TBS退社から8年経った今年、紆余曲折を経て20年生活した東京を後にして活動拠点を故郷北海道に戻したアンヌさん。
第45回となる今回は、アンヌさんが参院選を振り返ります(以下、アンヌさんの寄稿です)。
参院選で争点となった「外国人政策」
今さらかもしれませんが、2025年7月20日投開票の参議院選について。125の議席をめぐる戦いが終わり、各党の獲得議席が出そろいました。結果はというと、自民・公明両党は過半数の議席を維持できず、衆議院に続き参議院でも「少数与党」となりました。
私が生活する北海道では3議席をめぐり選挙戦が繰り広げられ、早々に自民党の現職(選挙時は「元北海道知事」と紹介されていた)が当選確実となり、2議席目は立憲民主の現職が早めに当確を出し、そして3議席目がいつになっても決まらない接戦となりました。
自民、国民民主、参政が三つ巴となる、本当に誰も予想ができない展開になりましたが、最終的に北海道の場合は自民が3議席目におさまり、いわゆる第三極が議席を取ることはありませんでした。
もうこれは何度も各所で論じられていることなので、この場では深入りを避けておきますが、今回の選挙戦の争点に浮かび上がってきたのがいわゆる「外国人政策」なるものでしたね。
外国人である父からかけられた言葉

今回、私が番組出演するにあたり、年老いた父もチャンネルをずっと選挙特番に合わせ、私の発言を見守ってくれていたわけですが、私の父はアイルランド系アメリカ人。つまり私は半分アメリカ人。ただ国籍は完全に日本ですので、私自身、間違いなく日本人であり、選挙権を持っております。ただ、父は選挙権がありません。
開票速報を終えて帰宅した翌朝、そんな父からかけられた言葉が印象的でした。
「今回の選挙で受かった自民党の議員さんも、外国人がうんぬんと発言をしていたが、あれは何なのだ」と私に聞いてきたのです。
どう説明したかは皆様の想像にお任せしますが、私と同じように、いや、むしろ私以上に日本や北海道を愛し、何十年も北海道の大学で教鞭をとり、何千人もの学生を世に送り出し、教授退官後は地元の高校で、完全にボランティアで英会話を教え、大量の税金を日本に収めているうちの父親に対し、一部で「日本人ファースト」なる言説があるのだということ、しっかり説明させていただきましたよ。ありがとうございます。
このときの気持ち……まぁ野暮だから言わないですよ。
そのダブルスタンダードはいったい何?
この度、外国人が必要以上に優遇されているという言説がネット上を駆け巡りましたが、実は今回の番組出演前に、私の父がそのように優遇されている場面をこれまで見たことがない、本当にそういったことがあるのでしょうか? と、私の中では非常にライトなタッチでSNSでつぶやいたところ、想定以上に反響が大きく、まったく知らない人からたくさんのコメントが寄せられたということがありました。すべてを見切れてはいないのですが、「外国人というのはあなたのお父さんのような方ではありませんよ」といったコメントもありました……。そのダブルスタンダードはいったい何なんでしょうか? 犯罪を犯す外国人? でも、だったら、憎むべきは犯罪者なのではないでしょうか……?
なんかこれまた炎上しそうだな(笑)。さて、うちの父は「外国人問題」について私の説明を、なんだかちょっと寂しそうに聞いていましたっけ。もう私はこれ以上、何も言いませんが。
某党の演説に遭遇したハーフの友人の体験

しかし、彼女は私と同じように欧米の要素が比較的強めのルックスをされています。そんな彼女が選挙期間中、某党の駅前での演説に行き当たった際、運動員の皆さんが通行人に党の政策を記したビラを配っていたと言うのです。
いろいろな意味で興味を持った彼女は近づいていきましたが、彼女の顔を認めると、ビラを配っていた運動員の方は、さっと手を引っ込めたそう。彼女にはそのビラを渡さなかったといいます。
日本人ではないからそのビラは必要ないと思ったんですかね? 彼女はレッキとした有権者ですけどね。外国人か外国人でないか、は単純に見た目で判断されているということでしょうか?
なんだかいろいろ突っ込みどころ満載だった今回の選挙戦。炎上しそうだから、もうこれ以上言わないけどね。まぁでも私はいずれにしても、排除の構造はおかしいと思いますけどね。
排除の前に、もっといろいろやることあるんじゃないかなぁなんて思ったり。
<文/アンヌ遙香>
【アンヌ遙香】
元TBSアナウンサー(小林悠名義)1985年、北海道札幌出身、在住。現在はフリーアナウンサーとしてSTV「どさんこWEEKEND」メインMCや、情報番組コメンテーターして活動中。北海道大学大学院博士後期課程在籍中。文筆家。ポッドキャスト『アンヌ遙香の喫茶ナタリー』を配信中。