10月からさまざまな秋ドラマが始まり、すでに数話が放送され、「最終回まで観たい!」と思えるドラマもいくつか出てきた。そこで今回は、最終回まで見届けたくなるドラマを5つ紹介したい。


王道の日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』

今期は豊作! 最終回まで見届けたい秋ドラマ5選。日曜劇場も安...の画像はこちら >>
 まずは日曜劇場の『ザ・ロイヤルファミリー』(TBS系、日曜よる9時~)。大手税理士事務所に勤務していた栗須栄治(妻夫木聡)が、人材派遣会社「ロイヤルヒューマン」に転職し、社長の山王耕造(佐藤浩市)の秘書として“お荷物部署”である競馬事業部の再建を目指す物語だ。本作の面白さはわかりやすいストーリー構成にある。

 2話では、序盤に“敵役”的な立ち位置のロイヤルヒューマン人事統括部長・優太郎(小泉孝太郎)から「今年中に中央競馬で1勝できなければ競馬事業部を潰す」と命じられ、栗須は優秀な調教師を探すために奮闘。その過程で耕造と意見の食い違いにより衝突するが、最終的に優秀な調教師・広中博(安藤政信)を仲間に加え、ラストでは見事に中央競馬で勝利を収めた。

ナレーターの目黒蓮が姿を見せる日は?

 序盤にその回ごとのハードルが設けられ、仲間といがみ合いながらもそれをクリアしていく。日曜劇場の中でも特に“王道”らしい丁寧な作りで、とても見やすい。“競馬=ギャンブル”というネガティブなイメージもあるが、人生に迷う人たちが奮闘する、日曜劇場らしいヒューマンドラマになっている。

 また、2話現在、出演が予定されている目黒蓮はナレーターとして登場しているが、まだ姿を見せていない。絶大な人気を誇り、『silent』(フジテレビ系、2022年)などでも好演を重ねている目黒が登場すれば、“めめ推し”だけでなく、多くの人から関心を集めるかもしれない。

微笑ましく新鮮『じゃあ、あんたが作ってみろよ』

 次は『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(TBS系、火曜よる10時~)。「顆粒だしは手抜き」など、料理に手間暇をかけることを良しとする亭主関白マインドの海老原勝男(竹内涼真)と、周囲の顔色ばかりを気にしてしまう山岸鮎美(夏帆)の2人が主人公。大学時代から交際を続けていたが、勝男の価値観についていけなくなり、鮎美が勝男を振るところから物語が始まる。

今期は豊作! 最終回まで見届けたい秋ドラマ5選。日曜劇場も安定の面白さだけど、秀逸なのは“火曜ドラマ”
画像:TBSテレビ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』公式サイトより
 性別役割分業に囚われた男性にスポットを当てた作品は多いが、本作もその一つ。ただ、竹内演じる勝男の憎めなさが可愛らしく、周囲のサポートを受けながら自身の価値観を見直して成長していく様子は微笑ましく、内容には新鮮さを覚える。


自分の価値観や人付き合いを見直したくなる

 また、鮎美と交際中の勝男は“完璧”な関係を築けていると錯覚していたが、実際は鮎美の我慢の上に成り立っていた脆い関係だったことが明らかになる。勝男の言動を通して、人付き合いや自分自身の価値観を見直したくなる秀逸な作品だ。

 さらに、勝男の顔色ばかりを気にしていたことに気づき、自分らしさを取り戻そうとする鮎美も魅力的。新しくできた彼氏・ミナト(青木柚)との関係性にもヒヤヒヤさせられそうで、鮎美の幸せにも注目したくなる。

『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』

 三谷幸喜が25年ぶりにゴールデン・プライム帯の民放連続ドラマの脚本を務めることで話題を集めた『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』(フジテレビ系、水曜よる10時~)も見逃せない。

今期は豊作! 最終回まで見届けたい秋ドラマ5選。日曜劇場も安定の面白さだけど、秀逸なのは“火曜ドラマ”
画像:フジテレビ『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』公式サイトより
「三谷幸喜脚本」というワードだけでも注目したくなるが、菅田将暉、二階堂ふみ、神木隆之介、浜辺美波とキャスト陣も豪華だ。

