ミラノの夜、何やら邦人男性アイドルによる事件発生か! 国民的アイドルグループSnow Manメンバーである目黒蓮と渡辺翔太が、ミラノ滞在中の散歩道で偶然(?)肩がぶつかったのだ。

 という速報が報道番組を賑わせ、朝刊の一面を飾ってもよかったと思う。
もちろん事件ではない。トップアイドルたちが示し合わせてこしらえた“作戦”だった。彼らは余韻を余興に変え、旅の空気感を表現する。

 男性俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、目黒蓮と渡辺翔太によるSnow Man事件簿を解説する。

ミラノの夜、Snow Man事件簿……

 9月24日(現地時間)、イタリア滞在中の目黒蓮が、ミラノの路上からInstagramライブを開始した。照りあざやかなジャケットスタイルの目黒は、アンバサダーを務めるフェンディの春夏コレクションのショーに参加。食事会後の散歩道だった。

 イタリア(ミラノ)と日本(東京)は7時間の時差がある。インスタライブ時、ミラノは夜で日本は朝だ。めめ(目黒蓮の愛称)ファンに向けて、単に食事会の余韻をリアルタイムで共有したかったからなのか。いや、それだけではなかった。彼は余韻を余興に変えた。

 3万人以上の視聴者が目撃した。
ミラノの夜、Snow Man事件簿……。何やらニヤニヤする目黒が「ホテルの方行ってみようかな」と言って歩きだす。途端にライブ画面にフレームインする、ある人物……。その人は、目黒の左肩めがけて右肩をダイレクトヒットさせた。

目黒蓮のニヤニヤ大作戦

 目黒は「いて、いて」と繰り返す。えっ、事件だ。絵に描いたようにキレイに肩をぶつけてきた相手が「ごめんなさい」と振り向く。思わず照れて口元をおさえるその右肩の人物に目黒が言う。「渡辺君すか」。Snow Manのメンバー・渡辺翔太だった。

 ミラノの夜、偶然にも散歩中だったという目黒蓮と渡辺翔太。同じグループのメンバーが異国の地で、同じ散歩道を同じ時間にたまたま歩き、たまたま肩がふれ合う。渡辺もまたファッションウィークに参加するためミラノに到着。
荷解きをしたばかりだった。たまたま商用の二人が「ミラノで肩ぶつかった相手がしょっぴーでした」という作戦名の下、ほのかに事件性を漂わせながら、めめ&しょっぴーの余興をこしらえた。

 歩きだす瞬間の目黒がニヤニヤしていたのは、確信犯的な笑みだったわけだが、2024年6月にも目黒はこのニヤニヤ大作戦を実行している。完全私用イタリア旅行中だった佐久間大介のピンク髪がフレーム内に何度もチラチラ写り込むというなかなか手の込んだ余興演出だった。

渡辺翔太が異国を旅する醍醐味

 SNS時代はスマホのアプリを開けば、一瞬で世界と繋がることができる。大所帯のテレビカメラを持ち込んでわざわざ中継する必要もないが、ミラノ滞在中の渡辺翔太に独占密着した『めざましテレビ』(フジテレビ系)のテレビカメラだって、それはそれでいい画面を捉えてくれる。

 洗練された風情のブレラ地区を歩く。異国の風、空気、温度。それらが「どこ歩いてもどこ見ても絵になる」と言う渡辺の歩調ととけ合う。

 その国を知るには名物料理を食べたらいい。ミラノ中央駅から徒歩圏内のアンティカ・オステリア・カヴァッリーニに入店。ポルチーニ茸のタリオリーニをくるくるフォークに巻き付けるしょっぴー(渡辺翔太の愛称)。「いただきます」がいい表情。


 ミラノが州都のロンバルディア州を代表するスプマンテ、フランチャコルタ(イタリアの高級スパークリングワイン)があればなお最高だった。ロンバルディアは臭いチーズの代名詞ゴルゴンゾーラ発祥の村があったりもするが、北イタリアの食文化を堪能して、食欲が異国の地への好奇心に高まる。

 渡辺翔太という魅力的な被写体は好奇心を働かせてどんな国でも溶け込んでいける。好奇心が異国を旅する醍醐味でもある。

美術館に入る前、ザッハトルテを食べた後

 イタリアだけではない。9月20日に放送された関東ローカルの30分番組『オーストリアに憧れて~渡辺翔太 煌めきの旅路~』(日本テレビ系)では、これまた好奇心モードのウィーン一人旅で視聴者を魅了した。アンバサダーを務めるスワロフスキーのスポンサー番組でもあり、旅先で触れるものすべてに目をきらきらさせた。

「世界一美しいカフェ」があるウィーン美術史博物館の入口前に立った渡辺が、実は入口ではなく出口だったという天然小ボケで楽しませる。一方で美術館に入る前、「是非行ってみよう」と意気込んでカメラに向ける決め顔が映える。

 オーストリア皇帝フランツ=ヨーゼフ1世の皇后エリザベートも愛したザッハトルテ(オーストリアのチョコレートケーキ)を食べる場面では、逆に食べた後の表情が映える。入る前と食べた後。芸術の都に置かれたカメラがフレーミングする渡辺翔太は、映えまくりしょっぴーなのだ。


 それでいて異国の風景に溶け込み過ぎない。自分の知らない異国に対するフラットな姿勢で客観的にリポートする。旅先の渡辺翔太はとにかくさりげない。だからいい表情で自然と映える。

 Snow Man9人の旅を捉えた配信ドキュメンタリー『旅するSnow Man』(Disney+)第5話には目黒との京都二人旅が収められている。ハモ料理を食べた後の散歩道が、ミラノの夜の散歩道の空気感と共鳴する。

 石のベンチに腰かけた渡辺が、「これが居心地のよさ」と表現して旅情の余韻にしていた。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】
コラムニスト/アジア映画配給・宣伝プロデューサー/クラシック音楽監修
俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”として「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu
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