2020年放送『誰も知らない明石家さんま』(日本テレビ系)の「さんま画商プロジェクト」で自作絵画を披露して以来、岩田剛典の肩書きには画家としての側面が追加された。今や、その画風が誇り、醸す価値は、誰もが知るところだ。


 今年の『24時間テレビ48-愛は地球を救う-』(日本テレビ系、8月30日、31日放送、以下、『24時間テレビ48』)では、「さんま画商プロジェクト」のアーティスト・青山哲士に弟子入り。2024年放送から引き続き、リアルタイムで制作するアート企画に挑戦した。

 マイクと絵筆を持ち変える、しなやかな身振りが、2日間に渡って力強い感動を広げた。

 LDHアーティストをこよなく愛するコラムニスト・加賀谷健が、今年も大活躍だった岩田剛典の制作過程を振り返る。

アート制作筆入れまで響く序曲のように

 2025年の『24時間テレビ48』は、氷川きよしによる番組テーマ曲「サライ」アカペラ独唱で幕開けた。オープニングあと、総合司会の上田晋也を筆頭に、チャリティーパートナーや出演者たちが登場した。

 彼らもまた声を一つに「サライ」を合唱。上田も言うように、幕開けからクライマックス感が流動する画面上、後列壇上にさらりと写ったその人。2024年放送から引き続き帯企画を担当する岩田剛典が、マイクを左手に声を重ねていた。

 もうこれだけで感動。もう満足。早くも番組を24時間見終えてしまったような高鳴り。岩田は今年も24時間で作品を完成させ、オークションを開催するアート企画に挑戦した。


 冒頭の合唱は、毎年恒例になったといっていいアート制作の筆入れの瞬間まで響く通奏低音、あるいはその序曲のように聴こえてきた。

24時間制作にふさわしい細密画的アート

 筆入れの瞬間は、8月30日放送の21時30分台。オークション会場から中継され、辻岡義堂アナウンサーの隣で、下絵に色筆を入れていく岩田が写った。手元を見ると、網の目のように張り巡らされた図像一つひとつに配色している。

 目がしばしばするくらい細か過ぎる。24時間をかけた制作にふさわしい作業量だ。こうした細密画のようなアート制作のきっかけは、本番組企画の原点である『誰も知らない明石家さんま』の「さんま画商プロジェクト」だった。

 明石家さんま扮する画商が隠れた才能を発掘する番組スタジオで初披露した、目を見張る一作!

 制作期間2か月をかけて、岩田剛典の脳内イメージが自動筆記的に細部まで張り巡らされた力作油絵だった。それを見た監修者の画商が「名前を隠しても100万円で売れる」と評した。細密画的な才能が、今回の『24時間テレビ48』でも早業で華やぐ。

スピード勝負のリアルタイム感

 制限時間内の早業は、2024年の『24時間テレビ47』で最初に試されたわけだが、絵筆をスプーンに持ち変えたライブペイントのリアルタイム感、その緊張感はスプーンからドロップするペンキの1滴目から完成まで持続した。

 同作は細密画的ではないにしろ、24時間以内に作品を仕上げるスピード感は、アーティストや俳優活動と並行する画家としてのプロの技巧だ。放送中、筆(スプーン)は動き続け、リアルタイムで具現化するカンバスの現実が壮観だった。

 その上、アート制作開始前には『Song for 能登!24時間テレビチャリティーライブ』に出演。
トップバッターとしてソロ曲「Paradise」を歌った。同曲がリード曲として収録された2ndアルバム『ARTLESS』のジャケットワークにも自作を採用していたが、「もう止められない今更」というサビの歌詞が、スピード勝負のリアルタイム感をまさに物語っていた。

LDHアーティスト初の帯企画でテレビ史が動いた瞬間

 リアルタイム感はつるべ打ちで、ライブ会場であるぴあアリーナMMから放送会場の国技館まで向かう移動中、車内からライブ配信まで繋げてしまう。CL(LDHコンテンツのデジタルコミュニケーションサービス)のLIVE CASTでMATE(岩田剛典のファンネーム)たちと喜びを共有した。

 さらに初出演が決まったタイミングでの配信では「これはほんとに大きなことなんです」と感慨深く言った。岩田剛典にとっての『24時間テレビ』初出演とはつまり、LDHアーティスト初の帯企画であるばかりか、テレビ史が動いた瞬間だった。その瞬間を記憶する者たちにとって、アート制作が恒例企画になったことは素直に嬉しい。

 そして今、ぼくがこのコラムを書いている瞬間にも、昨年放送に引き続き今年もアート制作に取り組む岩田剛典が、絵筆を動かし続けている。なんて思っていると、深夜のInstagramライブで1万人以上の視聴者に進捗を伝えてくれる。

 半分近くは色づいているだろうか。黙々と制作する岩田を目線位置で捉えた配信カメラが、画面に広がるカンバスを地平線のように写し出す。

左手から始まった一握りの感動が広がる

 岩田本人は常に動き続けるモットーを回遊魚にたとえて「マグローマン・スタイル」と形容しているが、本番組企画は固有のスタイルをフル稼働で実証するロングランに他ならない。徹夜でのポップなリアルタイムアートはどのように完成したのか?

『24時間テレビ48』のために岩田が制作したのは2作品。
一枚はダックスフンドをモチーフに自分の好きなものを描き込んだ。リアルタイムで仕上げたもう一枚は恐竜。「三代目のメンバーの幸せ」を中身いっぱい詰め込んだ。

 31日放送の昼から夕方にかけて開催したチャリティーオークションに出品され、それぞれ420万円と430万円の高値で落札された。

 100万円台から一気に値段が上がる中、清々しい興奮の表情で岩田が「うわぁ」と感嘆の吐息をもらしていた。

 オークション放送の合間には「全日本仮装大賞 24時間テレビチャリティースペシャル」が開催され、岩田も参加。「岩田 剛典(36歳・愛知県)」と画面上に表示されたのにはさすがに笑ってしまう。

 他の出品作を含めた5作品をパネルにはめ込んだアート企画クライマックスでは、かけつけた三代目J SOUL BROTHERSによる、国民的名曲カバー。

 岩田もマイクを手に声を重ね、後景の恐竜絵画の中央下に描かれた「DREAM」の一文字がさりげなく、誇らしげ。

 幕開けではマイクを手にした左手から始まり、色筆を持つ右手に持ち変え、そこからさらに再度マイクを握る左手へ。一握りの感動が強く、強く広がる。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】
コラムニスト/アジア映画配給・宣伝プロデューサー/クラシック音楽監修
俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”として「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。
CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu
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