木村文乃とSnow Manラウール共演ドラマ『愛の、がっこう。』(フジテレビ系、毎週木曜日よる10時放送)主題歌「Spiral feat.Yura」を担当しているのが、話題の大型新人アーティスト・レイニである。


 2025年にメジャーデビューしたばかりのレイニは、徳永英明の次男としても知られ、俳優仕事で活躍の場をさらに広げている。Netflixで配信中のドラマ『グラスハート』では、主人公たちと敵対するユニットのメンバー役で出演している。

 本作はレイニにとって俳優仕事の名刺代わりと言える作品であり、言わば、アーティストと俳優を両立する試金石である。男性俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が解説する。

部屋の先へ想像力が掻き立てられる

 若木未生による原作に惚れ込んだ佐藤健が、自ら企画・共同エグゼクティブプロデュース・主演までこなす話題の配信ドラマ『グラスハート』第1話終盤に気になるワンショットがある。

 強者ぞろいのバンド「TENBLANK」を結成した主人公・藤谷直季(佐藤健)とドラマー・西条朱音(宮崎優)が視察がてら見にきたライブ会場場面。

 ライブ後、TENBLANKと敵対するユニット「OVER CROME」のメンバー・真崎桐哉(菅田将暉)に挨拶しようと楽屋廊下へ。真崎は好戦的な態度であおる。

 そこにOVER CROMEのメンバーである有栖川真広(レイニ)がやってきて「真崎君、厄介事は勘弁してください」と捨て台詞。有栖川は画面下手の部屋に入っていく。

 この廊下場面が、冷笑的で気だるそうな有栖川役をクールに演じる、話題の大型新人アーティスト・レイニの初台詞だ。もうひと台詞くらい聞きたいなぁ。という物足りないくらいでフレームアウトする。
レイニ演じる有栖川が入っていった部屋の先へ不思議と想像力が掻き立てられる。

第1話の余韻から再度登場

 当然、実際の撮影現場ではレイニがフレームアウトした後も、佐藤と菅田の芝居は続行する。画面外の部屋の中でレイニはカットがかかるまでじっと待機していたのだろうか。フレーム外のささいなことまで気になってしまう。

 それがレイニというアーティスト、俳優の魅力だと思う。第1話終盤でもう少し芝居を見ていたいなという余韻に後ろ髪を引かれ、迎えた第2話冒頭、まさにその余韻のままにレイニが再度登場する。

 ここでも同様にバックステージの廊下が場面の舞台となる。真崎が歩く後ろ姿を追うカメラが、壁際(やはり画面下手)にもたれる有栖川を捉える。真崎は廊下の奥へ歩いていき、「気になりますか?」と言った有栖川に寄る。

 カメラが寄りながら、有栖川は下手の方へ視線を動かす。なるほど、今度は彼が視線を動かした先がどこなのかと気になる、このレイニ的スパイラル。

俳優仕事は数えるほどだが…

 そのレイニのアップ後、野音ステージ上に登場したTENBLANKを見つめる客席が写る。つまりバックステージにいた有栖川が動かす視線は、TENBLANKが演奏を始めようとする屋外のステージの方へ向けられていた。

 ドラマ上は単に場面と場面を繋ぐ演技の細部に過ぎない。
でも室内から室外へ単純に視線を動かしただけで、物語を大きく動かす媒介者のような役割をレイニがさりげない演技力で担っている。

 赤楚衛二主演ドラマ『相続探偵』(日本テレビ系、2025年)の主題歌を担当することで今年メジャーデビューしたばかり。その上、俳優仕事は、『今日からヒットマン』(テレビ朝日系、2023年)や『相棒』season23(テレビ朝日系、2024年)など、数えるほどだというのに。どうしてこんな細やかな演技をやってのけられるのか?

俳優活動の名刺がわりになる試金石

 木村拓哉が織田信長を演じた映画『レジェンド&バタフライ』(2023年)では、冒頭場面からレイニが囃し立ての一人としてそれなりに存在感を主張していた。

 相葉雅紀主演ドラマ『今日からヒットマン』第3話同様に、ゲスト出演した『相棒』season23第8話でも初登場場面からクールだけれどどこか柔らかな雰囲気を漂わせた。

 いずれの作品もレイニが音楽界をフィールドとするアーティストという情報がなければ、単に新人俳優がでてきたんだなくらいにしか思わない。

 それがドラマ主題歌で今年メジャーデビューするや、徳永英明の次男であり、どうやらレイニという名前が、徳永が1986年にリリースしたデビューシングル「Rainy Blue」に由来するらしいというパーソナルな情報がどんどん解禁される。

 その上で『グラスハート』はアーティスト役を演じることで、アーティスト活動とうまく両立しながら、俳優活動の名刺がわりになる試金石のような作品だ。

 第1話ではライブ場面で6カット、楽屋廊下場面で1カットのみの登場だったが、第2話冒頭ですぐ印象的な視線移動によってレイニの細やかな演技力がどどんと打ち出された。

 アーティスト活動もめざましい菅田将暉との共演もまたレイニの俳優活動のさらなる助走となるだろう。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】
コラムニスト/アジア映画配給・宣伝プロデューサー/クラシック音楽監修
俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”として「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。
日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu
編集部おすすめ