まばたきもせず、機械のように踊るしなやかなロボットダンス動画で軒並み数千いいね!を獲得している屋代まどかさん(53歳)。TikTokのアカウント「中高年型」(@yashiro6122819159749)は開設からわずか1年でフォロワー2万人を超え、コメント欄では「めちゃめちゃ、かっけー」「身体の動きすごすぎます!」と絶賛の声が寄せられています。


“衝撃ロボットダンス”で話題の53歳主婦。どんなにバズっても...の画像はこちら >>
 TikTokをきっかけに今や、テレビやWebCMへの出演も多数。ダンス系インフルエンサーとして注目されていますが、人気のTikTokでは意外にも「収益化」をしていないと語ります。その背景にある、屋代さんならではのSNSに対する哲学などを聞きました。

スマホの容量がいっぱいでSNSへ投稿

――InstagramやTikTokが評判を集め、自身の半生を描いたカロリーメイトのWebCM出演も話題になりました。本業はダンサーですか?

屋代:半々、といいますか。ダンサーとしての仕事もありますが、本業は高齢者施設で働いています。入居者の方のレクリエーションを担当して、イスを使った体操とか、転倒防止の運動とかを指導しているんです。つい最近「介護予防運動指導員」の資格も取りました。

“衝撃ロボットダンス”で話題の53歳主婦。どんなにバズっても「収益化」しない理由
屋代まどかさん
――SNSはいつからはじめたんでしょう?

屋代:1年ほど前ですね。動画をアップしてから1か月ほどでXをきっかけにたくさんの方が注目してくださり、テレビや広告の依頼もいただけるようになりました。

――夢物語のようですが、そもそも投稿をはじめたきっかけは?

屋代:49歳のときにロボットダンスに初挑戦して、送った動画にアドバイスを返してくれる通信講座を受講したんです。その復習も兼ねて、記録のために動画をアップしたのがきっかけでした。スマホで動画を保存していたら容量がすぐいっぱいになってしまうからで、当初は、誰かに見せようとは思っていなかったんです。


でも、ありがたいことにバズってからは「ひょっとして、私の動画に力があるのかな?」と思って、自信もつきました。たくさんの方がシェアしてくださるのにつれて「ロボットダンスをもっと極めたい」となって、いつのまにか、家族に料理を運ぶときだったり、日常生活にもロボットダンスがしみついていました。

収益化はせず「自分のために」を貫く

“衝撃ロボットダンス”で話題の53歳主婦。どんなにバズっても「収益化」しない理由
屋代まどかさん
――ダンスの基礎にはムーンウォークがあって、小学校時代に「つま先立ち」から練習をはじめたそうですね。カロリーメイトのWebCMでは生い立ちをたどっていましたが、幼少期からのめり込んでいたものが、50代で花開くのも夢のようです。

屋代:WebCMでは出演されていたダンサーさんの振り付け指導も担当することになり、自分でやるのと教えるのでは勝手が違うので、ダンススクールで学び直したんです。バレエダンサーの方との出会いでは、独学で「つま先立ち」を身につけた自分の動きが、基礎をちゃんと習っている方と違うと知りました。

私のように、つま先で指を内側に巻き込むような立ち方は、バレエでは「やってはいけない」と言われているみたいなんです。もしタイムマシンがあるなら、小学校時代の自分に教えたいと思いました(笑)。

――(笑)。でも、SNSでの発信をしていなければ、そうした巡り合いもなかったわけですね。

屋代:本当、SNSには感謝してます。でも、評価をそれほど気にしてはいません。事務所にも入っていない一般人ですし、そもそも、小学校時代には「つま先立ち」だけではなく、竹馬の足を乗せる板を手が届かないくらいの高さにして乗りこなそうと黙々と練習していたり、1人で何かを突き詰めるのが好きだったんです。


ロボットダンスの全国大会で優勝しても反省ばかり浮かんできましたし、逆にSNSで評価されなかったとしても新しい技が決まって「最高!」と自画自賛する動画もあります。

“衝撃ロボットダンス”で話題の53歳主婦。どんなにバズっても「収益化」しない理由
屋代まどかさん
――自分のためにと、貫いているんですね。

屋代:そうですね。だから実は、どれほどバズったとしても収益化はしていないんです。収益をねらって「バズらせよう」と考えてしまうのが嫌でしたし、正直「収益化すればいいのに」とも言われるんですけど、今後もやる気はありません。

――とはいえ、影響力があると収益化を誘うコンサルのDMなんかも、ひっきりなしに来そうですよね。

屋代:バリバリ来ます(笑)。でも本当、興味がないんですよ。あくまでも好きなことを記録して、ダンス好きな人と繋がるのが楽しいから続けていますし、ほどほどの距離感で、依存しないようにも気を配っています。バズったダンスがあったとしても、狙って連続して投稿することもしません。

なんでもいつかは「笑い話」に

“衝撃ロボットダンス”で話題の53歳主婦。どんなにバズっても「収益化」しない理由
屋代まどかさん
――ダンス界のインフルエンサーとして、現状にどれほど満足していますか?

屋代:ダンスのスキルを底上げしたい気持ちも強くて、自分の中では100パーセント中の30~40パーセントぐらいですね。バズったとしても「技の繋ぎ方が悪かった」と反省しますし、失敗だった動画は見返して次に生かします。


カロリーメイトのWebCMでも、反省はありました。裏話ではありますけど、日頃からかかとを上げて生活しているからか、ふくらはぎがサッカー選手のようにパンパンで、衣装が入らなかったんです。スタイリストさんに迷惑をかけました(笑)。

“衝撃ロボットダンス”で話題の53歳主婦。どんなにバズっても「収益化」しない理由
立派なふくらはぎ
――(笑)。この先も、踊り続ける覚悟なんでしょうか?

屋代:何をしたいとか、目標はないんです。自分が満足できることを、続けていくだけですね。小学校時代にムーンウォークをやりはじめて、10代、20代……と年齢も重ねてきましたけど、60歳を過ぎたら、体力が衰えたとしても杖をつきながら踊っていたいとは思います。毎日筋肉痛ですが、それでもやめられないし、日常すべてがトレーニングになっているのも、とにかく楽しいです。

――好きなことに没頭する人生には、憧れます。世の中には、子育てや仕事に奮闘して「自分の好きなことになかなか時間をさけない」と悶々としている女性も少なくないと思います。そんなみなさんへ、何かメッセージはありますか?

屋代:子育てで「自分の時間がない」と感じるのは、それだけ「やるべきことをやっている」ということの裏返しでもあると思うんです。私にも娘がいて、アレルギー持ちの上の子が幼い頃は、お世話するため寝不足になったりして、自分の時間を持てなかったし、時間があるなら「寝たい」と考える時期もありました。


でも、少しずつ手を離れるようになってからは、自分がある程度は放任されて育ったのもあり「本人に任せてみよう」となって、必要以上にかまうのをやめました。子育てのあいだはどうしてもお子さんを応援する側になってしまいますが、たまには、自分で自分を応援してもいいんです。なんでもいつかは「笑い話」になりますし、自分が「楽しい」と思えることを優先してほしいです。

“衝撃ロボットダンス”で話題の53歳主婦。どんなにバズっても「収益化」しない理由
屋代まどかさん
<取材・文/カネコシュウヘイ 撮影/市村円香>
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