たとえば、2025年6月に公開された「サメの姿造り(8種盛り)」は驚愕でした。ノコギリザメ、ハナザメ、カスザメ、サカタザメ、ドチザメ、フトツノザメ、ネコザメ、チョウザメが盛られています。
さすが、奇食崇拝者……! いや、今回だけじゃないんです。過去には、「マンボウの姿造り」や「ナマズの姿造り」なんて料理も発信していたRikutoさん。


8種類のサメの総額は?

Rikuto:すごくシンプルに、8種類あったほうがインパクトがあると思ったんです(笑)。本当は10種盛りにしたかったのですが、もう2種類のサメの入手が間に合わなかったので諦めてしまって(笑)。
――間に合わないとは?
Rikuto:サメって鮮度が落ちやすいから「2日以内には集めないと」と思っていたのですが、集まりきらなかったんです。
――これらのサメは、どこで購入されたのでしょうか?
Rikuto:漁師さんや市場の仲介人の方、あとはめずらしい魚を取り扱っている小田原のスーパー「クイーンズマートヤオマサ」で購入しました。「マンボウの姿造り」をつくった際も、ヤオマサでマンボウを入手しました。
――8種盛りのサメの総額はいくらでしたか?
Rikuto:たしか、3万8000円ぐらいだったと思います。
――合計3万8000円なので、8分割すると単価はだいたい4000円ちょっと。ただ、ノコギリザメはひときわ高くて6000円ぐらいという感じですね。
「サメ」と言いつつサメじゃない魚が混ざっている
――Rikutoさんのポストにもありましたが、8種盛りのうちサメではない魚がこっそり混ざっているそうですね。Rikuto:はい。キャビアでおなじみのチョウザメは魚類で、サカタザメはエイの仲間です。名前に「サメ」とついているけれど、実はサメじゃない。「そういうのもいるんだよ」と知ってほしくて、混ぜてみました(笑)。

Rikuto:だいたい、2時間ちょっとでした。
――ということは、1匹15分ぐらいで捌いていったんですね?
Rikuto:はい。夜中につくり始めたのですが、朝には仕事が始まるので今まで以上に爆速でやりました(笑)。
――でき上がりを見ると、盛り付けもカラフルで可愛かったです。サメ以外になにが盛り付けられているのでしょう?
Rikuto:まず、レモンとキウイ、ドラゴンフルーツといった果物。

おいしいサメとおいしくないサメがある
――実際に食べてみたサメは、おいしかったですか?Rikuto:おいしいサメと、おいしくないサメがありました(笑)。ノコギリザメとサカタザメ、チョウザメ、カスザメはおいしかったです。
――どんな味がするんでしょうか?
Rikuto:「サメはアンモニア臭が強い」とよく言われます。そのなかでも、アンモニア臭の発生が遅いものと早いものがあるんですね。そして、遅いものほどおいしい傾向にあります。味自体は、鯛やヒラメみたいな白身魚系です。
――ということは、癖はなさそうですね。逆に、おいしくなかったサメはどれですか?
Rikuto:ドチザメというサメです。一番臭かったです。
――ドチザメは、鮮度が失われるのが早かった?
Rikuto:それもありますし、もともとの味も微妙でした。
――いろいろなサメが盛られた8種盛りなので、一度の食事では食べきれなかったと思います。マンボウのときはキムチ鍋や“モツ煮風”の料理に活用されていましたが、今回のサメも別の方法で完食を目指すのでしょうか?

――Xでいろいろなお料理を発表されていますが、Rikutoさんは飲食のお仕事をされているのですか?
Rikuto:はい、そうです。
――仕事柄、姿造りなどはお手のもの?
Rikuto:いや、姿造りに関しては独学です。と言っても、YouTubeで魚を捌く動画を見たり、知人の料理人からやり方を聞いてみたり、がっつり勉強したわけではないんですけど(笑)。
「コオロギラーメン」で食への探究心が高まった
――今まで食べてきた奇食のなかで、特に記憶に残っている料理はなんですか?Rikuto:食への探求心が特に高まった料理があります。「アントシカダ」(東京都中央区)という昆虫食のお店の「コオロギラーメン」というメニューです。ラーメン1杯に約110匹のコオロギを使ったラーメンなんですけど。
――えーーっ!
Rikuto:このラーメンを食べたら、昆虫食の概念が変わります。「気持ち悪い」というイメージが裏切られますよ。「え、これが虫なの?」と驚くくらい、すごくおしゃれなラーメンです。
――いいじゃないですか!
Rikuto:ただ、コオロギから出た出汁なので不思議さもあるんですね。「これがコオロギの出汁なのか……」「食べてみないとわからないな」という味です(笑)。
――「コオロギラーメン」を食べる前から、奇食に対する興味はあったのでしょうか?
Rikuto:中学生ぐらいの頃から奇食は始めていました(笑)。
もともと、僕は「アントシカダ」オーナーの篠原祐太さんという方への憧れがすごい強かったんです。「篠原さんのお店に行きたい」「篠原さんと会ってみたい」という思いで、地方から東京に上京してきました。
――「いつか、俺はコオロギラーメンを食べるぞ」という思いを抱き、上京したわけですね。
Rikuto:「自分も、そういう界隈に行きたい」と思っていました(笑)。
奇食を始めたきっかけは家出
――中学の頃から奇食を追い求めていたとのことですが、そのきっかけは?Rikuto:中学時代、家出をしたことがあるんです。そのとき、手元にお金もなかったので、川に寄ってみたんです。すると、浅瀬で鯉が遡上している現場にたまたま出くわしまして。
実は、それ以前からYouTubeで変わったものを食べる奇食系の動画を見るのは好きでした。だから、真似してみようと思ったんです。
――実際に食べてみた鯉の味はどうでしたか?
Rikuto:普通に臭かったです(笑)。正直、臭みのせいで味はわからなかったし、おいしいかどうかも判断できませんでした。汚い川で捕った鯉って、やっぱり臭いんです。ちゃんと処理すれば、おいしい魚なんですけどね。
でも、当時はそれはどうでもよかった。おいしいかおいしくないかより、そういうことをしたという事実が楽しすぎました(笑)。
――ということは、家出前から奇食系のYouTubeは好んで見ていたわけですね。なぜ、そこに興味が?
Rikuto:実家が川と森に挟まれた場所にあり、自然に囲まれていた環境で育ったというのが大きいです。あと、兄は爬虫類や昆虫をたくさん飼育していた人でした。
そんななか、生き物を食べる系のYouTube動画にたまたま出くわしまして。「生き物を“育てる”以外に“食べる”という選択肢もあるのか!」と、そっちの方向へ向かってしまったという(笑)。
――そういう経緯だったんですか! 最後に「今度、これでなにかをつくろう」と考えている新食材はありますか?
Rikuto:2匹います。まずは、マンタ。もう一つは、「リュウグウノツカイ」という魚です。
――「リュウグウノツカイ」という魚がいるんですか?
Rikuto:「リュウグウノツカイ」という魚がいます(笑)。
――Rikutoさんがマンタとリュウグウノツカイをどんな料理に仕上げてくれるのか、楽しみにしています!
==========
「生き物を育てるより、食べる方向に行ってしまった」と語るRikutoさん。ただ、“食べる”とはすなわち、生き物を自分のなかに取り入れているということです。どちらも、尊い行為であることに変わりありません。ある意味、Rikutoさんの活動からは生き物の命の重さが存分に伝わってきます。
近日中に発表されるであろうマンタとリュウグウノツカイ使った新作にも、期待大です!
<取材・文/寺西ジャジューカ>