森川葵主演ドラマ『スティンガース 警視庁おとり捜査検証室』(フジテレビ系、毎週火曜日よる9時から放送)第2話にゲスト出演したことが話題。「形から入るタイプ」と本人が語るように、ビジュアル的な演技が特徴的である。
男性俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、有名曲が名前の由来である時任勇気の魅力を解説する。
時代を象徴する曲名が名前の由来
人びとが寝る間を惜しんで働いた(それと同時に遊んだ)バブル経済にわく日本では、「24時間、戦エマスカ。」というキャッチコピーがもてはやされた。24時間働くためには身体を支えるだけの元気と活力がいる。そこで当時、三共がドリンク剤「リゲイン」を発売。CMソング「勇気のしるし」の歌詞にもこのコピーが含まれる。
同曲は1989年にCMキャラクターである牛若丸三郎太名義でリリースされ、時任三郎が歌った。もうかなり前の曲だというのに、どうやら令和になってもこのCMソングがまだ話題を提供している。時任三郎には3人の子どもがいるが、長男の名前が「勇気」。
時代を象徴する曲名が名前の由来となった。父・時任三郎と同じ俳優になった時任勇気は、1991年ニュージーランド生まれ。1999年に三郎が同国に移り、2003年に帰国。
話題の俳優は「形から入るタイプ」
平成初期の有名曲を歌った名優の父を持ち、平成のラストスパートに俳優になった時任勇気だが、この令和7年(7月23日)にInstagram上に投稿した写真が話題である。キャプションには「『スティンガース 警視庁おとり捜査検証室』第2話に出演させていただきます!」とある。新作ドラマ出演に関する告知投稿がネットニュースになり、投稿写真に対する「顔面国宝」というコメントまで紹介されていた。このいかにも平成っぽい軽薄な表現のコメントが的確かどうかはさておき、『スティンガース 警視庁おとり捜査検証室』(フジテレビ系、以下、『スティンガース』)に出演する時任勇気の撮影オフショットはなかなか見応えがある。
186センチの長身がローアングルぎみの画面上で際立ち、特に目を引く口髭。役作りにしては髭面が似合い過ぎる。時任勇気の役作りに関して過去のインタビュー記事(ORICON NEWS、2020年掲載)を読むと、「形から入るタイプ」と発言している。演じるキャラクターの内面はもちろんだが、まずは外面(ビジュアル)作り。何と潔い役作りだろう。
時任勇気のビジュアル的演技
実際の演技はどうか?「顔面国宝」という艶やかなコメントとは裏腹に、時任勇気が演じるのはかなりハードな役柄。『スティンガース』は、警察庁審議官・西条巧(玉山鉄二)責任の下、FBIで実績をつんだ二階堂民子(森川葵)を室長として設置されたスティンガースの面々が難事件をあざやかに解決する。第2話では、カップル配信者ばかりを狙う誘拐事件を捜査。
おとり捜査で誘拐された二階堂と元捜査一課・乾信吾(藤井流星)が仰ぎ見る犯人は、髭面で狂気の表情を浮かべる。「形から入る」と本人が言うように、時任勇気の長身が特に際立つローアングルの画面からは、時任勇気のビジュアル的演技とその役作りの力強さを感じた。
バブル時代を象徴する曲名が、こうして俳優である息子の演技を支える強壮剤になっているのかもしれないなんて考えてみた。
<文/加賀谷健>
【加賀谷健】
コラムニスト/アジア映画配給・宣伝プロデューサー/クラシック音楽監修
俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”として「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu