STARTO ENTERTAINMENTのなかで、いまもっとも「SMAP」、「嵐」に次いで国民的アイドルグループに近付いているのは「Snow Man」だと言われています。

 アイドル業界では現在もCDセールスが人気の指標のひとつ。
Snow Manは2024年2月発売のシングル「LOVE TRIGGER/We’ll go together」が初週売上119.3万枚(オリコン調べ、以下同)、2024年7月発売のシングル「BREAKOUT/君は僕のもの」が初週売上106.7万枚と、2作連続で初週ミリオン達成。

 今年7月発売の最新シングルは「SERIOUS」の初週売上は88.3万枚でしたが、飛び抜けた人気の高さを誇っているのは言うまでもないでしょう。

 そんなSnow Manはグループ活動だけでなくメンバー個々の活動も活発ですが、今年が飛躍の年となっているのが、東京都出身の2003年6月27日生まれ、現在22歳のラウールさんではないでしょうか。

ミラノ・パリコレへ挑戦したドキュメンタリー

「歌舞伎町ホストからパリコレまで」22歳アイドルが挑む異色の...の画像はこちら >>
 ラウールさんは2015年にジャニーズ事務所(当時)に入所。2019年にSnow Manに加入し、翌2020年にCDデビューしています。

 Snow Manの楽曲でセンターポジションを担うことが多いラウールさんは、ダンススキルが高く評価されていますが、彼がモデルとしても大きな注目を集めたのは2年前。フランスのモデル事務所と契約し、それ以来パリコレクションなどのランウェイを何度も歩いているのです。

 9月13日からAmazon Prime Videoで独占配信されている『RAUL:ON THE RUNWAY』が話題沸騰中。こちらは世界最高のランウェイに立ちたいという衝動に突き動かされたラウールさんが、ミラノ・パリコレクションへ挑戦した1年半を記録したドキュメンタリー作品となっています。

 念のためお伝えしておきますが、一握りの選ばれたモデルしか立てないワールドワイドな舞台ですから、日本のトップアイドル事務所に所属しているからと言えど、コネでねじ込めるようなことはありません。

 ミラノ・パリでモデルデビューするために、彼は単身乗り込み、現地に長期滞在。履歴書片手にオーディションを受ける日々を送り、何十ものオーディションに落選。ラウールさん自身、そこまで自己を否定されるような挫折は人生で初めてだったと語っています。


モデルとして世界最高峰の舞台に挑んだ深い理由

「歌舞伎町ホストからパリコレまで」22歳アイドルが挑む異色のキャリア―― 世界トップの舞台に挑戦する“驚きの理由”とは?
ラウール氏とジョルジオ・アルマーニ氏 画像:ジョルジオ アルマーニ ジャパン 株式会社 プレスリリースより(PRTIMES)
 そうして自力で掴み取った「パリコレモデル」の肩書きですが、ラウールさんは個人の飛躍のためだけに挑戦したわけではなく、自分の世界での活躍をきっかけに、より多くの人々にSnow Manの存在・活動を知ってもらうことが目的だったそうです。

 昨年8月発売の「日経エンタテインメント!」のインタビューでは、ラウールさんは歌舞伎、クラシック音楽、バレエ、オペラといった伝統芸能から大衆が離れて集客に苦労しているという話しの流れで、次のように語っていました。

《でも、そういう道を極めていく表現が尻すぼみになっていくのは大問題だと僕は感じています。そしてそれは、僕がランウェイモデルに挑戦する動機にもつながっているんです。大衆と対峙するアイドルという職業に就いている僕がパリコレに出れば、これまで全く見てなかった方がハイブランドのファッションショーを見るかもしれないじゃないですか。》

 ラウールさんはSnow Manのためだけでなく、エンタメ業界全体のために自身のリソースを割いているのでしょう。

リアルかつ自然な演技は往年の木村拓哉を彷彿

ラウールさんは今夏、俳優としても大きな注目を集めました。

 これまで2021年公開の『ハニーレモンソーダ』や、昨年公開の『赤羽骨子のボディガード』など主演映画の出演はありましたが、今年7月期『愛の、がっこう。』(フジテレビ系)でGP帯連続ドラマに初出演し、役者としての評価が跳ね上がったのです。

