才能がある人は、小さい頃から違うのだなと痛感しました。弱冠12歳のあっつん(@orihirodo_atsu)は、「岸和田だんじり祭」で街を駆け巡る“だんじり”をミニサイズで再現した“ミニだんじり”を製作。
処女作は9歳の頃からつくり始め、12歳になってようやく完成、2024年12月に公開された3年越しの力作でした。
すごい精巧! ……と思いきや、2025年7月には続けざまに二作目を公開。今度は、製作期間7か月ででき上がりました。
一作目の時点で驚きの完成度だったのに、新作はより緻密に! 見るからに成長が感じられる出来栄えになっています。
なぜ、彼は“ミニだんじり”を作るようになったのか? 製作中はどんなところに苦労したのか? 本人はどういう性格なのか? などなど探るべく、あっつんの父・織広堂さん(@orihirodo)に話を聞きました。
ちなみに、父である織広堂さんも“ミニだんじり”を製作しており、今までにおよそ30作を手掛けてきた名手です。
――息子さんがミニだんじり作りを始めたきっかけを教えてください。
織広堂:もともと手先が器用だったので、一緒にやることでその能力を伸ばそうと思いました。当時、息子はまだ9歳でしたので、自分からやりたいという感じではなく、私が「やってみる?」と聞いたら「やりたい」と答えたという経緯です。
――ミニだんじりは、どのように作るのでしょうか?
織広堂:パソコンを使った精密機械加工の技術で機械を動かし、パーツを作ります。そこから、手作業でそれらを組み立てるという流れです。
――機械を使って市販のプラモデルみたいな状態にしていくということですか?
織広堂:そうですね、キットみたいな状態になるように設計しています。
――へーっ、機械操作の工程から息子さんは関わっていらっしゃるんですね!
織広堂:もともと、子どもでも簡単に組めるような設計を目指していたので、機械の操作さえ覚えれば問題なくできます。
――ミニだんじりに使用してる材料はなんですか?
織広堂:材料は、すべて檜(ヒノキ)です。本物のだんじりは欅(ケヤキ)が使われているのですが、それだとちょっと固すぎるんですね。一方、やわらかい檜は手に入りやすいですし、加工のしやすさも考慮して檜を使っています。
――息子さんが作ったミニだんじりはどのくらいの大きさになりますか?
織広堂:本物のだんじりは高さが4メートルあるのですが、その1/20スケールで高さは20センチほどになります。
――そんなに小さいと製作にかなり手こずると思うのですが、どうでしたか?
織広堂:ミニだんじりを作る方はほかにもたくさんいらっしゃるのですが、うちより倍以上の大きさの高さ40センチ以上で作る人が多いみたいです。手加工で彫刻するとなると、あまりに小さいと細かい部品が作れないという問題がある。でも、私と息子の場合は機械を使うのでとことん細かい作業ができるんですね。その特性を活かし、ちっちゃくても精密な加工が可能となりました。
――パーツ作りの時点で機械を使っているから、1/20スケールでも細かい再現ができるんですね。
織広堂:はい。
――ミニだんじりを作るなかで、息子さんは特にどんなところに苦労していましたか?
織広堂:屋根の下に細かいパーツを組む部分があるんですけど、ここがもっとも苦労した箇所ですね。
飛び出ている一本一本が別パーツになっていて、それを格子状に組んでいくんです。ただ、ここは全部で400パーツぐらいあるんですね。
――およそ400パーツも!
織広堂:一本一本組んで高さを重ねていくという形で、ここにすごく時間がかかります。すべての工程のなか、これだけで製作時間の3~4割ぐらいは取られます。ましてや、初めて作るミニだんじりだったので「このパーツはこう組んで~」という順序を理解するまでにかなり時間がかかりました。
――製作時間の4割を占めるとなると、半分に近いですね……。一作目は9歳から作り始め、完成までに3年以上を要したとのことですが。
織広堂:そうです。実際の製作時間はそれほどでもないのですが、屋根回りが難しすぎるので本人もやる気をなくしてしまい、一度頓挫したんです。「一旦、ちょっと諦めようか」という形で一年休憩しました。
ただ、再開したときは「下手くそなりにでも、とにかく完成させてみよう」と声をかけました。
――できないからやめちゃうのではなく、とりあえず完成を目指すことが大事だったんでしょうね。
織広堂:ただ、二作目のミニだんじりは2025年1月に作り始めて、7月には完成したので、製作期間はギュッと短く7か月でした。
一作目は私が言ったことをただやるだけだったですが、二作目になると構造やどういう順序で作るのかを理解していたようで「これはこうだからこうだよね」と楽しんで組んでいました。プラモデルを作る場合、最初に組むときとニ個目を組むときでは慣れが全然違うじゃないですか? ミニだんじりもそうです。一作目と二作目は構造的には近いので、かなり慣れていました。
織広堂:細かい部分になるんですけど、ボンドをつけるときに量をつけすぎないとか、パーツの貼り合わせの角度を綺麗に合わせるとか、精度を気にして作れるようになりました。僕なんかは「それぐらい、いいんじゃない?」と言うんですが、「いや、ここはちゃんとしたい」というこだわりがすごく出てきましたね。
――ただ完成させるだけでなく、仕上がりも意識したということですね。
織広堂:あと「ここは合っていないからやり直したい」と、こちらも気づいていないところに気づいたり。パーツが多いので僕も忘れていることがあるのですが、逆に「パパ、ここ忘れてる」と指摘されたり。「よくわかってるな」というのはすごい感じました。
――成長を見せたニ作目のミニだんじりについて、特に注目してほしいポイントはどこですか?
織広堂:彫刻の細かさと、屋根下の細かいパーツが並んでいる部分を綺麗に組んだ点ですかね。列を揃えて組むように結構うるさく言いました(笑)。
――たしかに、一作目と比べて整っている印象です。二作目のミニだんじりを完成させたとき、お子さんはどんな様子でしたか?
織広堂:もう、ずっとニヤニヤしながら見ていました(笑)。
――気持ちはわかります(笑)。
織広堂:あと、完成後に「すぐ次を作りたい」「次の次はあれを作りたい」と意欲がすごい出ていました。今終わらせたから満足して……という感じじゃなかったです。達成感というより、「どんどんやりたい」という意欲のほうが強かった。達成感を得たらそれでやる気が失せることはありがちですが、それがなかったからすごく安心しました。
――成長を感じさせるお子さんを、父親としてどう思いますか?
織広堂:期待していた以上に技術や知識、意欲が伸びていますので、我が息子ながら大したものだなと。私が彼ぐらいの年齢のとき、こんなハイレベルのものは作れていなかったので。
――環境もあるでしょうけど、早熟ですよね。
織広堂:そうですね。特に、図面を見る力があるなと感じました。彼が小学1年生のときに『機動戦士ガンダムUC』のユニコーンガンダムマスターグレードのプラモデルを買ったんです。その際、図面を見ながら「ここはこうで、こうなっているんだな」と組み立てていたんです。それを見て、「この歳で図面を見て立体をイメージできる力があるのか!?」と驚いたこともあります。
織広堂:はい。私は大阪府岸和田市出身で、だんじりが盛んな土地に生まれ育ちました。中学のときに美術の授業で「ミニだんじりを作る」という課題を出され、それをきっかけにミニだんじりを作るようになったんです。その後、何台も作るようになって現在に至るという感じです。
――やっぱり、息子さんもだんじりには興味を抱いているのでしょうか?
織広堂:そうですね。生まれたときからだんじり祭りには参加していて、私の影響で小さい頃から「カッコいい」という印象を持っていたと思います。
――じゃあ、「ミニだんじりを作ってみよう!」というスイッチは入りやすい環境だったんですね。
――息子さんはすでに3作目、4作目へのモチベーションを持っているとのことですが、ミニだんじり以外に作りたいものはありそうですか?
織広堂:「レゴを作りたい」と言っています。
その経験が楽しかったみたいで、「もっと難しいレゴを作りたい」と言っています。今はかなり高いレベルのレゴを求めているのですが、値段が5万円もするんです(苦笑)。
――それは、お父さんとしては悩みどころですね……(笑)。でも、そうやってクリエイティビティを伸ばしていきたいというか。
織広堂:はい。だから、私としても投資みたいな感覚です(笑)。
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だんじり祭りに参加する曳き手ばりにストイックな姿勢で臨んでいた、弱冠12歳によるミニだんじり作り。現時点でこのスキルと集中力なのですから、将来が楽しみすぎます。
これからも、親子でだんじりの魅力を発信し続けてください!
