ダイエットをしても体重が落ちにくくなった――。“歳を取ると痩せにくくなる”とよく耳にしますが、「一概に歳のせいにできません」とは、栄養と医学両方の観点から食生活や健康を考える臨床栄養医学指導士の資格を持ち、女性のために正しいダイエット情報を発信しているむらPさんです。


ダイエットが成功しない4つの理由

“お米を食べる=太る”は勘違い。健康的に痩せるには「白米」が...の画像はこちら >>
 むらPさんは「ダイエットが成功しない理由は4つ考えられる」と指摘し、次のように続けます。

「僕のところに相談に来る方は、糖質制限やファスティング、16時間断食、1日1食といった、流行りのダイエットをやっても結果が出ないという女性が多い。これらの方法は一時的な減量手段なので、ダイエットは成功しません。その理由は、①継続ができない、②健康になれない、③太りやすくなる、④根本的な原因が解決できないからです。

 まず<①継続できない>ですが、そもそもダイエットの目的は、理想の体になってその状態を維持していくことですよね? 糖質制限やファスティングなど極端な制限ダイエットをやると確かに体重は落ちますが、その生活を今後も継続していくことは現実的には難しいですし、やめたら絶対にリバウンドします」

食事を極端に制限するダイエットで痩せにくくなる

 食事を極端に制限するダイエットを行うことで、<②健康になれない>危険も……。

「糖質制限やファスティングなどは、本来、糖尿病患者などが症状の改善を目指すための治療法です。普段から糖質の摂取量が基準値を超えている人や、カロリーを抑える緊急性がある場合を除いて、食事を極端に制限するダイエットはやるべきではありません。

 そもそも現代女性は1日に必要なカロリーや糖質が足りていない方がほとんど。そんな状態で糖質制限や極端なカロリー制限を行えば、むしろ栄養不足やエネルギー不足が引き金となって、便秘、浮腫み、肌荒れ、冷え性、貧血、人によっては生理が止まってしまったり、甲状腺機能が低下したりさまざまなトラブルにつながる可能性が高いです」

 食生活や生活習慣の乱れから不健康になることで、最終的には<③太りやすくなる>と警鐘を鳴らします。

「太りやすくなる最大の原因は基礎代謝の低下。1日の消費カロリーのうち、30%が活動代謝(体を動かすことによって消費されるカロリー)、10%が食事誘発性熱産生(食べたものが消化、吸収される過程で消費されるカロリー)、残り60%が基礎代謝(呼吸、心臓、内臓器官、体温維持などに必要な、生きていく上での最低エネルギー量)になります。

最もエネルギー消費が多いのが基礎代謝であり、基礎代謝は活動代謝と違い、何も特別な活動をしていなくても、体が勝手に消費するエネルギー量なのでダイエットにおいて如何に基礎代謝が下がらないようにするかが重要なポイントになります」

痩せられない根本的な原因も解決すべき

“お米を食べる=太る”は勘違い。健康的に痩せるには「白米」が必要なワケ
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 一時的に痩せたとしても、<④原因が解決できない>と同じことを繰り返してしまうとも。

「痩せない原因の根底には『代謝の低下』、『自律神経の乱れ』、『耐糖能の低下』が必ずあります。これらの根本的な原因を解決できなければ、ダイエットが成功することはありません」

 自分が痩せない原因を特定するのは素人には難しいですが、普段の食生活から改善できることがあるそうです。

「痩せない原因となっている食生活、運動習慣、生活習慣を見直すのが理想ですが、誰でも取り組みやすいのは、お米を『適正量』食べること。
エネルギー不足を改善することで低下した代謝を回復することができますし、自律神経の乱れの原因と考えられる極端な食事制限や過度なダイエットのストレスを解決できるかもしれません。

 また、糖質を処理する耐糖能が低下する最大の原因は、お米(糖質)を抜くことで起こります。糖質制限が注目されたことで『お米を食べる=太る』と勘違いしている人が多いのですが、糖質は本来、太るような栄養素ではありません。逆に普段から糖質を避けるような食生活をしていることで耐糖能 (糖質を処理する能力)が低下し、本来太らないはずのお米(糖質)で太りやすい体質になってしまいます」

多くの女性が1日に必要なお米を食べていない

 お米を食べたら太ると誤解されたことで、「多くの女性が1日に必要な糖質を摂取できていない」とむらPさんは問題視しています。

「成人女性の場合、ダイエット中であっても1食に摂取したほうがいいご飯の量は150gと言われています。ですが、ダイエットをしている多くの女性の相談に乗ってきた経験上、1食150gを食べている女性はほとんどいません。

 なかには1食100gでも多いと言っていた方もいましたが、1食100gは3~5歳児の適量です。つまり、日頃から糖質が足りていない女性が多いと考えられます」

ダイエット時の適正カロリー

<現在体重×22+500=ダイエット時の適正カロリー>

上記がダイエット時の適正カロリーになります。お米の適正量はカロリーの約半分になるため、各体重別の適正摂取量は次のようになります。

・体重50kg女性のダイエットカロリー「約1600kcal」、お米は「1食あたり170g」
・体重60kg女性のダイエットカロリー「約1800kcal」、お米は「1食あたり200g」
・体重70kg女性のダイエットカロリー「約2000kcal」、お米は「1食あたり220g」
・体重80kg女性のダイエットカロリー「約2200kcal」、お米は「1食あたり250g」
・体重90kg女性のダイエットカロリー「約2500kcal」、お米は「1食あたり280g」
・体重100kg女性のダイエットカロリー「約2700kcal」、お米は「1食あたり300g」


「この適正カロリーは、ダイエット時の最低カロリーです。自分の体重に合ったお米の適量で、バランスの取れた食事を摂取してほしいですが、それでもお米を食べることに抵抗がある方は1週間に10gずつ増やしてみてください。お米を食べても太らないのが実感できれば、安心して食生活を改善できると思います。


 お米のほかに脂質を抑えた和風パスタや栄養価の高い蕎麦もいいですが、付け合せで脂質が多くなりがちなパンやうどんなどは控えたほうがいい。また、夜遅くなっても、寝る前に食べたほうが体にはいいですが、食後3時間は睡眠するのを避けるべき。すぐに寝ないといけない日は、おにぎり1個や消化のいいババナを1本食べるといいですよ」

 おいしいお米を食べて痩せられるならうれしいですよね。もちろん、食べ過ぎは厳禁ですが、過剰な食事制限を行っていたという方は、適量のお米を食べて低下した代謝を回復させることから始めてみてはいかがでしょうか。
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