あなたは、意外な相手から勇気をもらった経験はありますか?

 今回は、電車の中で出会った“ある人物”との出来事をきっかけに、大切なことに気づかされたという一人の女性のエピソードをご紹介しましょう。

車内で出会った外国人旅行客

 ある日の午前中、木村沙月さん(仮名・29歳/会社員)はスーツに身を包み、取引先に向かう電車の中にいました。

「先方の担当者は、なかなか一筋縄ではいかないことで知られている人で。
私は何度もメールを見返しては、心の中でプレゼンのリハーサルをしながら……肩はガチガチに硬くなっているし、指先は冷たくなっていて、つまりとても緊張していたんですよ」

 すると、車内の一角から突然にぎやかな英語の音声が流れてきたそう。

電車で外国人観光客がうるさい…でも注意できずにいたら。女子高...の画像はこちら >>
「音のする方に目をやると、向かい側に座った外国人観光客のカップルが、イヤホンも使わず音を垂れ流し状態のままスマホで動画を見ていたんですよね。しかもかなりの音量で」

 静かな車内に容赦なく響き渡るアップテンポで陽気な音楽に、乗客たちはチラチラと視線を送ったり、軽く咳払いをしたり、眉をひそめたりするものの、誰も声をかけようとはしませんでした。

「私もその一人でした。正直注意する勇気はなかったですし、言葉が通じるかも分からないし、とにかくトラブルになったら嫌じゃないですか? ましてや大事な商談の前だし下手に目立ちたくなかったんですよね」

 動画の中のポップな音楽に身を揺らしながら楽しそうに笑っているカップルを尻目に、車内の空気がピリつき始めた瞬間……。

彼らに話しかけたのは女子高生だった

「『Excuse me!』と明るい声がして、振り返ると小柄な制服姿の可愛らしい女子高生がそのカップルに笑顔で話しかけていたんですよ」

 すると女子高生は「Quiz time!」と高らかに宣言しカップルに「This place is…… A. Party? (と言って、両手を上げて踊る真似) B. Karaoke? (マイクを持つ真似をして、熱唱するふり)C. Silent train? (人差し指を口に当てて“シーッ”のポーズ)」と問題を出したそう。

電車で外国人観光客がうるさい…でも注意できずにいたら。女子高生の“可愛すぎるひと言”でみんなが救われた!
画像はイメージです(以下同)
 その可愛らしいパフォーマンスに、周囲の乗客からは思わず小さな笑いが漏れました。

「そしたらカップルは一瞬きょとんとしていましたが、すぐハッとした表情になり「C.Silent train! Sorry! Thank you!」と笑顔で音を止めて、照れくさそうに立ち上がると、周りにお辞儀をしたんですよね」

 すると女子高生は嬉しそうにピースサインをして「Enjoy your trip!」と次の駅で軽やかに降りていったんだそう。沙月さんは、彼女の行動に目が釘付けになったといいます。

彼女のおかげで自分も前向きに

「素直にすごいなと思いました。誰もあのカップルに注意できずにいたのに、彼女はそれをさらりとやってのけて、さらにユーモアと笑顔で誰も嫌な気分にさせずに空気を変えるなんて……誰でもできる事じゃないですよね」

 するといつの間にか、沙月さんの緊張は柔らいでいて肩が軽くなっていたそう。

電車で外国人観光客がうるさい…でも注意できずにいたら。女子高生の“可愛すぎるひと言”でみんなが救われた!
女性 歩く
「そうだ、私も彼女みたいに柔らかく、でも芯を持って話せば今日の商談はきっと大丈夫だって思うことができたんですよね」

“こんな風に伝え方ひとつで、場の空気は変わるんだ。人の心も”と女子高生のおかげで大事なことに気づいた沙月さんは、足取り軽く取引先に向かうことができました。


「そうして彼女のお陰で私はゆったりとした気持ちで堂々とプレゼンすることができ、結果は大成功。取引先の担当者から『とても分かりやすかった』と嬉しい言葉をかけてもらうことができたんですよ」

 それ以来、沙月さんはプレゼンの度に、あの「Quiz time!」と微笑む女子高生を思い出すそう。

「人を動かすのは、完璧な言葉よりも誠実で温かい伝え方なんだなって実感できたんですよね。彼女だって英語が堪能という訳ではなかったけど、笑顔と勇気で通じ合えていた。私も負けてられないって力が湧いてきたんです」と微笑む沙月さんなのでした。

<文・イラスト/鈴木詩子>

【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop
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