あの子は自分で逝き方を選んだ……。愛猫を看取る時は、そう思えるような瞬間に立ち会うこともあるものです。
星くずうさぎさん(@hoshikuzu89usa1)も、そんな経験を目の当たりにしたよう。愛猫ジジくんは死の瀬戸際、大好きな娘さんの帰宅を頑張って待ち、娘さんに抱かれながら息を引き取りました。
動物看護士の娘さんがお迎えした「瀕死状態だった子猫」
2015年9月上旬、瀕死状態だったジジくんは、娘さんが動物看護士として働いていた動物病院で保護されました。出会った時から、娘さんはなぜかジジくんに運命的なものを感じたそう。毎日ケアをする中で、ジジくんを自宅へ迎えたいという気持ちが募っていき、お迎えを決意しました。


「一番慌てたのは、冷凍庫を開けた時に奥の隙間に入り込んでしまったことです。小さすぎて、なかなか救出できなくて……。鳴り続ける冷凍庫のアラーム音で余計に焦りました(笑)」
まるで一心同体のようだった娘さんとジジくん
巡り合うべくして出会ったようだった、娘さんとジジくん。ふたりは不思議と、心身のコンディションがシンクロすることも多かったそうです。例えば、娘さんの具合が悪くなると、ジジくんも元気をなくし、ショボンとしていたのだとか。

ただ、ユニークなことに抱っこは飼い主さんでないと、しっくりこなかったそう。
「私が抱くと、胸の下に顔を埋め、ゴロゴロ言いながら眠りました。でも、娘が抱っこすると、数分で膝から降りてしまって(笑)」


ほぼ毎日、点滴を受けて「慢性腎臓病」と闘った
穏やかな日々が一変したのは、2023年の夏。8歳を迎えたばかりのジジくんは食欲が徐々に落ち始め、11月には水しか飲まなくなりました。かかりつけ医で検査をしてもらうと、片方の腎臓が小さくなっているとの診断が……。
他の病気が隠れている可能性もあったため、高度医療センターでより詳しい検査をしてもらったところ、慢性腎臓病であることが分かりました。

しかし、治療開始から半年ほど経った2024年5月下旬、吐き気と下痢が続くように。そこで、6月上旬に再び高度医療センターを受診すると、消化管に炎症や腫瘍が広がる「びまん性消化管疾患」の疑いがあると告げられました。

愛猫の闘病中は、家族のメンタルもボロボロになっていくものですが、飼い主さんの場合は、ジジくんが点滴を受けている20分ほどの間、獣医師や看護士と世間話をすることが癒しとなっていました。
大好きな娘さんの帰宅を待って、虹の橋へ
ジジくんが亡くなったのは、2024年6月16日の夜でした。この日も飼い主さんは、午前中に動物病院へ。すると、獣医師から「体温が下がってきているので…」と、別れが近いことを暗に告げられました。
娘さんが仕事から帰宅したのは、19時半頃でした。すると、ジジくんは最期の力を振り絞り、自力で娘さんのもとへ。娘さんは、そんなジジくんを優しく抱きかかえました。
「家族みんなでジジを撫でながら『よくがんばったね、もういいよ…』と伝えると、最期にひと鳴きして娘に抱かれたまま、虹の橋へ向かって行きました」

「お骨はカプセルキーホルダーに分骨し、持ち歩いてもいます。火葬前に切り取らせてもらったお腹の毛は、フェリシモ猫部の被毛を入れられるロケットペンダントに入れました」

死の淵から救われ、最期まで愛されながら旅立ったジジくん。自分の意思で選んだかのような逝き方には、家族への「ありがとう」が詰まっていたように思えます。
<取材・文/愛玩動物飼養管理士・古川諭香>
【古川諭香】
愛玩動物飼養管理士・キャットケアスペシャリスト。3匹の愛猫と生活中の猫バカライター。共著『バズにゃん』、Twitter:@yunc24291