あなたには行きつけのスーパーはありますか? 仕事帰りや休日にふらっと立ち寄る、どこか安心できる場所。

 今回は、そんな日常のスーパーで起こった少しヒヤッとしてしまったエピソードをご紹介しましょう。


「オレのカゴ見てただろ?」おじさんに睨まれて

「俺のカゴ見てただろ!」スーパーで女性に絡む迷惑おじさん。助...の画像はこちら >>
 金谷祐未さん(仮名・31歳/契約社員)は、仕事帰りに最寄りの駅近くにある行きつけのスーパーに向かいました。

「その日はシチューの気分だったので、まず玉ねぎ、にんじん、じゃがいもをカゴへ。次はお肉コーナーに行こうかなと歩き出した瞬間、背後から急に『おいっ! 無視すんなよ』と声をかけられてビクッとしてしまって

 振り向くと60代くらいで少し怒った様子の男性が立っていて、「さっきから俺のカゴ見てただろ?」と睨んできました。

「私は慌てて『い、いえ見ていませんけど……』と答えたのですが、そのおじさんは『知ってんだよ。オレがどんなもん買っているかジロジロ見て笑っていたろ?』と詰め寄ってきてすごく怖かったんですよね」

“え、そんなことある?”と思った祐未さん。“私がおじさんのカゴの中身を見て何の得があるの? 見るわけないでしょ? 言いがかりはやめてよ!”と心の中で叫びながらも、どうしたらいいか分からず固まってしまったそう。

「周りの買い物客も気まずそうに距離を取り、ヒソヒソ話をしている人や、足早に他のコーナーに行く人もいて、私は恐怖に慄きながら『いや、本当に見ていないです』と繰り返すことしかできなかったんですよ」

店員さんのヘンな助け舟

 すると、遠くの方で品出しをしてい員さんは祐未さんの方を見て軽く20代くらいの店員さん、がサッとやってきて明るい声で話しかけてきました。

「笑顔で『お客様~! すみません、カゴの中身が気になって見ていたのはこの僕です』なんて言うので私は意味がわからず、え? という感じでポカンとしてしまって」 

 そして店員さんは、男性のカゴをのぞき込むようにして「このスルメとヨーグルトの組み合わせ、最高じゃないですか! もうセンスしかないです! インスタ映え間違おなし!」と真顔で褒めたそう。
 
 一瞬、場が凍りつきましたが……。

「おじさんが『な、何だよそれ~』吹き出したので、私は“えー! カゴの中身を見られたくないんじゃなかったの?”とちんぷんかんぷんでした。でもおじさんは『お兄さん、今日も面白いね』とご機嫌に立ち去っていったので、私はホッとすることができたんですよね」

“カゴ見るなおじさん”の対処法を編み出した人物

 店員さんは祐未さんの方を見て軽くおじぎをすると「変な絡まれ方でしたね、大丈夫でした?」と優しく声をかけてくれました。

「私が『はい、助かりました。すごい切り返しですね』と答えると、『うちの店は、カゴの平和は守る主義なんで』とニカッと笑うので、私もつい笑ってしまいました」

「俺のカゴ見てただろ!」スーパーで女性に絡む迷惑おじさん。助けに入った店員の“ひと言”で、なんとご機嫌に立ち去った
※画像はイメージです
 後日、祐未さんがたまに話をするそのスーパーのレジ打ちの女性に話を聞くと、例の“カゴ見るなおじさん”はごくたまにスーパーに出現するものの、笑顔で近づいてポジティブな言葉をかけ続ければ、最後はご機嫌で帰ってくれるんだそう。

「しかもその接し方を編み出したのは、あの助けてくれた男性店員さんだそうで……優しい人なんだなとなんだかしみじみしてしまいました。スーパーって本当にいろんな人が来るから、店員さんはそれぞれに合わせた対応が求められるんでしょうね」

謝罪でも正論でもなく、相手の心をほぐす一言

 祐未さんは「もし自分が店員さんだったら、クレームを取り下げてもらえるまで、ただひたすら謝ることしかできないと思うし、とてもあの男性店員さんのように“カゴ見るなおじさん”の心に寄り添ったコミュニケーションも、笑顔で帰ってもらえるまでの関係性を築くことも、とてもできない」と考えてしまいました。


「あの出来事をきっかけに、私も『相手の立場で考えてみること』の大切さを少しだけ考えるようになりました。状況を変えたのは、謝罪でも正論でもなく、相手の心をほぐす一言だったんですよね。いつか私も、あの店員さんみたいに誰かの不安を笑顔に変えられる人になれるといいなと思います」

 ちなみに例の男性店員さんは、スーパーで見かける度に満面の笑みで会釈してくれるようになったそうです。

<文・イラスト/鈴木詩子>

【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop
編集部おすすめ