現在は、癖毛を活かしたグレイヘアのスタイルを確立し、SNSの発信をきっかけに、一人ひとりに合わせたスタイリングレッスンを行う“毛髪診断士”・“癖毛アドバイザー”としても活躍しています。
10代の頃から抱えていた髪の悩みや、白髪染め・縮毛矯正をやめたきっかけなどについて語ってもらった前編に続き、本記事では、ヘアスタイルづくりの具体的な工夫や、髪質に悩む人々へのアドバイスについて聞きました。
癖毛×グレイヘアを楽しむスタイル

Yukari:長さはショートボブくらいで、レイヤー多めのシャグカット(髪の先にいくにつれて細いラインになっていくカット)にしています。
私は、顔周りに白髪が多く、束のようになっています。そこは活かしたいので、ハイライトは入れずにそのままにしています。まだ白髪がまばらで黒髪が多い部分は、境界を馴染ませるように全体的にハイライトを入れています。

Yukari:癖毛を活かしています。朝は信じられないくらいボサボサなのですが(笑)。水でしっかり濡らしてから保湿クリームをなじませ、ジェルで少し固めてからほぐすと、フワフワのカールが生まれるんです。縮毛矯正をやめてから、自分の髪のポテンシャルに気づくことができました。
実は、美容師さん達の間では、「日本人の7割が癖毛」といわれています。だから、地毛でカーリーヘアにスタイリングできる人は、実は多いのかもしれません。それなのに、日本ではストレートヘア信仰が強いので、癖を直そうとする人が多いです。
年齢を重ねてから、癖毛に悩むケースも

Yukari:私が通っている、癖毛のお客様がとても多い美容院のオーナーさんが、いつも私のスタイリングを褒めてくださっていたんです。その方に「人に教えてあげたほうがいいよ」と勧めていただいて、毛髪診断士の資格をとって2023年10月からスタイリングレッスンを始めました。
美容師さんのように私自身が施術してあげることはできないのですが、髪の悩みを聞かせてもらい、口頭でヘアスタイリングのアドバイスをしています。明日からでも、自分の手でスタイリングができるようになってもらいたいんです。癖毛は、美容師さんに頼らないとどうにもならないイメージがありますが、そのハードルを少しでも下げたいと思っています。
――どんなお客さんが多いのでしょうか。
Yukari:20代の方もいらっしゃいますが、1番多いのは30代から50代くらいの方です。エイジングによってホルモンバランスが変化したという方もいます。「更年期以降、すごい癖毛になってしまった」「40代まではこんなんじゃなかったのに、急に髪がクルクルになった」とおっしゃる方も多いですね。
印象的だったのは、乳がんを克服された方でした。以前はストレートヘアだったのに、治療の副作用で一度髪が抜けて、また生えてきたら癖毛に変わっていたそうです。
「初めてグレイヘアに挑戦する人」におすすめの2つの方法

Yukari:職場でOKなら、まずはハイライトを試してみてください。ハイライトで白髪と黒髪を馴染ませることで、月に1回白髪染めをしていたところが、3か月くらい放置しても気にならなくなってきます。
もう1つ、私もやっていた方法が、白髪染めではないカラーリング剤で全体を染めてしまうことです。日々シャンプーしているうちに段々と色が落ちてきて全体的にいい感じに馴染むので、新しい白髪が生えてきてもあまり気にならなくなるんです。初めてグレイヘアに挑戦する人には、この2つの方法を試すことをおすすめします。
白髪染めをやめると「老けてみえますよ」と否定的な発言をする美容師さんも残念ながらいるので、躊躇してしまうかもしれません。そういう方は、「白髪ぼかしハイライト」というメニューがある美容院を探してみてください。そういう美容室はグレイヘアに肯定的なはずなので、応援してくれる美容師さんに出会う確立が高いのではないかと思います。
美容室が「ワクワクする場所」に変わった

Yukari:オシャレが自由に楽しめるようになりました。今までは、「これを着たらいいお母さん風に見えるかな」と他人軸で生きていたのですが、癖毛も白髪も解放したら、洋服を選ぶ基準が自分軸に変わりました。ずっと封印していた若い頃は好きだったビビッドな色柄ものや、個性的なデザインの服がまた好きになりましたね。
美容院通いも「ダメなところを直すため」から、「次はこんな色を入れてみようかな」「この髪型にチャレンジしてみよう」とワクワクする機会に変わりました。
――あえてデメリットを挙げるとしたら、どんなことがありますか?
Yukari:最初のうちは、髪を丁寧に扱うことに慣れるのが少し大変でした。以前は、「どうせ多いし」と力任せにブラッシングしていたのですが、今思えばかなり雑な扱いでした(笑)。
癖毛って実はデリケートなので、やさしく扱ってあげないといけないんです。頭皮の健康のためには、あまり毎日シャンプーをしないほうがよくて。もちろん、汗をかく季節は別ですが、涼しい季節で人に会う予定がなければ、髪を守るために分泌されている皮脂を根こそぎ洗浄してしまわないほうがいいと思います。洗髪の回数を減らす前提で、ヘアスタイリングには、洗い流さないトリートメントや、髪に蓄積しにくい成分のスタイリング剤を選んでいます。
「白髪ってそんなに怖い存在じゃない」
――今後やっていきたいことはありますか?Yukari:若い人たちに、「白髪ってそんなに怖い存在じゃないんだよ」と伝えたいです。白髪って、多くの人が密かに気にしているのに、存在しないもののように扱われがちです。でも、グレイヘアを活かしてもいいし、染めてもいいし、いろいろな選択肢があるという空気がもっと広がればいいなと思います。シワが増えても誰にも責められないのと同じで、白髪が生えていても、人の価値が下がるわけじゃありません。
また、癖毛を活かすことの素晴らしさも発信していきたいです。
<取材・文/都田ミツコ 撮影/鈴木大喜>



【都田ミツコ】
ライター、編集者。1982年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。