ネットやリアルでたびたび話題に上がり、盛り上がりを見せる「家庭科のドラゴン」。青い炎を背負った黒いドラゴンのデザインで、平成男児が選ぶ家庭科の裁縫箱として知られています。
ネットミームになっていたり、コラボレーションを盛んに行ったりしていることから、世代ではない人も見聞きしたことがあるのではないでしょうか?

知ってる?裁縫箱で人気「家庭科のドラゴン」の“長~い本名”。...の画像はこちら >>
 そんな有名ドラゴンの詳細な設定や各社とのコラボレーションの経緯について、「家庭科のドラゴン」を生み出した株式会社サンワード(以下、サンワード)の営業を務める川中靖博さんに話を聞きました。

家庭科のドラゴンの“本名”と、緻密な公式設定

――「家庭科のドラゴン」こと「ルールレジェ ブラックドラゴン」の設定を教えてください。

川中さん(以下、川中):
このブラックドラゴンはドラゴンシリーズの初代として、2001年に誕生しました。ルールレジェという重力を司る神獣で、フランス語で「重い」「軽い」を意味します。ルールレジェの住む大陸には敵対し合っている4つの帝国があり、ルールレジェは天空の帝国の守護を担い、大陸の統一を目指しています。

現在もドラゴンシリーズの和龍は家庭科の学習教材として採用されていますが、ルールレジェが採用されていたのは2023年までです。時代の流れもあり、現在はもう少しシンプルなデザインが好まれているように感じます。

「女の子だから使わせてもらえなかった」女性の声も

――我が子が「家庭科のドラゴン」の裁縫箱を選ぶことへの、保護者からの反対についてどう思いますか。

川中:
私は肯定的に捉えています。保護者は「長く使うものだからもっとシンプルなデザインを」と思うようですが、お子さんの「自分で選んで決めたからには長く、大切に使う」という自我、自主性、自尊心、責任感を育む絶好の機会になると考えています。それに、保護者とお子さんの意見が対立することで記憶に残りやすくなり、親子の間で「家庭科のドラゴン」が思い出深いものにもなっていると思います。

今の小学生の保護者は30代後半から40代前半の方が中心だと思われます。その世代の皆さんが小学生だったときには、「家庭科のドラゴン」に触れていません。35、36歳以下の方から「家庭科のドラゴン」世代が始まるので、もう少し時間が経つと世代間ギャップがなくなり、親子で「家庭科のドラゴン」を共有し合えるようになるのではと考えています。
そのタイミングでまた、コテコテのドラゴンを広められたら面白いですね。

――実は女性人気も高いといううわさを聞きました。

川中:
そうですね。昨年の2024年が辰年だったということもあり、ドラゴンシリーズのグッズを夏のコミックマーケット104で販売しました。当社のブースに来てくださった方の2~3割は女性で、「女の子だから」という理由で小学校のときに「家庭科のドラゴン」のデザインの裁縫箱を選ばせてもらえなかった方からお話をお伺いしました。

また、当社ホームページの問い合わせ欄には、「家庭科のドラゴン」の女性向けグッズの販売を希望する声もあります。一定の女性人気はありそうですが、まだまだ女性をターゲットにしたアイテムがないので、展開を検討したいと思っています。

「懐かしい」大人たちが盛り上げてくれる喜び

――ネット、リアルを問わず、大人が「家庭科のドラゴン」で大盛り上がりすることについての感想をお聞かせください。

川中:
うれしいですね。盛り上がりをSNS等で目にするたびに、「営業として、もっと自分にできることはあるんじゃないか」と思うので、皆さんの反応は自分を動かすエネルギーになっています。

――あれほどまでに盛り上がる要因は何だと思いますか?

川中:
やっぱり「懐かしい」「印象深い思い出の象徴」ということだと思います。男女共通の話題ということと、裁縫箱を選ぶ年代特有の「背伸びしがち」な過去を振り返ってイジったり、自虐したりすることで盛り上がれるのだと思います。そんなところがXとの相性がよく、たびたび話題に上がり、楽しんでいただけているのではないでしょうか。


ドデカミンとのエモいコラボも話題

――7月15日にコラボレーション製品「ぼくの考えた最強のドデカミン」が発売されました。

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担当者の熱いメッセージはXでも話題に
川中:
「家庭科のドラゴン」のファンだというアサヒ飲料さまのご担当者の熱い思いを具現化する形で、コラボレーションが実現しました。元気成分が強化されていることが特徴で、当社とのコラボレーションによって、かつての男児の心をよりくすぐるエモい仕様になっています。

