あなたはパートナーがつまらないダジャレを言った際に、付き合って笑ってあげる派ですか? それともスルー派ですか?

今回は、夫のダジャレ好きに辟易している女性のエピソードをご紹介しましょう。

ダジャレを連発する夫に、正直ウンザリ

田辺弥生さん(仮名・30歳)は、翔太さん(仮名・36歳)と結婚して3年目になります。

「なぜか1年くらい前から翔太がダジャレにハマって連発するようになってしまって。
正直言ってかなりウンザリしているんですよ」

結婚記念日のディナーでホテルの最上階にある夜景の綺麗なレストランでも、翔太さんはステーキが出たときに「このステーキ、ステキだね!」とベタすぎるつまらないダジャレを言い、甘い雰囲気を台無しにしました。

「他にも、私が体調を崩して寝込んでいたら『弥生がネコ(猫)むと、部屋がさみしイヌ(犬)』なんて分かりにくいダジャレを浴びせてきて……よけいに熱が上がっちゃうかと思いましたよ。いつも内心『はぁ? 今それ言う?』って感じなんですよね」

大好きな祖母を亡くして…悲しむ私に「まさかのダジャレ」を言っ...の画像はこちら >>
とにかく弥生さんは、翔太さんのダジャレで笑ったことが一度もありませんでした。

祖母の急逝で、放心状態になってしまった

「そんなある日、私の祖母が他界してしまったんですよ。子どもの頃からすごく可愛がってくれて、両親が共働きだった私は祖母と過ごす時間が大好きで、よく一緒に縁側でおやつを食べたり、庭の手入れを手伝ったりしたんですよね」

大好きな祖母を亡くして…悲しむ私に「まさかのダジャレ」を言った夫。その後、夫婦はどうなった?
画像はイメージです(以下同)
そして、お母さんから「おばあちゃんが倒れた」と電話を受け、急いで新幹線に飛び乗り、胸が締めつけられる思いで、ただただ祈りながら病院に向かったそう。

「ですが祖母の最期には間に合わなかったんですよね。それが悔やんでも悔やみきれなくて。私が大人になってもことあるごとに心配してくれた、あの大好きなおばあちゃんが……。とにかくショックで、悲しくてたまらず、お葬式の間じゅう、ずっと嗚咽が止まらなくて」

お葬式の帰り道、悲しみに打ちひしがれた弥生さんが放心状態でとぼとぼと歩いていると、横を歩く翔太さんもずっと無言だったそう。

「翔太もさすがにこんな時は空気を読んでくれるんだなと、ちょっと意外に思いました。そして家に着き玄関に入った途端に翔太に抱きしめられて。きっと励ましてくれているんだなと素直に嬉しく思ったのですが……」

さて2人の間に何が起こったのでしょう?

辛い私に、まさかのダジャレを

「翔太が私の耳元で『会えないけど、おばあちゃんは“いまスーン”だよ』って囁いて。えっ? “います”と“soon”をかけ合わせたの? 今すぐ、そばにいるよってこと? と。なんか意味も英語もおかしいですよね。


でもそのときは、おばあちゃんが今まさに隣にいてくれているみたいな気がして、温かい気持ちになったんです。それと同時に、“いまスーン”という間抜けな響きに吹き出してしまったんですよ」

大好きな祖母を亡くして…悲しむ私に「まさかのダジャレ」を言った夫。その後、夫婦はどうなった?
仲の良い夫婦
初めて翔太さんのダジャレで笑った弥生さん。しかも、落ち込んでいた気持ちを前向きにしてもらえて、少し感動してしまいました。

「翔太のダジャレは面白くないし、早く飽きてやめてくれないかな? とずっとイライラしていたんですが、まさかそんなダジャレに救われる日が来るなんて

そのときに笑えたことでなんだか気持ちを切り替えられて、『おばあちゃんは見えないけど、側にいてくれているはず』と心が若干軽くなったんですよね」

夫のダジャレに少しだけ乗ってあげるように

そうして弥生さんは、翔太さんのダジャレに寛容になりました。

「それ以来、2人でおばあちゃんの思い出話をする度に『おばあちゃん、いまスーン?』と翔太に聞かれたら、私が『あ、ちょいレイターだって! いまお団子食べてるから』などとその時々の気分で返しては、おばあちゃんの笑顔を思い浮かべているんですよ」

そのようにして明るくおばあちゃんの話ができるようになったことで、弥生さんの悲しみは癒されていったそう。

「翔太も私がダジャレに乗ってくるようになったことが嬉しいらしく、さらに連発してくるようになってしまいました。『やっぱり寒いしつまらないな』と思うときもあるんですが……あの“いまスーン”で笑った夜を思い出すと、不思議と許せちゃうんですよね」と微笑む弥生さんなのでした。

<文・イラスト/鈴木詩子>

【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。
Twitter:@skippop
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