<取材・文/寺西ジャジューカ>
でき上がるまでの過程や完成作などをXで公開し、注目を集めています。
処女作は9歳の頃からつくり始め、12歳になってようやく完成、2024年12月に公開された3年越しの力作でした。
すごい精巧! ……と思いきや、2025年7月には続けざまに二作目を公開。今度は、製作期間7か月ででき上がりました。
一作目もすごかったのにニ作目はもっとすごい
こちらは実物の「大手町だんじり」。あっつんと織広堂さんも祭りに参加している
機械を使うから1/20スケールが可能に
実物となる上町のだんじり。ミニだんじりはこの1/20スケール
――息子さんがミニだんじり作りを始めたきっかけを教えてください。
織広堂:もともと手先が器用だったので、一緒にやることでその能力を伸ばそうと思いました。当時、息子はまだ9歳でしたので、自分からやりたいという感じではなく、私が「やってみる?」と聞いたら「やりたい」と答えたという経緯です。
織広堂さんが作った「堺町だんじり」1/20モデル
織広堂:パソコンを使った精密機械加工の技術で機械を動かし、パーツを作ります。そこから、手作業でそれらを組み立てるという流れです。
――機械を使って市販のプラモデルみたいな状態にしていくということですか?
織広堂:そうですね、キットみたいな状態になるように設計しています。
設計は私が行ったので、そのデータを使って子どもに機械操作してもらい、パーツを作って組み立てています。
――へーっ、機械操作の工程から息子さんは関わっていらっしゃるんですね!
織広堂:もともと、子どもでも簡単に組めるような設計を目指していたので、機械の操作さえ覚えれば問題なくできます。
あまりにも細かい一つひとつのパーツ。機械でなければとても作れそうにない
織広堂:材料は、すべて檜(ヒノキ)です。本物のだんじりは欅(ケヤキ)が使われているのですが、それだとちょっと固すぎるんですね。一方、やわらかい檜は手に入りやすいですし、加工のしやすさも考慮して檜を使っています。
――息子さんが作ったミニだんじりはどのくらいの大きさになりますか?
織広堂:本物のだんじりは高さが4メートルあるのですが、その1/20スケールで高さは20センチほどになります。
――そんなに小さいと製作にかなり手こずると思うのですが、どうでしたか?
織広堂:ミニだんじりを作る方はほかにもたくさんいらっしゃるのですが、うちより倍以上の大きさの高さ40センチ以上で作る人が多いみたいです。手加工で彫刻するとなると、あまりに小さいと細かい部品が作れないという問題がある。でも、私と息子の場合は機械を使うのでとことん細かい作業ができるんですね。その特性を活かし、ちっちゃくても精密な加工が可能となりました。
――パーツ作りの時点で機械を使っているから、1/20スケールでも細かい再現ができるんですね。
織広堂:はい。
作業性能も含め、一番しっくり来たのがこのサイズでした。
製作を一回諦めて休憩期間を一年間設けた
小さいは正義
織広堂:屋根の下に細かいパーツを組む部分があるんですけど、ここがもっとも苦労した箇所ですね。
特に難しかったという屋根の下の部分
――およそ400パーツも!
織広堂:一本一本組んで高さを重ねていくという形で、ここにすごく時間がかかります。すべての工程のなか、これだけで製作時間の3~4割ぐらいは取られます。ましてや、初めて作るミニだんじりだったので「このパーツはこう組んで~」という順序を理解するまでにかなり時間がかかりました。
そりゃ難しいでしょう
織広堂:そうです。実際の製作時間はそれほどでもないのですが、屋根回りが難しすぎるので本人もやる気をなくしてしまい、一度頓挫したんです。「一旦、ちょっと諦めようか」という形で一年休憩しました。
ただ、再開したときは「下手くそなりにでも、とにかく完成させてみよう」と声をかけました。
一個完成すれば、また次の意欲も出てくるかなと思っていたので。
――できないからやめちゃうのではなく、とりあえず完成を目指すことが大事だったんでしょうね。
織広堂:ただ、二作目のミニだんじりは2025年1月に作り始めて、7月には完成したので、製作期間はギュッと短く7か月でした。
一作目は私が言ったことをただやるだけだったですが、二作目になると構造やどういう順序で作るのかを理解していたようで「これはこうだからこうだよね」と楽しんで組んでいました。プラモデルを作る場合、最初に組むときとニ個目を組むときでは慣れが全然違うじゃないですか? ミニだんじりもそうです。一作目と二作目は構造的には近いので、かなり慣れていました。
二作目のミニだんじり製作で構造を完全に理解
――一作目とニ作目を見比べると、素人目でもあきらかな成長を感じます。父親目線で見ると、どんなところに成長を感じますか?織広堂:細かい部分になるんですけど、ボンドをつけるときに量をつけすぎないとか、パーツの貼り合わせの角度を綺麗に合わせるとか、精度を気にして作れるようになりました。僕なんかは「それぐらい、いいんじゃない?」と言うんですが、「いや、ここはちゃんとしたい」というこだわりがすごく出てきましたね。
仕上がりを意識しながら作るあっつん
織広堂:あと「ここは合っていないからやり直したい」と、こちらも気づいていないところに気づいたり。パーツが多いので僕も忘れていることがあるのですが、逆に「パパ、ここ忘れてる」と指摘されたり。「よくわかってるな」というのはすごい感じました。
――成長を見せたニ作目のミニだんじりについて、特に注目してほしいポイントはどこですか?
