お笑いコンビのエバースが、10月19日放送の『笑点』(日本テレビ系)で披露したネタで思わぬ炎上に巻き込まれている。

同番組に初登場となったエバースは、序盤に登場し漫才を披露。
軽快なテンポで進む漫才を見せ、観客から多くの笑いを引き出すことに成功した。

「寿司職人」発言に批判殺到 ネットで賛否の声

「女性は体温が高い」M1有力漫才師の“寿司ネタ”が炎上。コン...の画像はこちら >>
しかし、この漫才の中でツッコミの町田和樹が話した寿司職人に関する発言が、賛否両論を生むことになった。一番好きな食べ物をテーマにした漫才で町田は寿司が好きだと話し、「板前さんってほとんど男性の方しかいないじゃん。なんで女性いないか知ってる?」とうんちくを披露。

「女性って男性より体の体温が高い、お寿司を握った時にお寿司が温かくなっちゃう。だから男性の板前さんしかいない」と話したのだが、この漫才の「セリフ」に漫画家のせきやてつじ氏がX上で反論の意見を書き込んだ。

せきや氏は、寿司職人をテーマにした漫画を書いた際に、多くの女性寿司職人を取材したことを明かし、「『女性は体温が高いから寿司職人になれない』と発言されてましたが、それは昔の偏見です。日本には沢山の女性寿司職人が今日も寿司を握っております。地上波放送でこのような偏見が流れた事にとても残念な気持ちでいます」とコメントした。

このコメントを見たXユーザーは、エバースに対してバッシングと擁護する声で賛否両論の状態に。せきや氏を非難する声もあり、なんとも殺伐としたムードが漂っている。

ネタの狙いは“痛い男”キャラ? 構成から見える意図

「女性は体温が高い」M1有力漫才師の“寿司ネタ”が炎上。コンプラ時代に求められる“笑い”とは
エバース町田さん 画像:株式会社宮城テレビ放送 プレスリリースより(PRTIMES)
まず、エバースが披露した漫才だが、問題になった町田の寿司職人に関する部分は、うんちくをウザく語る設定で行われた。ボケの佐々木隆史が「すみません、なんかダラダラしゃべって」とツッコみ、得意気にうんちくを語った町田をオトシて笑いを生み出すエバースではおなじみのパターンだ。

さらに、オチで「女性は体温が高い」という部分を伏線回収し、町田は板前が握った寿司より「広瀬すずちゃんが握った場合は温かい方がいい」と話し漫才を終わらせた。


この構成を考えると、ネタを制作する佐々木は「女性が寿司を握らない」という考えが古いものであることを認識していた可能性が高い。間違った情報を得意気に語る“痛い男”を町田に演じさせ、結局はかわいい女性が握った寿司が良いと言わせ笑いを生み出しているからだ。

また、町田は一般論を述べたのではなく、“真意不明なうんちくを語るキャラ”を演じていた。そう考えると、このネタがここまで大げさに取り上げられる必要はなかったかもしれない。

広がる議論、芸人たちのリアクションも話題に

「女性は体温が高い」M1有力漫才師の“寿司ネタ”が炎上。コンプラ時代に求められる“笑い”とは
画像:株式会社宮城テレビ放送 プレスリリースより(PRTIMES)
ただし、せきや氏の発言が間違っているわけではない。通常、漫才のネタは限られた時間で細かい説明を行わないため、セリフやツッコミを見ながらネタを理解することが求められる。

せきや氏はエバースについて詳しく知らなかったようで、漫才のキャラやネタの傾向を理解できず、「偏見」と捉えた結果、提言に至ったと考えられる。

今回の騒動についてだが、どちらが悪いというよりも問題なのは、漫才のネタで賛否両論が生じたことだ。

芸人たちもX上で「漫才のネタが叩かれて世も末ですな。芸人皆で手を繋いで死にましょう」(9番街レトロ 京極風斗)、「なるほど。笑点に出る事、目標にしてたけど…こりゃ無理だな」(ツーナッカン 中本)とコメントしている。

コンプラ意識の高まりや、SNSの影響力が強くなったことで、テレビで披露する漫才やコントのセリフすら問題視される時代に突入したことに危機感を覚えているようだ。

コンプラ時代の漫才に求められる“さじ加減”

「女性は体温が高い」M1有力漫才師の“寿司ネタ”が炎上。コンプラ時代に求められる“笑い”とは
画像:株式会社J-WAVE プレスリリースより(PRTIMES)
今後、テレビでネタを披露する際には、セリフや表現を慎重に制作する必要があるだろう。
エバースは今回の「寿司漫才」を定番ネタにしているが、テレビでは披露しづらくなっただろう。

また、エバース以外の漫才師でも、無理やり差別だとツッコミを入れられるネタを持つコンビは数多くいる。それらのネタは、セリフや演出を改良する必要性が出てくるかもしれない。

今回のような俗説を使ったネタは、エバースだけでなく他の漫才師でも今後は使いづらくなる可能性があり、注視すべきだろう。

年末には「M-1グランプリ2025」が開催され、多くの若手漫才師が予選に挑んでいる。今回のエバースの炎上がどのような影響を及ぼすか注目されるポイントと言える。

ちなみにエバースは「M-1グランプリ2024」で4位となり、今年も優勝候補の一角として注目されている。先日実施された2回戦に登場した際には、大爆笑を取っていたという情報が出ている。今回の炎上の影響はいまのところないようだが、決勝に向けて心理的に多少の負担を抱えている可能性は否めない。

大事な時期に、「M-1グランプリ2025」の優勝候補であるエバースが巻き込まれたSNSでの炎上騒動。漫才のネタにも細心の注意を払う時代に突入したのか、注目して今後の漫才師たちのネタに注目したい。

<文/ゆるま小林>

【ゆるま 小林】
某テレビ局でバラエティー番組、情報番組などを制作。
退社後、フリーランスの編集・ライターに転身し、ネットニュースなどでテレビや芸能人に関するコラムを執筆
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