吉本興業所属の男女コンビ・相席スタートの男性のほうである山添寛さんの人気が急上昇しています。かつては「借金キャラ」「ギャンブルキャラ」として知られていましたが、現在では好感度も高く、多くのファンを魅了中。
その理由とは、一体何なのでしょうか?

コンビ結成から“クズキャラ”ブレイクまで

「実は京都の老舗・古美術商の息子」40歳“クズキャラ”芸人な...の画像はこちら >>
2013年に結成されたお笑いコンビ、相席スタートは、女性メンバーの山﨑ケイさんと山添寛さんによる男女コンビです。イイ女風の発言をするケイさんに、山添さんが優しくたしなめる漫才や、恋愛模様をリアルに描いたコントで人気を集めました。2016年にはM-1グランプリの決勝にも進出するなど、実力派コンビとしても知られています。

売れ始めた当初はケイさんが前に出ることが多く、山添さんはあまり目立たない存在でした。しかし、山添さんがケイさんに借金をしていることやギャンブル好きという“クズキャラ”が浸透するにつれ、次第に注目を集めてブレイクを果たします。借金をネタにいじられても軽妙に切り返すコメント力や、機転の利いた立ち回りが評価され、山添さんがピンでバラエティ番組に呼ばれる機会も増えていきました。

『ラヴィット!』で花開いたセンスと存在感

「実は京都の老舗・古美術商の息子」40歳“クズキャラ”芸人なのに幅広い世代に支持されるワケ。“じゃない方”がいまや次世代MCに
画像:KDDI株式会社 プレスリリースより(PRTIMES)
山添さんのポテンシャルを引き出したとも言われているのが『ラヴィット!』(TBS)。この番組では大喜利のセンスや企画力を発揮し、山添さんの発言がXでトレンド入りすることも頻繁にあります。さらに、裏方的な役割を務めたり、出演者をいじったり、自分の“クズキャラ”を自虐的にアピールする一方、大勢の芸人が集まる同番組でも存在感を発揮し続けています。

また『水曜日のダウンタウン』(TBS)のギャンブル企画でも出演が多く、実際にギャンブル好きである山添さんの鋭い読みをうかがわせる場面が際立っています。

さらに、山添さんの強みは弁が立つだけでなく、空気を読んで自分の立ち回りを把握したり、その場を回すスキルにも長けている点です。そのため、近年ではMCの仕事も急増。今年5月に配信された『バチェラー・ジャパン シーズン6』(Prime Video)ではオリエンタルラジオの藤森慎吾さんが長年務めていたスタジオMCに山添さんが抜擢されています。そのほかにも特番でのMCの仕事も増え、今後さらにMCの機会が増えていくことが予想されます。


“クズキャラ”なのに上品? 愛される理由とは

「実は京都の老舗・古美術商の息子」40歳“クズキャラ”芸人なのに幅広い世代に支持されるワケ。“じゃない方”がいまや次世代MCに
画像:株式会社AbemaTV プレスリリースより(PRTIMES)
2023年にはケイさんが第一子を出産し、仕事と家庭のバランスを保ちながら活動していますが、相席スタートとしての人気は、現在では山添さんが主に担っていると言っても過言ではないでしょう。

相席スタートのネタにおいても、当初はケイさんの「ちょうどいい感じのブス」というキャラが際立ち、それがコンビの特徴として認識されていました。その際、山添さんはケイさんに強くツッコんだり罵倒したりせず、黒子に徹する立ち回りが印象的でした。これには、二人が先輩後輩という関係性があることや、山添さんの穏やかな性格が影響しているかもしれません。

また、京都生まれで実家は老舗の古美術商を営んでいるということから育ちの良さも感じられます。女性芸人の容姿をいじったり、他人をバカにしたりする言動は避け、自身の“クズキャラ”を自虐的に利用して笑いを取るスタイルはバラエティ番組でも使いやすい要素だと言われています。

さらに、山添さんがバラエティで重宝される理由として、「ルックスの良さ」や「雰囲気」も挙げられます。実は山添さんは身長が180cmを超え、顔立ちも整っており、スーツの着こなしは俳優と並んでも見劣りしません。このため「見た目はシュッとしているのにクズ」といった外見と中身のギャップがバラエティ番組で際立っています。

“じゃない方”から次世代MCへ──山添寛の未来

「実は京都の老舗・古美術商の息子」40歳“クズキャラ”芸人なのに幅広い世代に支持されるワケ。“じゃない方”がいまや次世代MCに
画像:KDDI株式会社 プレスリリースより(PRTIMES)
これまでにも借金やギャンブル好きの“クズキャラ”を持つ芸人は多数存在しました。現在はむしろその種のキャラが飽和状態で、例えば安田大サーカスのクロちゃん、空気階段のもぐらさん、岡野陽一さん、ザ・マミィの酒井さんなどが代表格です。

しかし、その中でも山添さんのスマートさは珍しく、視聴者に新鮮で面白く映るのかもしれません。この背景から、きれいな見た目でありながら視聴者に不快感のない「クズ芸人」というのは朝の情報番組やMC仕事の現場で大きな武器となります。


実際、コンビを組みつつ単独でMCの仕事をしている芸人を挙げてみると、このルックスの影響は非常に重要であることが分かります。例えば、極楽とんぼの加藤浩次さんやバナナマンの設楽統さんなどがそれに該当します。彼らに共通するのは、情報番組のMCとしてのスキルだけでなく、「最初は悪い人に見えたけど実はいい人」という視聴者の目線の変化です。

加藤さんはかつて“狂犬キャラ”で知られ、設楽さんも“ドSキャラ”が浸透していましたが、現在MCとして定着し、さらにその色気あるルックスから女性ファンが多い点も似ています。

売れっ子の麒麟の川島明さんはSっ気やギャンブルなどのキャラはありませんが、『アメトーーク!』(テレビ朝日)の企画では「運動神経悪い芸人」や「学生時代イケてないグループに属していた芸人」などイケてないキャラが先行していました。しかし大喜利やコメント力などの実力が認められ、同時に「実はイケメン」とルックスも女性視聴者が多い情報番組において不可欠な要素で現在も需要が高いのでしょう。

加藤さん、設楽さん、川島さんに共通して言えるのは、最初は相方のほうが目立っていてどちらかというと“じゃない方”として認知されていたものの、トークや大喜利の場数を重ねることで単独MCをこなしていったという実力派であることです。山添さんはまさにこれらのMC芸人たちの系譜を辿っており、今後ますますMCとして活躍する機会が増えていくと予想されます。

今年4月に公開された映画『パリピ孔明 THE MOVIE』では、昭和感のあるテレビプロデューサー役で映画初出演も果たし、同作のイベントでもMCを務めていた山添さん。今後はそのルックスを活かして俳優業にも活躍を広げていくかもしれません。

<文/エタノール純子>

【エタノール純子】
編集プロダクション勤務を経てフリーライターに。エンタメ、女性にまつわる問題、育児などをテーマに、 各Webサイトで執筆中
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