織広堂:彫刻の細かさと、屋根下の細かいパーツが並んでいる部分を綺麗に組んだ点ですかね。列を揃えて組むように結構うるさく言いました(笑)。
注目せざるを得ない密度だ
織広堂:もう、ずっとニヤニヤしながら見ていました(笑)。
でき上がりを見てニヤついているのではなく、でき上がりのチェック中です
織広堂:あと、完成後に「すぐ次を作りたい」「次の次はあれを作りたい」と意欲がすごい出ていました。今終わらせたから満足して……という感じじゃなかったです。達成感というより、「どんどんやりたい」という意欲のほうが強かった。達成感を得たらそれでやる気が失せることはありがちですが、それがなかったからすごく安心しました。
――成長を感じさせるお子さんを、父親としてどう思いますか?
織広堂:期待していた以上に技術や知識、意欲が伸びていますので、我が息子ながら大したものだなと。私が彼ぐらいの年齢のとき、こんなハイレベルのものは作れていなかったので。
――環境もあるでしょうけど、早熟ですよね。
織広堂:そうですね。特に、図面を見る力があるなと感じました。彼が小学1年生のときに『機動戦士ガンダムUC』のユニコーンガンダムマスターグレードのプラモデルを買ったんです。その際、図面を見ながら「ここはこうで、こうなっているんだな」と組み立てていたんです。それを見て、「この歳で図面を見て立体をイメージできる力があるのか!?」と驚いたこともあります。
生まれたときからだんじり祭りに参加
――織広堂さんも昔からミニだんじりを作っているんですよね?織広堂:はい。私は大阪府岸和田市出身で、だんじりが盛んな土地に生まれ育ちました。中学のときに美術の授業で「ミニだんじりを作る」という課題を出され、それをきっかけにミニだんじりを作るようになったんです。その後、何台も作るようになって現在に至るという感じです。
――やっぱり、息子さんもだんじりには興味を抱いているのでしょうか?
織広堂:そうですね。生まれたときからだんじり祭りには参加していて、私の影響で小さい頃から「カッコいい」という印象を持っていたと思います。
――じゃあ、「ミニだんじりを作ってみよう!」というスイッチは入りやすい環境だったんですね。
「5万円のレゴを作りたい」というモチベーションも
2024年の岸和田祭に参加中のあっつん
織広堂:「レゴを作りたい」と言っています。
実は手先の器用さを伸ばすため、小さい頃から誕生日にレゴを買っていました。でも、レベルの低いものでは満足しなくて。だから、小3のときに大人向けのレゴを買ってあげたんです。で、それも簡単に組み上げてしまいました。
その経験が楽しかったみたいで、「もっと難しいレゴを作りたい」と言っています。今はかなり高いレベルのレゴを求めているのですが、値段が5万円もするんです(苦笑)。
――それは、お父さんとしては悩みどころですね……(笑)。でも、そうやってクリエイティビティを伸ばしていきたいというか。
織広堂:はい。だから、私としても投資みたいな感覚です(笑)。
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だんじり祭りに参加する曳き手ばりにストイックな姿勢で臨んでいた、弱冠12歳によるミニだんじり作り。現時点でこのスキルと集中力なのですから、将来が楽しみすぎます。
これからも、親子でだんじりの魅力を発信し続けてください!
<取材・文/寺西ジャジューカ>
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