2話以降、面白さが一気に加速した

 話題性抜群で放送された第1話では、物語のカギを握るキャラが一気に登場したため、内容はかなりしっちゃかめっちゃか。「誰が何をする物語なのか」がわからず、SNSでは批判的な声も相次いだ。

 ただ、第2話からはストーリーの方向性が明確になり、一気に作品の面白さが加速した。また、三谷節をキャスト陣がしっかりと乗りこなし、全キャラを主役にしたスピンオフが見たくなるほど、それぞれの個性が際立っている。個性的なキャラ同士の掛け合い、そして今後の展開にも期待したい。

野木亜紀子の脚本『ちょっとだけエスパー』

 有名脚本家による作品として『ちょっとだけエスパー』(テレビ朝日系、火曜よる9時~)も忘れてはいけない。『アンナチュラル』(TBS系、2018年)など数々の人気作を生み出してきた野木亜紀子が脚本を手がけている。

今期は豊作! 最終回まで見届けたい秋ドラマ5選。日曜劇場も安定の面白さだけど、秀逸なのは“火曜ドラマ”
画像:テレビ朝日『ちょっとだけエスパー』公式サイトより
 本作は怪しげな会社「ノナマーレ」に再就職した、家族もお金もすべて失った中年男性・文太(大泉洋)が主人公。
ノナマーレの最終試験時に、社長・兆(岡田将生)に促されて“ちょっとだけエスパーになる薬”を飲まされ、さらには謎の女性・四季(宮﨑あおい)と同居することを命じられる。

かつてとはまた違った可愛さの宮崎あおい

 ノナマーレの不可解な業務内容や、四季との同居生活など、理解が追いつかないながらも順応していく文太の“振り回されっぷり”は痛快だ。ただ、最終的には大泉が周囲を振り回しているようにも見える。その“主人公然”とした振る舞いは見事だ。

 また、2023年の日曜劇場『VIVANT』(TBS系)の裏ボスのような出で立ちの兆もカッコいい。そしてなにより、13年ぶりに民放連ドラに出演した宮﨑あおいも可愛らしい。とはいえ、かつての眩しさを含んだ可愛さとは異なり、一緒にいると安らぐような温かみのある可愛さがある。「宮﨑を見る」というだけでも一見の価値があるドラマだ。

ハイセンスな演劇のような『シナントロープ』

 最後は『シナントロープ』(テレビ東京系、月曜よる11時6分~)。2021年に放送され話題を呼んだアニメ『オッドタクシー』を手がけた此元和津也が脚本を担当する。ハンバーガーショップ「シナントロープ」を舞台に、そこで働く8人の若者が複雑に絡み合う様子を描く青春群像劇だ。

 拳銃を持った強盗に果敢に立ち向かう女子大生・水町ことみ(山田杏奈)や、無表情で不気味な新人アルバイト・志沢匠(萩原護)など、やや現実離れした登場人物が多い。加えて、ウィットに富んだ会話も耳心地が良く、ドラマというよりはハイセンスな演劇を見ている気分になる。

今期の考察枠? 期待感を刺激される

 さらに、「シナントロープ」に押し入った強盗・久太郎(アフロ)が所属する裏組織・バーミンや、時折映し出されるマンションの一室を見張るおじさん(山本浩司)と若い男(栗原颯人)の16年前の様子など、いくつもの謎が張り巡らされ、考察要素も豊富だ。
さまざまな情報が示されているが、決して渋滞することはなく、ほどよいバランスで描かれている。

 あまりに先が見えず、考察らしい考察も難しいほど謎のベールに包まれているからこそ、今後の期待感をいっそう刺激されるドラマと言っていい。

 今回紹介したドラマを楽しみにしながら、しんどい日常をなんとか乗り切りたい。

<文/望月悠木>

【望月悠木】
フリーライター。社会問題やエンタメ、グルメなど幅広い記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。X(旧Twitter):@mochizukiyuuki
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