おひとりさまという言葉が定着しましたが、身寄りのない高齢者も増えています。高齢のおひとりさまで気になることの一つに、死後の財産の行方があるのではないでしょうか。


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 相続人が誰もいない場合、自分の財産がどうなるのか、『【図解】相続&贈与のすべてわかる本 令和8年度改正対応版』など、相続関連の書籍を多く監修している相続実務士の曽根恵子さんに解説してもらいます。

おひとりさまでも相続人が本当にいないかを確認する

おひとりさまの相続対策。相続人不存在の仕組みと財産を残す方法を解説
高齢者 心配 相談
 死後の財産を誰に分配するかは法律で決められていて、法律で決められた相続人を「法定相続人」といいます。配偶者、子ども、両親、兄弟姉妹(亡くなっていればその子ども)がそれです。

 たとえ疎遠になっていて久しく会っていないような関係でも、兄弟姉妹がいれば彼らが相続人になります。おひとりさまでも、本当に相続人がいないのかを、もう一度確認することが大切です。

 注意したいのが、親に離婚歴があるケースです。元の配偶者との間に子どもがいる場合、異父兄弟や異母兄弟でも、血がつながっている以上、相続権が発生するからです。親の戸籍謄本を取得するなどして確認しておくことをおすすめします。

 相続人が本当に誰もいない状態を「相続人不存在」といいます。相続人不存在になるのは、「法定相続人がいない」「相続放棄で相続人がいない」「欠格・廃除により相続人がいない」といった場合です。

 ここで、「法定相続人がいない」場合を想定して説明していきます。こうした場合、なんの対策もしていなければ、財産は国のものになります。しかし、生涯をかけて築いた財産を、最後の最後に国に持っていかれるのは避けたいところです。


 そうならないための対策について解説していきます。

遺言書を作成しておけば渡したい個人や団体に財産を残せる

 相続人がいないおひとりさまにとって、必須となるのが遺言書です。遺言書に財産を渡したい先や分配方法を記して、遺言執行者を指定しておけば、その通りに遺産が分割されます。これを「遺贈」といい、「遺贈先は個人だけでなく団体などの法人でもOK」(曽根さん)とのことで、財産を渡したい個人や団体に残すことができます。

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遺言書
 自分の意思で財産の渡し方を決められるおひとりさまは、必ず遺言書を作成しておきましょう。

 遺贈する際は、家や土地などの不動産を、遺贈されても使い道に困ってしまうこともあることでょう。その際は遺言執行者が売却、換金した上で、現金を遺贈することが現実的です。それでも遺贈する相手が個人の場合は事前に伝えておくようにしましょう。

 遺言書を作成する際に気をつけたいのが、特別縁故者の存在です。特別縁故者とは、被相続人と特別な縁があり、法定相続人がいないときに遺産を取得できる人のことです。

 たとえば、長年付き添って世話や看病をしてくれた人などが、これにあたります。特別縁故者は遺言書がなくても財産を取得できますが、家庭裁判所に申し立てをしなければならないなど、面倒な手続きが生じます。できれば、遺言書で遺贈先として指定しておきましょう。


 また、兄弟姉妹には遺留分(法定相続人に最低限保証された遺産取得分)がないので、兄弟姉妹に遺産を残したくない場合も、遺言書を作成しておきましょう。

遺言書がない場合はどうなる?

 おひとりさまが遺言書を残さないまま亡くなったら、特別な手続きがとられることになります。まず、債権者や検察官の申し立てにより、家庭裁判所が相続財産管理人を選出します。

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裁判所
 その後、法定相続人が本当にいないのかを探すことになります。6カ月以上探しても相続人が見つからない場合、相続人不存在が確定します。

 相続人不存在が確定したら、相続財産管理人によって債権者や特別縁故者に権利に応じた遺産が分配されます。その後、残った遺産が国庫に帰属することになります。

 遺言書がないと、このような面倒な手続きと弁護士など財産管理人の費用が発生してしまうので、おひとりさまはやはり遺言書を作成しておく必要があります。

「相続人が誰もいないのであれば、自分の財産がどうなるのかも知っておくことが必要です」(曽根さん)。

【曽根恵子】
そねけいこ/株式会社夢相続代表取締役。相続実務士®。公認不動産コンサルティングマスター相続対策専門士。
出版社勤務後の1987年に、不動産コンサルティング会社を設立し、相続コーディネート業務を開始。相続実務士の創始者として、1万5000件以上の相続相談に対処。夢相続を運営し、感情面、経済面に配慮した“オーダーメード相続”を提案している。TV・ラジオ出演300回以上、新聞・雑誌取材協力1000回以上、セミナー講師実績670回以上と幅広く活躍。著書・監修書90冊、累計86万部発行。監修書に『子のいない人の終活準備』、『一番かんたん エンディングノート』『【図解】家じまい・墓じまい・相続 実家問題がすべて解決する本』などがある

<構成/女子SPA!編集部>

【女子SPA!編集部】
大人女性のホンネに向き合う!をモットーに日々奮闘しています。メンバーはコチラ。X:@joshispa、Instagram:@joshispa
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