おかげさまで小売店の評判も良く、当社の社員も喜んでいます。Xの投稿を見ていると、「家庭科のドラゴン」の設定を初めて知った人も多くいらっしゃったようです。コラボそのものとは違うところで盛り上がっているのが分かり、改めてたくさんの方に興味関心を持っていただけたのでよかったと思っています。

――「家庭科のドラゴン」の呼称で定着しているのはOKなんですね。

川中:
全然ありですね。「家庭科のドラゴン」で多くの人が共通のイメージを浮かべられるので、いいと思っています。それに、ドデカミンとのコラボレーションでわかったように、初めて設定を知った人が、そこでまた家庭科のドラゴンの世界観を楽しんでいただけると考えています。

“意外な企業”とのコラボTシャツは即売り切れ

――わかさ生活さんとのコラボレーションの経緯も気になります。

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グッズでは、特にTシャツの人気が高いとのこと
川中:
これは私がわかさ生活さんとの親和性を感じ、営業をしたことで実現しました。わかさ生活さんは京都、当社は大阪で同じ関西圏で活動していること、共にSNSで話題になりやすいこと、コミックマーケット104に出展していたなどの共通点があり、お声掛けしたところ、快くお引き受けいただきました。

わかさ生活さんがXで「ブルブルくんは『家庭科のドラゴン』、リトルボブドッグ、スキップバニーの中の、どのキャラクターとコラボレーションするべきか」というアンケートを実施しました。
「おそらく『家庭科のドラゴン』だろう」と思っていましたが、やはり圧倒的な票差で、家庭科のドラゴンになりました。

キャラクターデザインを全面に出したかったので、Tシャツは譲れなかったのと、あと家庭科を意識して、ナップザック、トートバッグも販売しました。このコラボレーションもXで盛り上がり、特にTシャツはあっという間に売り切れてしまいました。

「見たことある!」他のおすすめキャラクターは

――家庭科のドラゴンの他に、コラボを推したいキャラクターはいますか?

川中:
どのキャラクターもおすすめですが、コラボキャラクターとして推したいのは、平成当時人気だったスキップバニーです。

スター、ハート、ムーン、フラワー、シャインの5匹のキュートなバニーが天上界と地上界の隙間のポップでラブリーな物だけで作られた世界で暮らしています。平成を感じさせるポップなデザインで、以前はリトルボブドッグやブラックドラゴンと並ぶくらいの人気があり、ぬいぐるみやクッションステーショナリー、生活雑貨などのジャンルで活躍していました。今は露出が減っていますが、「かわいい」と「元気」をぎゅっと詰め込んだスキップバニーは、グッズとして持っているだけで気分がぱっと華やぐ。そんなキャラクターです。

あとは、DOUR MOU(デュールムー)というノスタルジックな優しい雰囲気のクマのキャラクターもおすすめです。CoCo壱番屋さんやその他飲食チェーン店などで使用されている子ども向けのお皿やカトラリーのデザインに採用されていて、こちらも「見たことがある!」となるキャラクターの1つです。

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平成当時人気だったスキップバニー。5匹はおしゃべりやおしゃれを楽しみながら過ごしているそう


「この子の名前は?」となったら、ぜひ検索して

――今後の予定や展望についてお聞かせください。

川中:
今年の夏もコミックマーケットに出展します。前回、好評だった商品をリニューアルしつつ、新商品も多く用意しています。
ぜひ多くの方にお手に取っていただければと思います。また、キャラクター事業を主軸に、昨年からはセールスプロモーション事業をスタートし、複数の企業、団体、スポーツチームなどの委託業務、営業用カタログ等でも少しずつ引き合いをいただいております。この事業もしっかりと拡大し、既存事業とのシナジーを生み出す計画です。

リトルボブドッグ、家庭科のドラゴン、その他のキャラクターも「名前は知らないけど見たことがある」という稀有なポジションは大切にしつつ、さまざまな展開を予定しています。どこかで見かけたときに「この子の名前は?」となったら、ぜひ、検索してもらえるとうれしいです。

【株式会社サンワード】
1988年に設立。大阪市に拠点を置き、リトルボブドッグその他オリジナルキャラクターの企画及び版権業務を行う他、セールスプロモーション事業を展開。X:@sunward_info

<取材・文/増田洋子>

【増田洋子】
2匹のデグー、2匹のラットと暮らすライター。デグーオンリーイベント「デグーサロン」を運営。愛玩動物飼養管理士2級を取得。Twitter:@degutoichacora
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