの調整にこだわっているからこそ、終活や孤独死といった後回しにしたくなる課題にも、自然と目を向けたくなるのかもしれない。
<取材・文/望月悠木>
【望月悠木】
フリーライター。社会問題やエンタメ、グルメなど幅広い記事の執筆を手がける。