「歌舞伎町ホストからパリコレまで」22歳アイドルが挑む異色のキャリア―― 世界トップの舞台に挑戦する“驚きの理由”とは?
画像:TVerより
 高校教師と売れっ子ホストの純愛を描いたこのドラマは、木村文乃さんが主人公の高校教師・小川愛実を演じ、ラウールさんはそのお相手役となるホスト・カヲルを好演。主演は木村さんですが、ラウールさんも主役級のポジションなので、実質はダブル主演に近い作品でした。

『愛の、がっこう。』において特筆すべきは、ラウールさんの“等身大の若者”演技の上手さ。

 このドラマでのラウールさんには大別すると、20代前半の一若者としての演技と歌舞伎町のホストとしての演技、この2つが求められていたのですが、前者がまず秀逸。


 カヲルは人なつっこく基本ポジティブなのですが、その明るさは毒親に育てられて愛を知らないというバックボーンも関係しているため、少々ややこしいのですが“影のある陽キャ”というタイプ。その難しい役柄を繊細な表情の変化などで見事に演じていました。

“若者感”がとてもナチュラルという意味では、事務所の大先輩である木村拓哉さんの20代当時に通ずるものがあるかもしれません。時代が違いますので演じている若者の性質は違うものの、その時代の20代を自然に演じているため、往年のキムタクと共通点があるのです。

生々しいほどに“歌舞伎町のホスト”を体現

 そして後者の歌舞伎町のホストとしての演技も、良い意味で“ホスト感”が非常に生々しい。

筆者は現役ホストもモデルを務めていた『メンズナックル』というファッション誌にライターとして長年携わっていたため、何十人もの売れっ子ホストと面識がありますが、その視点から見てもかなりリアルに“歌舞伎町のホスト”を体現していたと感じたのです。

 ドラマ放送開始前、今年6月に掲載された「Real Sound」のインタビューで、ラウールさんはその秘密について次のように語っています。

《今回、助監督の方が何度も通って、実際のホストクラブを取材してくれたんです。その記録を読むうちに、これは100%理解できる職業とは言い切れないけど、どこかに誰かを救いたい、癒したいという気持ちもあるのかなと思えるようになって。カヲルにもどこかピュアな部分があるんじゃないかと感じるようになりました。》

《カヲルは逆で、“愛を知らない”人間なんです。恋愛感情を演じるのは得意だけど、それが本物になることはほとんどない。今回、実際にホストの方々に取材した際、「愛って何ですか?」って聞いたら、みんな「わからない」って答えていて、なんかすごく腑に落ちました。
彼らにとって“愛”はビジネスの中にあって、本物とフェイクの境界線が曖昧なんですよね。》

 役者・ラウールはこのように、ホストという職業自体や実際にホストをしている人々の心理の“解像度”を上げていくことで、あのリアルな“ホスト感”を再現してみせたのかもしれません。

ラウールのポテンシャルはまだまだ計り知れない

『愛の、がっこう。』でラウールさんの俳優としての評価は爆上がりしたはず。

「歌舞伎町ホストからパリコレまで」22歳アイドルが挑む異色のキャリア―― 世界トップの舞台に挑戦する“驚きの理由”とは?
画像:ジョルジオ アルマーニ ジャパン 株式会社 プレスリリースより(PRTIMES)
 国民的アイドルグループへと駆け上がるSnow Manメンバーとして、パリやミラノのランウェイを歩く世界最高峰のモデルとして、そしてリアルかつ自然体な演技ができる俳優として――ラウールさんのポテンシャルはまだまだ計り知れません。

<文/堺屋大地>

【堺屋大地】
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。『日刊SPA!』(扶桑社)で恋愛コラム連載、『SmartFLASH』(光文社)でドラマコラム連載、『コクハク』(日刊現代)で芸能コラム連載。そのほか『文春オンライン』(文藝春秋)、『現代ビジネス』(講談社)、『集英社オンライン』(集英社)、『週刊女性PRIME』(主婦と生活社)などにコラム寄稿。LINE公式のチャット相談サービスにて、計1万件以上の恋愛相談を受けている。公式SNS(X)は @SakaiyaDaichi
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