『19番目のカルテ』40代、松本潤の深み
1人目は、『19番目のカルテ』(TBS系)で主人公・徳重晃を演じた松本潤。どの診療科でも診断が出来ない患者を診る総合診療医の徳重は、つかみどころがないように見えるが、患者の心の奥底を鋭い観察眼と洞察力で見極め、適切な治療に導いていく。松本は「静」の演技ながら、穏やかなその目で、何があっても動じず患者と向き合い続ける徳重に説得力を持たせた。
人気シリーズ『99.9-刑事専門弁護士』以来、7年ぶりの日曜劇場主演となったが、40代となった松本ならではの深みを見せ、今作も続編が期待出来る良作となった。
『誘拐の日』斎藤工のゾッとする二面性

新庄は実の娘を溺愛するだけでなく、誘拐した天才少女とも本当の父娘のような深い絆で結ばれ、彼女のために命を張って戦うシーンには胸を打たれた。
一方ラストシーンでは、何かを思い出し取り憑かれたように数式を書きなぐり続ける新庄の姿に、ゾッとした視聴者も多いだろう。斎藤が見せる恐ろしい「人間の二面性」は圧巻だった。
『しあわせな結婚』阿部サダヲが“色男”に

ネルラには過去の事件の殺人容疑がかけられており、幸太郎は弁護士としての正義感と愛する妻への想いという相反する感情に揺れながらも、どんな彼女でも受け入れる深い愛情を見せた。
さらに、ネルラの父、叔父、弟との奇妙な半同居生活は苦手としつつ、家族として彼らを救うべく奔走。
『DOPE 麻薬取締部特捜課』中村倫也の痛々しい狂気

妊娠中の妻を「ドーパー」により奪われた過去がある陣内は、彼らに対し冷酷無比だ。その憎しみからくる残酷さで痛々しいほど狂気を纏った中村に、何度も胸がえぐられる思いだった。
一方で、新人の才木や特殊捜査課の仲間達には、不器用ながら人間味ある優しさを垣間見せる。彼が持つ異能力は「超視力」だけに、中村の「ドーパー」に向ける冷徹な眼光と、仲間や妻に見せる柔和な眼差しのギャップにやられた視聴者も続出した。
ブレイク直前!『愛の、がっこう。』中島歩

今年前期のNHK朝ドラ『あんぱん』で、主人公の最初の夫・若松次郎を演じ、大人の佇まいと包容力ある優しい演技が話題となった中島。その正反対にいるような人物である川原は、はじめは愛実に不誠実な振る舞いをとるが、徐々に愛実に執着し、ストーカー婚約者となる。
中島の独自なテンポの口調も、穏やかな次郎と切羽詰まったような川原ではまるで別人だ。
その奇人ぶりに、作中での呼び名「川原なにがし」として多くの視聴者にキモがられるも、改心した川原の漢気に、最後は愛されキャラになるまでに至った。
それは中島の確かな技量によるものだろう。次郎と「川原なにがし」によって、中島は本格ブレイク目前だ。
No.1俳優を決めるなら、やっぱりこの人!
このほか、中島に続くネクストブレイク候補として、BL作品『40までにしたい10のこと』(テレビ東京系)で、年下男子として主人公との恋を引っ張った庄司浩平、『こんばんは、朝山家です。』(テレビ朝日系)で、自閉症を持つ少年に見事に憑依した嶋田哲太が挙げられる。そして、2025年の夏ドラマで演技が光った俳優No.1を決めるとするならば、やはりパブリックイメージを覆し、中年男性の葛藤と色気を華麗に演じた阿部サダヲに一票を投じたい。
<文/こじらぶ>
【こじらぶ】
フリーライター・コラムニスト。言語学修士。男性&女性アイドル、地下、ローカルなど様々な現場を経験。ドラマ、スポーツ、エンタメ全般から時事ネタまで。俳優、アイドルなどのインタビューも。X: @kojirabu0419