「165キロを出した」問題に抗議──局側が異例の謝罪
同番組では「時速165キロを出したことがないのは誰でしょう?」という問題に対し、「大谷翔平」「佐々木朗希」「伊良部秀輝」「広末涼子」という4択が表示されていました。正解は「伊良部秀輝」とされ、広末涼子については、「事故を起こした際に時速165キロを出していたと報じられている」という解説が加えられました。
これに対し、広末涼子の事務所は10月6日付で公式サイトに抗議文を掲載しました。TBSは10月9日付で番組公式サイトに謝罪コメントを掲載し、全面的に非を認めて謝罪しました。
バラエティ番組の一つの問題に対して放送局がタレントに謝罪するという、非常に珍しい事態となった今回の騒動ですが、TBSと広末涼子の事務所は和解した模様です。
倫理観が問われるバラエティ──SNS上の炎上と業界の反応

なぜこのような問題が発生したのか。他局でバラエティ番組を制作するスタッフが次のように語りました。
「『オールスター後夜祭』は、歴史ある『オールスター感謝祭』の派生番組であるものの、別物です。演出・プロデューサーは、『水曜日のダウンタウン』の演出を務める藤井健太郎氏で、クイズという体で無茶をするスタイルの番組です。
今回の放送でも、『コンピューター宇宙』のコンビ解散をクイズ形式で発表するなど、挑戦的な内容が目立ちました。クイズにおいては、騒動を起こしたタレントや著名人を扱うことが多く、いつか問題を起こしそうな番組として知られていました。
今回のケースでは、広末さんが時速165キロを出したという公式発表がなかったこと、捜査が継続中であったことが大きな問題となりました。」
「ギリギリを攻める」藤井健太郎氏の演出スタイル

どの番組でも、悪ノリと笑いのギリギリを攻める企画が特徴であり、しばしば放送後に炎上騒動を巻き起こすクリエイターです。それでも、その挑戦的な姿勢ゆえに一部の視聴者からは高い支持を集めています。しかし、今回の件は悪ノリが過ぎた結果、事務所の抗議を受ける事態となった模様です。
「通常、バラエティ番組では故人や事故・事件の被害者、宗教などをネタにすることを避けます。イジメ、過剰な下ネタ、セクハラ・パワハラについても同様です。また、放送禁止用語や食品を粗末に扱うことも規制されています。これらの規制の範囲内で藤井さんはギリギリを狙った演出を行い、『水曜日のダウンタウン』や『オールスター後夜祭』などで笑いを取ってきました。
しかし、今回は悪ノリがすぎて、番組を見ていなかった人たちからもSNSで目をつけられてしまいました。藤井さんを名指しで批判する声もあり、とばっちりで『水曜日のダウンタウン』の制作に影響があるかもしれません」(スポーツ紙記者)
番組制作への影響と、視聴者の「監視」の目

「『水曜日のダウンタウン』の制作陣は、何度か炎上騒動を起こしています。それだけに、批判を受けた後の調整がうまいので影響はないと思います。それに、藤井さんを応援するコメントも多く、ファンから変わらぬ支持を受けているので、視聴者離れはないでしょう。
ただ、今後は重箱の隅をつつく視聴者が増える可能性が高く、制作しづらくなると予想されます。
今回、非常に珍しい例である女優がクイズ番組の内容に抗議した騒動が起きましたが、他の人気番組に深刻な影響を及ぼすことがないことを祈りたいものです。
<文/ゆるま小林>
【ゆるま 小林】
某テレビ局でバラエティー番組、情報番組などを制作。退社後、フリーランスの編集・ライターに転身し、ネットニュースなどでテレビや芸能人に関するコラムを執筆