今回の世界陸上は例年とは大きく様変わりし、女優の今田美桜さんがメインキャスターに、そして男性ボーイズグループ&TEAMのKさんが応援サポーターを務めたことも話題になりました。そんななか、俳優の織田裕二さんはスペシャルアンバサダーとして番組に君臨することに。
“世界陸上=織田裕二”の軌跡と象徴性
世界陸上における織田裕二さんといえば、1997年のアテネ大会から2022年のユージーン大会までの25年間、中井美穂さんとともに世界陸上のメインキャスターを務めました。メインキャスターとしては2022年で卒業しましたが、東京2025 世界陸上ではスペシャルアンバサダーという立場にいました。また、織田さんが歌う名曲「All my treasures」は世界陸上のテーマソングとしても有名です。もはや“世界陸上=織田裕二”と連想するほど、日本における世界陸上の象徴となっている織田さん。2007年大阪大会で予選敗退した為末大選手に向けて言った「何やってんのよ、タメ」や、同じく2007年大阪大会での「地球に生まれてよかったー!」などの名言、さらには芸人の山本高広さんがモノマネしたことでさらに話題になったことも知られています。
こうした実績から、日本陸上競技連盟から中井さんとともに連盟特別賞を授与された織田さん。2022年でメインキャスターの座は退き、後任にその席を譲ることで世代交代をすると予想されてきました。
しかし、東京2025 世界陸上の開催にあたっては東京開催ということもあり、TBSや日本陸上連盟としても「織田さんなしで世界陸上を中継するのは難しい」と判断したのでしょう。今回のスペシャルアンバサダーという立場は、世代交代を念頭に置きつつも、「世界陸上の織田裕二を見たい」という世間の期待や番組制作側の強い意向が反映された形になりました。
57歳の織田裕二、若手との“理想的な共演”
1997年のアテネ大会時には29歳だった織田さんも、現在は57歳。メインキャスターの今田美桜さんと応援サポーターのKさんはともに1997年生まれで今年28歳です。年齢差やキャリアで言えば若手社員と重役ほどの開きがあり、一般社会や企業ならば年長者が「老害」と言われてしまうこともあるポジションです。しかし、今回の東京2025 世界陸上ではこの3人が絶妙に融合。そのカギを握っていたのは織田さんだったようです。

名門陸上部出身のKさんは当初、レジェンド織田さんに緊張している様子もうかがえました。しかし、KさんがVTRで選手と同じハードルを跳んだり、陸上に関する深い知識を披露したりすると、織田さんは真剣かつ温かな眼差しを送っていました。陸上を愛する織田さんからのKさんへのリスペクトの気持ちが画面越しにも伝わってきました。
“父と娘と息子”のような関係性に視聴者も共感
これは一見すると当然のことに見えますが、編集できない生放送の中で不用意な発言や失言がないこと、さらに今田さんとKさんのファンが「違和感を覚える言動」がないことは、制作側にとって非常に重要な点です。また、初めてのメインキャスターとして緊張しながらも一生懸命にコメントをする今田さんや、選手と同じように悔しがったり熱くなったりするKさんに対し、織田さんはまるで父親のように優しく温かい視線を送っていたことも印象的。日によっては3人が同じ色の服を着用しリンクコーデを見せる場面もあり、「娘と息子と父親みたい!」という感想も見かけられました。
織田さんの先輩風を吹かせず、偉そうにしない態度。今田さん、Kさんのことを「世界陸上を応援する」という同じ目的を持った仲間として対等に扱う雰囲気。
織田裕二、ついに本当の“ラストラン”
この3人の組み合わせはネットでも高評価を得ており、「イケオジ、美女、イケメンで見やすい」、「とにかく陸上に熱いレジェンド・織田裕二さん、視聴者と同じ目線の今田美桜さん、陸上経験者で選手目線と知識で応援するKさん。このバランスがいい!」といった意見が多く挙がりました。
日本選手の出場前には、織田さんと今田さん、Kさんが一緒に祈るようにスタジアムを見守ったり、記録や快挙に歓喜する場面が多く見られ、心が温まり、癒されたという視聴者も多かった様子です。
陸上愛と選手への熱い応援姿勢で、長年多くの人を魅了してきた織田さん。もはや「世界陸上を応援する織田裕二」という存在自体がコンテンツとして成立しているという、稀有な存在であることが改めて感じられました。
映画やドラマのブームはもちろんのこと、世界陸上でも名言を連発し、長年芸能界で活躍する織田裕二さんの魅力が存分に発揮された「東京2025 世界陸上」となりました。
<文/エタノール純子>
【エタノール純子】
編集プロダクション勤務を経てフリーライターに。エンタメ、女性にまつわる問題、育児などをテーマに、 各Webサイトで執筆中