あなたはパートナーと喧嘩をしてしまった時に、相手がどんな態度だったら「許してもいいかな」と思うことができますか?

 今回は、そんな夫婦喧嘩がこじれてしまった女性のエピソードをご紹介しましょう。

パスタの感想をしつこく聞いた結果

ささいな夫婦ゲンカから家庭内別居へ。数日後、夫が隠れて“ソフ...の画像はこちら >>
 田中舞花さん(仮名・32歳/派遣社員)は、光一さん(仮名・35歳/会社員)と結婚して2年目になります。

「光一はもともと物静かな性格で口数が少ない人なんです。
ある日、私がレシピを見ながら初めて作った『オクラと鶏ひき肉のクリームパスタ』の感想を聞いているのに、なかなかちゃんと答えてくれないことがあったんですよ。『美味しい』のひと言もなくて」

 つい舞花さんがしつこくしてしまうと、光一さんが耐えきれなくなったのか「じゃあもう無理に作らなくてもいいよ」と言われてしまい……。

「リビングに重たい沈黙の空気が流れ、私は黙って部屋を出ました。たったひと言、褒めてくれたらそれで満足だったのに。何なのあの態度? と頭にきて。その晩から私は普段一緒に使っている寝室には近寄らず、物置にしている部屋で寝るようになったんです

 何度か光一さんが謝りたそうに近づいてきたことがありましたが、舞花さんは背を向けて物置部屋に引きこもっていたそう。

「なんでもっと強引に私を引き留めて謝らないの? とイライラしてしまって。そのまま食事も別々で、口もきかない、家庭内別居の状態が5日ほど続いたんですよね

折りたたみ傘をマイク代わりに

ささいな夫婦ゲンカから家庭内別居へ。数日後、夫が隠れて“ソファでしていた行為”が悶絶級のかわいさだった
ソファに寝転ぶ男性
 そんなある晩、光一さんがベロベロに酔っ払って帰ってきました。

「珍しいなと思いつつ、私はいつも通り声もかけず物置部屋に戻ろうとしました。でも光一が妙に騒がしいので気になり、ちょっとリビングを覗いてみたんです」

 すると酔った光一さんがフラフラしながら「あの日の俺、マジ最低だった♪『作らなくていい』なんて何様なんだ? 舞花の料理いつも五つ星。気の利いた感想言えない俺いいところひとつもなし~」と折りたたみ傘をマイク代わりにしてラップをしていました。

すぐにスマホで動画撮影

「思わず吹き出してしまい、すぐにスマホで動画撮影しました(笑)。しばらく同じフレーズをループしていましたが、そのうち力尽きたのかそのままソファーで寝てしまったんですよ」

ささいな夫婦ゲンカから家庭内別居へ。数日後、夫が隠れて“ソファでしていた行為”が悶絶級のかわいさだった
スマホを操作する女性の手元
 そして寝ている光一さんにそっと近づき、スマホをチェックしてみると、そこには舞花さんへの謝罪の気持ちがリリックとして書き綴られていたそう

「光一はこの自作ラップで私に謝ろうとしているの? とワクワクして、楽しみでたまらなくなりました。
決して上手なラップではありませんでしたが、私へのリスペクトが伝わってきて嬉しかったんですよね」

のたうち回って恥ずかしがる夫

 ですが次の日もその次の日も光一さんはダンマリのままで何のアクションもなく、とうとう我慢ができなくなった舞花さんが「何で面と向かってこの時みたいに気持ちを伝えてくれないの?」と例の動画を光一さんに突きつけました。

「そしたら光一は今まで見たことのないビックリ顔になり『やめて~! 一生のお願いだから消して~』とのたうち回って恥ずかしがっていて(笑)。話を聞いたら、あのリリックに満足できなくて新しく書き直してるっていうんですよ」

ささいな夫婦ゲンカから家庭内別居へ。数日後、夫が隠れて“ソファでしていた行為”が悶絶級のかわいさだった
※画像はイメージです
 舞花さんがラップをベタ褒めすると、光一さんはとても喜び「これからは、俺もちゃんと伝えるから」と改めて謝ってくれたそう。

「何でも光一は学生時代にヒップホップにハマっていた時期があったらしく、『リズムに乗せたら自分も素直な気持ちを表現できるかも?』と思ったみたいなんですよね」

気持ちをラップにされると、笑って許せてしまう

 そのようにして、1週間ほど冷戦状態だった2人はついに和解することがきました。

「光一の普段とは違った一面を見ることができて新鮮でしたし、別に私の料理に不満があるわけではないことも分かったので、安心できたんです」

 それ以降、喧嘩になると光一さんがラップで謝罪する、というのが夫婦の恒例になったそう。

「気持ちをラップにされると何か笑っちゃってすぐ許しちゃうんですよね。光一も私にウケるのが嬉しいらしく、謝罪以外でも私が美容院から帰ると『かわいい? なんて聞く必要なし♪ 100点どころか君は天使だし』と褒めてくれるようになったんですよ」と微笑む舞花さんなのでした。

<文・イラスト/鈴木詩子>

【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop
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