2024年5月から2025年7月まで、中沢さんの四季を追った本作は、春夏秋冬を歩く姿はもちろんのこと、かけがえのない役柄との出逢いによって変化する顔つき、佇まい、心象風景など、成長の軌跡とも言える内容に。
大きな作品と出会い、自身でも「成長を確認した一年」だったそうですが、反面変わりたくないものもあるとか。期待の若手俳優に聞きました。
ファースト写真集は「宝物みたいな一冊」に

中沢元紀(以下、中沢):写真集を出せると思っていなかったので、不思議な感じがしています。ありがたいことに求めてくださる方がたくさんいてうれしいですし、僕にとっても宝物みたいな一冊になりました。
――誌面には肉体美と言いますか、割れた腹筋が写っているカットもありますが、普段から鍛えているのでしょうか?
中沢:もともと運動することが好きなので普段から筋トレもしていますし、ランニングもしているんです。俳優は体が資本なので体作りは大事だなということでずっと続けてきたたまものでもあり、「いつでも脱げますよ」という感じです(笑)。でも、撮影前にパンプアップはしています。

中沢:ありますね。自分で見ても衝撃でした。まず顔が全然違いました。
表現が合っているかわからないですが、洗練されていっている感じというか、大きな作品に携わらせてもらっている感じというか、自分で言うのも何ですけれど、もまれながらも頑張っているというか。そういう雰囲気が表情からも出ていると思います。
朝ドラ『あんぱん』では役作りで8キロ増量

中沢:主に『あんぱん』を撮影をする前と後でロングインタビューがあったので、役者としてのお芝居のことだったり、現場でのありかただったりとか、この一年間で変わった感覚が自分の中にあるんです。
第一線で活躍されている先輩たちとお芝居をしていく中で、自分の中でも役者として気持ちの面で変わっていくことが大きかったので、そこも読み応えがあると思いますし、そういう道のりとしての意味の“ルート”を読んでくださる方に感じていただけるのではと思っています。
――『あんぱん』の柳井千尋役として大詰めというか、大事な時期のインタビューだったわけですね。
中沢:そうですね。冬の撮影はたぶん『あんぱん』撮影も最後の頃で、兄貴(柳井嵩)と二人で会話するシーンの数週間くらい前のインタビューだったと思います。秋の撮影が千尋の初期で、冬が後半。体も大きくしきっていて、千尋が戦争に行く数週間前の撮影でした。筋トレして、8キロくらい増やしたんですよ。
柔道をやっていた役でもあるので、柔道家としても軍人としても見えないといけなくて。それもあって顔つきが変わったんだと思います。さっき自分の胸板を見て、薄くなっていて驚きましたが(笑)。『あんぱん』撮影全部が終わった後のインタビューもあって、受ける印象が違うと思いますので、楽しみにしてほしいです。
千尋の精神が自分の中に投影されている

中沢:反響はすごかったです。本当に大きな出会いでした。千尋の性格、千尋の精神というのも、僕の中に投影されていっています。千尋だったらどうするかなとか、考えることが今でもあるんですよ(笑)。千尋みたいなかっこいい男になっていきたいなという想いもあります。
でも、この千尋よりも大きな反響を呼べるような役を今後増やしていかなくてはいけないと思いました。この役に勝る役をどんどん作っていかないといけないですし、いい意味で自分にプレッシャーをかけたいです。
――ちなみにどういうシチュエーションで千尋が出てくるのですか?
中沢:その時演じている役の影響と言いますか、だから千尋に限ったことではないのですが、たとえばご飯を食べる時、千尋だったら姿勢がいいよなとか、本当に細かいことなんです。
大事な選択をする時も、千尋なら厳しい道を選ぶだろうなとか。千尋は兄・嵩の前では自分を出さない人だったので、千尋だったらここは一歩引いてまわりを見ながら発言するだろうなとか、そういう想像をしながら役の思考と自分の思考を近づけていく感じなんです。
――そういう役作り法ということなんですね。
中沢:そうですね。でも、それが日常にも出ると。スーパーでお惣菜を買うにも「千尋って和食好きだよな」とか、お医者さんの家系だからいいもの食べているよなとか。食事シーンも多かったので、あの時代にしてはいいもの食べていたんですよね。そういう細かいところに出てしまうんです。
ひとりの人間として、変わらないでいたいこと

中沢:まずはひとつひとつの作品、ひとつひとつのシーンに対して一生懸命にやるということですかね。先を見過ぎても目の前のことがおそろかになってしまうのと思うので、まずはひとつひとつの作品、シーン、役、しっかり全力で悔いの残らないようにやっていけば、それも経験になって余裕も出てきて、自信に変わっていくのかなと思っています。

中沢:あります。
ひとつの作品を作ることって本当に大変なことですし、いろいろな方が関わってくださって初めてできること。だから、この人とだったらいい作品を作りたいなと思っていただけるような、俳優よりも手前の部分、人間力の部分を変わらず大事にしていきたいです。
<取材・文/トキタタカシ 撮影/塚本桃 ヘアメイク/速水昭仁 スタイリスト/田中トモコ 衣装協力/CULLNI、ロックポート>





【トキタタカシ】
映画とディズニーを主に追うライター。「映画生活(現ぴあ映画生活)」初代編集長を経てフリーに。故・水野晴郎氏の反戦娯楽作『シベリア超特急』シリーズに造詣が深い。主な出演作に『シベリア超特急5』(05)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)などがある。現地取材の際、インスタグラムにて写真レポートを行うことも。